13 / 23
星の歌、涙の始まり
第十三話:星の癒しと未来への誓い
しおりを挟む
影の神殿は崩壊の危機に瀕していた。邪神の本体が姿を現し、巨大な闇の存在が神殿全体を覆い尽くしていた。無数の触手がうねり、咆哮が響き渡る中、インディゴとリナは絶体絶命の危機に立たされていた。
シルヴァスの犠牲がインディゴの心に深い衝撃を与え、彼女の冷酷な仮面は大きく揺らいでいた。リナはインディゴの手を握り、涙を流しながら言った。「インディゴ…私、怖いけど…あなたとなら、乗り越えられる。シルヴァスが信じてくれた。私も…インディゴを信じるよ。」
インディゴはリナの言葉に目を閉じ、静かに答えた。「愚かな人間…。だが…お前の言葉は、私に過去の温もりを呼び起こす。」 彼女の心に、天界の水晶宮殿での記憶が鮮やかに蘇った。アクアと手を取り合い、水晶庭園で未来を語り合う姿。スピカが花を摘み、アリエが槍を手に笑う光景。レグナの炎が庭園を照らし、リブラが調和の魔術で皆を繋ぐ瞬間。インディゴは呟いた。「アクア…アリエ…スピカ…私の同胞よ…。私は…君たちを見捨てた。だが、今…君たちの輝きを取り戻す。」
司祭王ザルゴスは邪神の力を完全に解放し、狂気に満ちた声で叫んだ。「インディゴ! 星の意志の裏切り者よ! お前も、この人間の娘も、邪神の闇に呑まれるがいい! エテルニアは我が神の支配下に置かれる!」 邪神の触手が一斉に襲いかかり、インディゴとリナを絡め取ろうとした。インディゴは水晶球を手に、へびつかい座の魔術を展開した。青白い光が触手を押し返したが、邪神の力は圧倒的で、彼女の魔術は限界に達していた。
リナはインディゴの背後に隠れ、木彫りの人形を握りながら叫んだ。「インディゴ! 負けないで…! 私、インディゴが大好きだよ…!」 その言葉が、インディゴの心に深く響いた。彼女の青白い瞳が一瞬輝き、冷酷な魔王の姿が完全に剥がれ落ちた。「リナ…お前は…私の希望の光だ。」 インディゴはリナを抱きしめ、静かに呟いた。「私の全てをかけて…お前を守り抜く。」
その瞬間、インディゴの水晶球が眩い光を放ち、封印された12星座の使徒たちの声が響き渡った。アクアの声が最も強く聞こえた。「ステラ…君の癒しは、エテルニアを変える…。私たちを信じて…。」 インディゴの心に、アクアとの約束が蘇った。天界での最後の会話――アクアが微笑みながら言った。「ステラ、どんな時も、私たちは一緒だよ。君の癒しが、エテルニアを救う。」 インディゴの瞳から涙が溢れ、彼女は叫んだ。「アクア…アリエ…スピカ…私の同胞よ…! 私は…癒しを捨てていた!」
インディゴの身体から星の光が溢れ出し、彼女の魔術が新たな力を帯びた。へびつかい座の魔術が完全覚醒し、青白い光が神殿全体を包み込んだ。光は邪神の触手を浄化し、ザルゴスの力を弱らせた。ザルゴスは驚愕し、「何…! なぜだ! お前の力は星の意志と共に尽きたはず…!」と叫んだ。インディゴは静かに答えた。「私の同胞の輝きは、闇ごときには消せぬものだ。私の癒しが、エテルニアを導く。」
インディゴはリナを安全な場所に避難させ、邪神と対峙した。彼女の魔術は癒しの力を帯び、邪神の闇を次々と浄化した。邪神の咆哮が弱まり、触手が溶けるように消えていった。ザルゴスは最後の抵抗を試み、邪神の力を自らの身体に取り込んだ。だが、インディゴの癒しの光はザルゴスの狂気を吸い出し、彼の憎しみを結晶化させた。ザルゴスは「我が…神…!」と叫びながら崩れ落ち、邪神と共に消滅した。
神殿は星の光に満たされ、崩壊が止まった。インディゴは膝をつき、息を切らしながら水晶球を見つめた。球には、12星座の使徒たちの結晶が映し出されていた。彼女たちの魂が強く脈動し、覚醒が近いことを示していた。インディゴは微笑み、呟いた。「私の同胞よ…もうすぐだ。君たちの輝きが、エテルニアを再び照らす。」
リナはインディゴに駆け寄り、彼女を抱きしめた。「インディゴ…! 勝った…! あなた、すごいよ…!」 インディゴはリナの頭を撫で、静かに言った。「リナ…お前がいてくれたからだ。シルヴァスの意志も…私の癒しを呼び戻した。」 リナは涙を流しながら笑い、「インディゴ…大好きだよ。シルヴァスも、喜んでるよね…」と呟いた。インディゴはシルヴァスの結晶を手に握り、頷いた。「シルヴァス…お前の守りは、私の希望となった。」
神殿の外に出ると、エテルニアの空に微かな星の光が戻り始めていた。インディゴはリナを連れて、近くの丘に登った。そこから見下ろすエテルニアの大地は、依然として荒れ果てていたが、星の光が希望の兆しを灯していた。丘の斜面には、戦いの影響を受けずに残った紫色の花が一面に咲き誇っていた。紫の花弁が朝露に濡れ、星の光を受けて柔らかく輝いていた。
リナは花に触れ、目を輝かせて言った。「インディゴ、見て! こんな綺麗な紫色の花…! まるで、星が地上に降りてきたみたいだ…。」
インディゴは紫色の花を見つめ、微かに微笑んだ。「この花…スピカが天界で愛した花に似ている。彼女はいつも、紫の花を庭園に植えて…皆を癒していた。」
リナは花を一輪摘み、木彫りの人形のそばにそっと挟んだ。「この花…新しい村に植えたいな。きっと、みんなを笑顔にしてくれるよね。」
インディゴはリナの言葉に頷き、心の中で思った。「ムラサキ…この色が、リナの未来を彩るだろう。」
リナはインディゴの手を握り、言った。「インディゴ…私は、新しい村を作りたい。みんなが笑って暮らせる場所を…。この紫色の花をたくさん植えて、優しい村にしたいな。インディゴは…どうするの?」 インディゴはリナを見つめ、静かに答えた。「私は…同胞たちを目覚めさせる旅を続ける。だが、リナ…お前が作る村は、スピカの庭園のように穏やかな場所になるだろう。」
彼女はリナにシルヴァスの結晶を手渡し、続けた。「これを…新しい村の守りとして持っていなさい。シルヴァスの意志が、お前たちを導く。」
リナは結晶を受け取り、涙を流しながら頷いた。「インディゴ…ありがとう。絶対に、素敵な村にするよ…! 紫色の花が咲く、優しい村に…。」 彼女はインディゴに抱きつき、最後の別れを告げた。インディゴはリナの背中を見送りながら、紫色の花が風に揺れる情景を目に焼き付けた。リナの未来が、この紫色の花のように美しく咲き誇ることを、インディゴは静かに願った。
インディゴは居城へと戻った。彼女は水晶炉の前に立ち、戦いで集めた感情の結晶を安置した。結晶が炉に吸い込まれると、12星座の使徒たちの結晶が強く輝き始めた。アクアの声が響いた。
「ステラ…君の癒しは、エテルニアを変えた…。私たち、目覚めるよ…。」 インディゴは微笑み、呟いた。「アクア…アリエ…スピカ…私の全てをかけて、君たちを待つ。」
エテルニアの空に、13星座の輝きが微かに戻った。インディゴは星見の塔に立ち、夜空を見上げた。彼女の心には、冷酷な魔王としての孤独と、癒しの使徒としての希望が共存していた。
リナが作る新しい村――後に「ムラサキ村」と呼ばれる場所、シルヴァスの意志、そして同胞たちの覚醒。インディゴの旅は新たな希望と共に続いていく。
物語は、星の光がエテルニアを再び照らす未来への誓いで幕を閉じた。
シルヴァスの犠牲がインディゴの心に深い衝撃を与え、彼女の冷酷な仮面は大きく揺らいでいた。リナはインディゴの手を握り、涙を流しながら言った。「インディゴ…私、怖いけど…あなたとなら、乗り越えられる。シルヴァスが信じてくれた。私も…インディゴを信じるよ。」
インディゴはリナの言葉に目を閉じ、静かに答えた。「愚かな人間…。だが…お前の言葉は、私に過去の温もりを呼び起こす。」 彼女の心に、天界の水晶宮殿での記憶が鮮やかに蘇った。アクアと手を取り合い、水晶庭園で未来を語り合う姿。スピカが花を摘み、アリエが槍を手に笑う光景。レグナの炎が庭園を照らし、リブラが調和の魔術で皆を繋ぐ瞬間。インディゴは呟いた。「アクア…アリエ…スピカ…私の同胞よ…。私は…君たちを見捨てた。だが、今…君たちの輝きを取り戻す。」
司祭王ザルゴスは邪神の力を完全に解放し、狂気に満ちた声で叫んだ。「インディゴ! 星の意志の裏切り者よ! お前も、この人間の娘も、邪神の闇に呑まれるがいい! エテルニアは我が神の支配下に置かれる!」 邪神の触手が一斉に襲いかかり、インディゴとリナを絡め取ろうとした。インディゴは水晶球を手に、へびつかい座の魔術を展開した。青白い光が触手を押し返したが、邪神の力は圧倒的で、彼女の魔術は限界に達していた。
リナはインディゴの背後に隠れ、木彫りの人形を握りながら叫んだ。「インディゴ! 負けないで…! 私、インディゴが大好きだよ…!」 その言葉が、インディゴの心に深く響いた。彼女の青白い瞳が一瞬輝き、冷酷な魔王の姿が完全に剥がれ落ちた。「リナ…お前は…私の希望の光だ。」 インディゴはリナを抱きしめ、静かに呟いた。「私の全てをかけて…お前を守り抜く。」
その瞬間、インディゴの水晶球が眩い光を放ち、封印された12星座の使徒たちの声が響き渡った。アクアの声が最も強く聞こえた。「ステラ…君の癒しは、エテルニアを変える…。私たちを信じて…。」 インディゴの心に、アクアとの約束が蘇った。天界での最後の会話――アクアが微笑みながら言った。「ステラ、どんな時も、私たちは一緒だよ。君の癒しが、エテルニアを救う。」 インディゴの瞳から涙が溢れ、彼女は叫んだ。「アクア…アリエ…スピカ…私の同胞よ…! 私は…癒しを捨てていた!」
インディゴの身体から星の光が溢れ出し、彼女の魔術が新たな力を帯びた。へびつかい座の魔術が完全覚醒し、青白い光が神殿全体を包み込んだ。光は邪神の触手を浄化し、ザルゴスの力を弱らせた。ザルゴスは驚愕し、「何…! なぜだ! お前の力は星の意志と共に尽きたはず…!」と叫んだ。インディゴは静かに答えた。「私の同胞の輝きは、闇ごときには消せぬものだ。私の癒しが、エテルニアを導く。」
インディゴはリナを安全な場所に避難させ、邪神と対峙した。彼女の魔術は癒しの力を帯び、邪神の闇を次々と浄化した。邪神の咆哮が弱まり、触手が溶けるように消えていった。ザルゴスは最後の抵抗を試み、邪神の力を自らの身体に取り込んだ。だが、インディゴの癒しの光はザルゴスの狂気を吸い出し、彼の憎しみを結晶化させた。ザルゴスは「我が…神…!」と叫びながら崩れ落ち、邪神と共に消滅した。
神殿は星の光に満たされ、崩壊が止まった。インディゴは膝をつき、息を切らしながら水晶球を見つめた。球には、12星座の使徒たちの結晶が映し出されていた。彼女たちの魂が強く脈動し、覚醒が近いことを示していた。インディゴは微笑み、呟いた。「私の同胞よ…もうすぐだ。君たちの輝きが、エテルニアを再び照らす。」
リナはインディゴに駆け寄り、彼女を抱きしめた。「インディゴ…! 勝った…! あなた、すごいよ…!」 インディゴはリナの頭を撫で、静かに言った。「リナ…お前がいてくれたからだ。シルヴァスの意志も…私の癒しを呼び戻した。」 リナは涙を流しながら笑い、「インディゴ…大好きだよ。シルヴァスも、喜んでるよね…」と呟いた。インディゴはシルヴァスの結晶を手に握り、頷いた。「シルヴァス…お前の守りは、私の希望となった。」
神殿の外に出ると、エテルニアの空に微かな星の光が戻り始めていた。インディゴはリナを連れて、近くの丘に登った。そこから見下ろすエテルニアの大地は、依然として荒れ果てていたが、星の光が希望の兆しを灯していた。丘の斜面には、戦いの影響を受けずに残った紫色の花が一面に咲き誇っていた。紫の花弁が朝露に濡れ、星の光を受けて柔らかく輝いていた。
リナは花に触れ、目を輝かせて言った。「インディゴ、見て! こんな綺麗な紫色の花…! まるで、星が地上に降りてきたみたいだ…。」
インディゴは紫色の花を見つめ、微かに微笑んだ。「この花…スピカが天界で愛した花に似ている。彼女はいつも、紫の花を庭園に植えて…皆を癒していた。」
リナは花を一輪摘み、木彫りの人形のそばにそっと挟んだ。「この花…新しい村に植えたいな。きっと、みんなを笑顔にしてくれるよね。」
インディゴはリナの言葉に頷き、心の中で思った。「ムラサキ…この色が、リナの未来を彩るだろう。」
リナはインディゴの手を握り、言った。「インディゴ…私は、新しい村を作りたい。みんなが笑って暮らせる場所を…。この紫色の花をたくさん植えて、優しい村にしたいな。インディゴは…どうするの?」 インディゴはリナを見つめ、静かに答えた。「私は…同胞たちを目覚めさせる旅を続ける。だが、リナ…お前が作る村は、スピカの庭園のように穏やかな場所になるだろう。」
彼女はリナにシルヴァスの結晶を手渡し、続けた。「これを…新しい村の守りとして持っていなさい。シルヴァスの意志が、お前たちを導く。」
リナは結晶を受け取り、涙を流しながら頷いた。「インディゴ…ありがとう。絶対に、素敵な村にするよ…! 紫色の花が咲く、優しい村に…。」 彼女はインディゴに抱きつき、最後の別れを告げた。インディゴはリナの背中を見送りながら、紫色の花が風に揺れる情景を目に焼き付けた。リナの未来が、この紫色の花のように美しく咲き誇ることを、インディゴは静かに願った。
インディゴは居城へと戻った。彼女は水晶炉の前に立ち、戦いで集めた感情の結晶を安置した。結晶が炉に吸い込まれると、12星座の使徒たちの結晶が強く輝き始めた。アクアの声が響いた。
「ステラ…君の癒しは、エテルニアを変えた…。私たち、目覚めるよ…。」 インディゴは微笑み、呟いた。「アクア…アリエ…スピカ…私の全てをかけて、君たちを待つ。」
エテルニアの空に、13星座の輝きが微かに戻った。インディゴは星見の塔に立ち、夜空を見上げた。彼女の心には、冷酷な魔王としての孤独と、癒しの使徒としての希望が共存していた。
リナが作る新しい村――後に「ムラサキ村」と呼ばれる場所、シルヴァスの意志、そして同胞たちの覚醒。インディゴの旅は新たな希望と共に続いていく。
物語は、星の光がエテルニアを再び照らす未来への誓いで幕を閉じた。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
無能妃候補は辞退したい
水綴(ミツヅリ)
ファンタジー
貴族の嗜み・教養がとにかく身に付かず、社交会にも出してもらえない無能侯爵令嬢メイヴィス・ラングラーは、死んだ姉の代わりに15歳で王太子妃候補として王宮へ迎え入れられる。
しかし王太子サイラスには周囲から正妃最有力候補と囁かれる公爵令嬢クリスタがおり、王太子妃候補とは名ばかりの茶番レース。
帰る場所のないメイヴィスは、サイラスとクリスタが正式に婚約を発表する3年後までひっそりと王宮で過ごすことに。
誰もが不出来な自分を見下す中、誰とも関わりたくないメイヴィスはサイラスとも他の王太子妃候補たちとも距離を取るが……。
果たしてメイヴィスは王宮を出られるのか?
誰にも愛されないひとりぼっちの無気力令嬢が愛を得るまでの話。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる