ダンゴムシになったら

第十話：試練と契約

幻影の森で薬草を採取した後、ナオトは魔法のキノコを食べた。無駄なことだとわかっていた。「1週間後に再び食べることはないだろう。そして、人間に戻ることも…」彼の決意は固まっていた。

生命の樹への道は、地下のトンネルを進むしかなかった。ユズキを救うためには、人間への回帰を諦める覚悟が必要だった。ナオトは、その決断を胸に刻み、急いだ。

ダンゴムシとしての体を最大限に活用し、彼は地中を移動した。トンネルは暗く、長く、時には危険な生物が現れることもあったが、彼はユズキの笑顔を思い出し、恐れずに進んだ。

「ユズキ、俺は絶対に君を救う」とナオトは心の中で誓った。彼の心には、友情と自己犠牲の精神が燃えていた。これがユズキを救う最後のチャンスだと理解し、ナオトは一刻も早く生命の樹にたどり着くために全力を尽くした。


地下のトンネルは、ただ進むだけではなかった。ナオトは、自然の試練に直面した。突然の地震がトンネルを揺さぶり、地下水脈からの水の流入が彼の道を阻む。そして何よりも恐ろしいのは、地下の支配者である巨大な虫たちだった。ナオトは、ダンゴムシとしての特性を活かし、丸まって防御したり、地中を移動して危険を回避したりした。

しかし、試練はただの物理的なものではなかった。トンネルの中では、ナオトの心の闇も試される。過去の記憶、人間としての生活への未練、ユズキを救うことへの不安が彼を襲った。ナオトは、それらを振り払うため、ユズキの笑顔と友情を胸に刻み、心の試練を乗り越えた。「俺は、ユズキのためにここにいる。どんな試練も乗り越える」と心の中で呟いた。


生命の樹の出現場所に近づくにつれ、魔力が強くなっていった。ナオトは、周囲の石が光り出すのを感じ、地下でも空気が変わっていくのを知覚した。この魔力は、彼に新たな力を与える一方で、試練の厳しさを増すものでもあった。


ついに、ナオトは生命の樹の出現場所に到達した。そこは地面に複雑な魔法陣が描かれていた。しばらくすると、空から光の柱が降り、球体が現れ、それが巨大な樹に変化する。この現象はまるで宇宙船の着陸を思わせる。ハッチが開き、一人の宇宙人が出てきた。

「ようこそ、ダンゴムシの勇者！私はこの生命の樹の管理者、ゼラノスだ。君がここまでたどり着くとは、驚きだね！この魔法陣は、生命の力が地上に降り立つ場所。そして、君が求める葉は、この樹からしか得られないんだよ」と、ゼラノスはしゃべり続けた。

ナオトは、ゼラノスがよくしゃべることに驚きつつも、葉について質問した。「葉を手に入れるには、どうすればいいんだ？」

ゼラノスはにんまりと笑い、「簡単だよ。ただ、君の魂と契約を結ぶだけさ。2048日間、樹のメンテナンスを手伝うんだ。ダンゴムシとしての手先の器用さは、私たちには重宝する。もちろん、患者の病を治してからでいいよ。これは魂の契約だから、破ると命はないことを覚えておくんだ」と、契約の内容を説明した。

ナオトは、ユズキの命を救うためのこの最後の試練に挑む覚悟を決めた。「ユズキの笑顔を取り戻すためなら、どんな契約でも受け入れる」と心の中で誓い、ゼラノスと契約を結ぶ決意を固めた。

「では、契約を結ぼう。君の決意がこの世界を救うかもしれないからね！」ゼラノスは、ナオトの手に葉を渡し、友情と自己犠牲の物語が次のステップへと進む瞬間を迎えた。