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ジョシュの提案
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家族寮の近くまで戻ってくると、辺りはすっかり真っ暗だった。
「どうしようか……」
日向は沈んだ気持ちでつぶやいた。
もう最後の朝が来てしまう。
クラスメイトに頼むにも、長期休暇中で残っている子供はほとんどいないだろう。そもそも、中学生なのにそんな話をして変な噂になってしまったら、ここに残るジョシュが困るだろう。自分はいなくなるにしても。
この件はもちろんそのうち解決できるかもしれないけど、日向はもうそこには自分がいないことが嫌だった。
ジョシュにすべてを任せて、自分ひとりで先にこの件を放り出すことになってしまう。
「……日向」
日向の家の前で足を止めたジョシュが、自分を見る。いつもの優しいまなざしと何かが違う。思いつめたようなその視線は少し不穏な感じがして、よくわからず日向は動揺した。
「ここは、きみがぼくの恋人になるしかないんじゃないか」
「え?」
なんて言ったらいいかわからない。
「ぼくはきみのことが大好きだし、きみはそこまでじゃないかもしれないけど、友達としては、嫌いじゃないだろ?」
ショックだった。そこまでじゃないとか、嫌いじゃないとか、乱暴に自分の気持ちを決めつけられるなんて。
いつも、そんな強引に話を進めるような人じゃないのに。
恋人になってくれと言われたのを、断った自分がいけないのだろうか。
頭に血が上ったような感じがして、目頭が熱くなる。
日向の様子に気づかなかったらしいジョシュが、真面目な顔で続けた。
「なあプーカ、そもそも、愛し合うの定義だけど、ふたりはどの程度深い愛じゃなきゃいけないんだ? 家族とか友達だって愛し合うことがあるだろ」
「愛し合うの定義?」
日向の肩に乗っていたプーカが小馬鹿にしたように言い返す。
「定義なんかいちいち言わなきゃいけないような愛は、愛ではないだろう」
「うーん」
ジョシュは考え込んでいる。その表情が、やがて驚きに変わった。
「え、日向。きみ、泣いてる?」
「……?」
言われたことを確認しようと、日向が自分の手を左頬に当てるのと、ジョシュの右手が、自分の左頬に触れるのとは同時だった。
「あっ、ごめん」
何に謝っているのか、ジョシュが慌てて重なり合った手を戻す。
残った自分の指先は濡れている感覚がして、自分が泣いていることを日向は確認した。
さっきむりやり抑えたせいだろうか。止めようとすると、更に涙はひどくなった。
「あの、日向。ごめんね、変なこと言って。きみの好きなようにすればいいって言ったのに。こんな、むりやり恋人になれなんて言って」
ジョシュは触れた手を日向に近づけたり戻したりして、おろおろしていた。自分の発言が引き起こした事態だとわかっているのだろう。
日向は、なぜ泣いているのか説明しようと思ったが、自分でもわからない。
「ごめん、もう今日は帰ろう。また明日、出発前に会えるよね?」
「うん……」
ジョシュは、なだめるように優しく、日向の目を見てささやく。ごしごしとシャツの袖で自分の頬を拭いながら、日向はうなずいた。
「あの、日向。明日、待ってるから。ぼくのこと、嫌いになったかもしれないけど、さよならは言おうよ。最後だし」
嫌いになった?
思ってもいないことを言われて、日向は顔を上げる。そんなこと、あるわけがないのに。
「そんなこと──」
そこまで言うとまた涙がこぼれて、どうしていいかわからなくなる。顔を見ると、ジョシュも悲しそうな顔をしていた。
「ごめんね、日向」
「どうしようか……」
日向は沈んだ気持ちでつぶやいた。
もう最後の朝が来てしまう。
クラスメイトに頼むにも、長期休暇中で残っている子供はほとんどいないだろう。そもそも、中学生なのにそんな話をして変な噂になってしまったら、ここに残るジョシュが困るだろう。自分はいなくなるにしても。
この件はもちろんそのうち解決できるかもしれないけど、日向はもうそこには自分がいないことが嫌だった。
ジョシュにすべてを任せて、自分ひとりで先にこの件を放り出すことになってしまう。
「……日向」
日向の家の前で足を止めたジョシュが、自分を見る。いつもの優しいまなざしと何かが違う。思いつめたようなその視線は少し不穏な感じがして、よくわからず日向は動揺した。
「ここは、きみがぼくの恋人になるしかないんじゃないか」
「え?」
なんて言ったらいいかわからない。
「ぼくはきみのことが大好きだし、きみはそこまでじゃないかもしれないけど、友達としては、嫌いじゃないだろ?」
ショックだった。そこまでじゃないとか、嫌いじゃないとか、乱暴に自分の気持ちを決めつけられるなんて。
いつも、そんな強引に話を進めるような人じゃないのに。
恋人になってくれと言われたのを、断った自分がいけないのだろうか。
頭に血が上ったような感じがして、目頭が熱くなる。
日向の様子に気づかなかったらしいジョシュが、真面目な顔で続けた。
「なあプーカ、そもそも、愛し合うの定義だけど、ふたりはどの程度深い愛じゃなきゃいけないんだ? 家族とか友達だって愛し合うことがあるだろ」
「愛し合うの定義?」
日向の肩に乗っていたプーカが小馬鹿にしたように言い返す。
「定義なんかいちいち言わなきゃいけないような愛は、愛ではないだろう」
「うーん」
ジョシュは考え込んでいる。その表情が、やがて驚きに変わった。
「え、日向。きみ、泣いてる?」
「……?」
言われたことを確認しようと、日向が自分の手を左頬に当てるのと、ジョシュの右手が、自分の左頬に触れるのとは同時だった。
「あっ、ごめん」
何に謝っているのか、ジョシュが慌てて重なり合った手を戻す。
残った自分の指先は濡れている感覚がして、自分が泣いていることを日向は確認した。
さっきむりやり抑えたせいだろうか。止めようとすると、更に涙はひどくなった。
「あの、日向。ごめんね、変なこと言って。きみの好きなようにすればいいって言ったのに。こんな、むりやり恋人になれなんて言って」
ジョシュは触れた手を日向に近づけたり戻したりして、おろおろしていた。自分の発言が引き起こした事態だとわかっているのだろう。
日向は、なぜ泣いているのか説明しようと思ったが、自分でもわからない。
「ごめん、もう今日は帰ろう。また明日、出発前に会えるよね?」
「うん……」
ジョシュは、なだめるように優しく、日向の目を見てささやく。ごしごしとシャツの袖で自分の頬を拭いながら、日向はうなずいた。
「あの、日向。明日、待ってるから。ぼくのこと、嫌いになったかもしれないけど、さよならは言おうよ。最後だし」
嫌いになった?
思ってもいないことを言われて、日向は顔を上げる。そんなこと、あるわけがないのに。
「そんなこと──」
そこまで言うとまた涙がこぼれて、どうしていいかわからなくなる。顔を見ると、ジョシュも悲しそうな顔をしていた。
「ごめんね、日向」
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