夏が終わった、そのあとに〜吟遊詩人とすみれの恋〜

楢川えりか

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【PART 2】2年生、秋

13. クリスマスマーケット(2)

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 今日すでに何度か向けられた、やわらかくて、優しい微笑。
「一夜、今まで、オレの話ばっかりずっと聞いてもらってたよね。ありがとう。これからは、きみの話も聞きたい」
「別に、聞かれたら答えるけど?」
 おれの答えに、都真はちょっと困ったような顔をした。
「えっと、そうじゃなくて」
 都真は周囲をきょろきょろ見て、咳払いをして、おれを見た。真剣な雰囲気に、おれは戸惑う。緊張感がある。なんでだろ。
「あの、あのさ。こないだ、きみに言われたことを考えたんだ」
 あ、それか。保留になってたやつ。今からその話か。
 都真の明るい色の瞳がおれを見た。
 急にドキドキしてきた。せっかく楽しい雰囲気だったのに、めちゃくちゃダメージを受けそう。はっきりしてほしかったのはおれだけど、また振られたら、おれは相当落ち込む。
「……うん」
 都真は自分の膝の上にある手を何度か開いたり握りしめたりして、最終的に握りしめた。
「一夜」
 強く見つめられて、おれも息が止まる。
「好きだよ、一夜。きみと愛し合いたい。オレと付き合ってください」
「え? えっ……」
 一瞬で頭に血が昇る。
 それでおれは言われている意味がわからなくて、バカみたいに聞き返してしまった。自分からつい先週、愛し合おうって迫ったくせに。
 都真は続けた。
「オレ、やっぱりきみが好きなんだ。きみが言うように、オレはいろんなことが怖い。でも一番怖いのは、きみがオレから離れることだって思った。きみを手放したくない。今までごめん。オレと、一から付き合ってくれないかな」
「えー……」
 おれはめちゃくちゃまばたきした。
 告白された? そう、告白されてるのに、おれは混乱して、わけのわからない反応をしてしまった。
 いやだって今まで全然、こんな甘い発言しながらおれを見たりしなかっただろ!
「あの、遅いかな……」
 都真の握った手が開いたり閉じたりしていた。おれの反応が悪いので、そわそわしているのだろう。わかってる、オッケーって言うところだ。
「都真のバカ……っ、おっせえよ……っ」
 なのに、おれはこんなことしか言えない。
「ごめん」
 都真がしゅんとしながら、おれの頬に指を伸ばした。おれ、泣いてるのか。そりゃ号泣するよ。
「おそいって……」
 しゃくりあげるおれの頭を抱き寄せて、都真はとんとんと叩いた。わがままな子供をあやすみたいに。彼はおだやかな声で、うん、とささやく。
「バカ……っ……すき……」
 都真はもう一度やさしく、うん、と言った。
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