始まることの前に

高城

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にんげんのなかみなんて

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彼女を見てると時が止まる。一瞬なのかもしれない、だけど俺には彼女を見つめる一瞬、彼女と目があった一瞬、それは俺が生きてきた時間なんかより長く、愛しく、苦しい。

笑うんだ、彼女は。
歌う、歌うんだ、彼女は。

人と人と人と。人、火と、日と、そして非と。
溢れる負の感情。非と比と否と。全部否と。

彼女はそれを殺してくれる、俺に人を与えてくれる。笑うだけじゃない苦痛と快楽を彼女は与えてくれた。

あぁ、俺はもう希望を辞めるよ、君は美しいよ、望みを絶った君は美しい。

君を見ると時が止まる。歌うんだ、俺も。
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