Ωの魔王の溺愛姫。

遊虎りん

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第一章

14

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「幼い子供のように拗ねているのですか、見苦しい」

リンの言葉を聞くと鼻先で笑い飛ばして侮蔑の視線を向けた。

「お前は置き去りにされたことがないからそんな風に言えるんだ!!」

リンは八つ当たりだ、と自覚しながらもザイに怒りの矛先を向けた。
今まで誰にも向けれなかった感情が爆発する。
ひとりぼっちだったから、ぐずぐずと燻ってた。
寂しさや悲しさの冷たい炎。
リンは涙を流しながらもザイを睨み付ける。

「私は魔王を殺す。男から生まれたなんて気色悪い、認められない。殺してその事実を消す」

「そんな事を聞いてあなたを野放しには出来ませんね」

二人から殺気が迸る。
リンは腰に忍ばせていたナイフを取り出してザイの喉元に突きつけようとするも、ザイはリンの何百倍も経験がある。
リンの動きなど全て把握して予想していた。
ナイフを突き付けたのはザイの幻影であり、本物のザイはリンの背後にいた。

「幼稚な攻撃など私には通用しません」

殺される、とリンは死を覚悟した。
ザイより弱かった自分を呪い、悔やみ、意識を闇に沈ませた。


◇◇◇◇

頭が割れるように痛い。苦痛に呻いている自分の声でリンは意識を取り戻した。
花の強いにおいがする。
ぼんやりとした暗がりで誰の気配も感じられない。
身動ぎしようとするも、手足は拘束されていた。
身動きが取れない。

(一瞬で殺してくれるなんて都合がよすぎた。拘束して痛めつけたくなるほど、私はザイが慕っている魔王を侮辱したから)

リンの怒りはおさまっていた。
冷たい炎は一度爆発して炎は消えて、みなぎっていた熱が消え失せて悲しみだけが残る。

(この世界に一人も私の味方になってくれるひとはいない。私のために怒ってくれるひとはいない。一思いに殺してくれる優しさも、くれないなら、憎しみと悲しみだけが私のものならばそれだけを大切にしよう)

簡単には死なせてもらえない、胸が苦しくてリンは顔を歪めた。
怒りの炎が鎮まったが、体の奥がざわざわと落ち着かない。全身が震えて一度冷たくなった肌が火照り始める。
呼吸が荒く乱れる。
花の強いにおいが鼻腔を満たしてくらくらと目眩がした。

「ようやく発情状態になりましたね。この花はΩの発情を誘発させる効果がある、Ω以外には何の効果はありません。銀色の髪でもしや、と思っていましたがやはりあなたはΩだった」

ザイの声が聞こえた。

「あなたは粗悪なリュウ様の模造品に過ぎない。欲望を発散する私の道具にしてあげます」

ザイの冷たい指がリンの服を奪っていく。裸にされていく恐怖にリンは震えた。

「っ、……私に触るな!」

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