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俗世

決意と欲の狭間で

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 恵美子はマンションに帰り、フローリングの部屋で座禅を組む。

(俗世に塗れて意思を貫けるか、これは私の覚悟が問われている)

 ショルダーバッグからスマホを取り出す。

(もし、崩れるようなら、得度も考えなおそう)

 スマホを操作して、出会い系のサイトを開く。

 男を見つけるのは簡単だった。
 
 就職活動が終わって、暇を持て余している大学生と会うことにした。

 ベランダの窓を見るとすでに、夕日が差し込んでいた。

 シックな化粧にパンツルックで色気がないが、待ち合わせに間に合いそうにないのでそのままマンションを出た。

  待ち合わせ場所は京王線の神泉駅だった。

 一時間以上かけて駅に着いた。

 駅の南側にマクドナルドがあるので、そこで待ち合わせという事だ。

 店は子供を連れた親子連れ、会社帰りの会社員やOLで賑わっている。

 店の入り口に置かれたベンチに一人の男が見える。

 赤色のブックカーバーで本を読んでいるのを目印にしてくださいとメールには書いてあった。

 恵美子はメールを送った。

 ベンチで本を読んでいた男が背広の内ポケットから携帯を取り出した。

 間違いない。

 恵美子は速歩きでベンチに向かう。

 ベンチの男をのぞき込むように

「山野くんかな?」

「はい、山本さん?」

 男は立ち上がった。

「そうです! 恵美子です、会えて嬉しいわ」

 恵美子の口元も緩む。

「ごめんなさいね、こんなシックな格好で」

 山野は恐縮したように

「いえ、そんな、お綺麗ですよ」

「こんなところで、なんですから、どこかでお茶でもしながら」

 山野と恵美子は文化村通りにある有名コーヒーチェーン店に入った。

「山本さんは何にします?」

 甘えるような声で

「恵美子でいいわよ、下の名前で呼んでほしいな」

「じゃあ、恵美子は?」

 恵美子はカウンターの上に掲げられているメニューを眺めながら

「ブルーマウンテンのLで」

「じゃあ、僕もそれで」

 注文をして、トレーにコーヒーを受け取ると窓際の席に座った。



「可笑しかったわね」

 恵美子はクスクスと笑った。

「どうして?」

「だって、私は48で、山野くんはまだ23よ、それなのに下の名前で呼んでって」

「可笑しくないですよ、それよりも僕も下の名前で呼んでほしいな、佑太って」

「ありがと、佑太、年を気しないでため口いいからね」

 コーヒーにミルクを入れマドラーでかき混ぜながら

「でも変な気分なの、私には26の娘がいて、孫もいるの、それなのに娘と同じ世代の男と交わってる」

「男女の付き合いに年齢なんて関係ないんじゃないかな、重要なのは相性」

 佑太は右手で黒縁の眼鏡のフレームを触りながら本質的な事を言った。

「そんな年で人生の側面の深層を語るなんて凄いわ、驚いちゃった」

 窓の外に目を遣ると、辺りは暗くなりヘッドライトを点けた車が忙しなく行き交う。

「恵美子がそういうんだから、そうかもしれない」

「それって、伊達に年を喰っていないって遠回しないいかた?」

 恵美子は苦笑いしながら言った。

「だって恵美子はとても四十代には見えないよ、どう見ても三十代」

「今、流行りの美魔女ってやつ?」

「そう、それだよ!」

 思わず二人が破顔(はがん)した。

 それから一時間余り談笑した後、店を出た。

 自然と佑太の左手が恵美子の右手に伸び、手を握る。

 その手の温もりが恵美子の心を包み込んだ。

 夜のネオン街の中、二人の歩みはラブホテルへと向かっていった。


 

  道玄坂のラブホテルに二人は入っていった。

 入った部屋はダブルベッドの側にソファーとテーブルがあり、壁には大型の液晶テレビが掛けられていた。

 ベッドに入る前に、二人は一緒にバスに入ることにした。

 お風呂は泡の出るブロアバスで、二人がゆったり入れる大きなサイズだ。

 脱衣所で佑太は恵美子を抱き寄せて唇を奪った。

 燎原の火のごとく、二人の愛は燃え上がった。

 キスが終えると、恵美子は

「ねぇ、佑太、私の服から脱がせて」

 激しい吐息を漏らしながら、甘えた声で強請(ねだ)った。

 佑太は無言で頷くと、恵美子のコートを脱がせた。

 白いブラウスのボタンを上から一つずつ外していく

 興奮して上気し顔を赤らめた恵美子の顔。

 小刻みに吐かれる吐息が佑太の顔を吹きつける。

 佑太の欲情が下半身を大きく隆起させる。

 それに気づいた恵美子は左手で隆起した部分を撫でる。

 隆起した部分はさらに硬さを増し、大きく盛り上がった。

 ボタンが一つずつ外され、肌が開(はだ)けていくにつれて、磁器のように白い肌が見えてきた。

 ブラウスを外すと、大きなピンクのブラジャーが露になった。

 佑太がブラジャーのホックを外している間に

 恵美子は自らパンツを脱ぎ、黒いストッキングを脱ぐ。

 佑太が恵美子の下半身に目を遣ると長い脚とブルーのパンティーが見える。

 佑太は耳元で囁くように

「長くて綺麗な脚だね、恵美子」

「佑太に褒められて嬉しい」

 長身の佑太を見上げて言った。

 その瞳は少女のように純情で綺麗だった。

「こんどは私が脱がしてあげる」

 すでに佑太の背広とネクタイは外されている。

 恵美子は佑太のワイシャツを慣れた手つきで一つずつ外す。

 佑太とは対照的にあっという間にズボンも下ろしてパンツと靴下の姿にした。

 佑太の下半身を見て嬉しそうな表情で

「もうこんなに大きくなってる」

「お風呂に入ろう」

 佑太が催促すると。

 佑太はパンツと靴下を脱いで先に入った。

 それに続いて恵美子もパンティを脱ぎでそれに続いた。
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