両片想いのループの中で

静穂

文字の大きさ
3 / 11

sideH 1-3

しおりを挟む
sideH 1-3

「…これ、なに…?」

いつもと変わらない様に言ったつもりだったのに、私の声は掠れていた。

目の前にある紙に書いてあるのは、「合格」の文字。
高校名は二人で決めた志望校じゃなくて、田舎に住んでいる私ですら知っている、東京のいわゆる「芸能人御用達」の学校。
見えているのに読めなくて、そのうち文字が滲んだ。

「あぁ…ごめん…東京に行く…」

「東京に行こうと思うんだけど、どう思う?」でもなく、「東京に行く」

言い切っちゃうんだね。
もう、決めちゃったんだね。

そういう、チャンスを掴もうと即決する翔の事、大好きだよ。
いつも頼もしく思ってた。
一緒にやろうって、物心ついたときから引っ張ってくれた。
男気溢れる翔が大好き。

だけど、分かってるかな。
東京に行くって、別れるって事なんだよ。
誕生日も産まれた病院も一緒で、習い事だけでなく予防注射だって一緒に打って泣いてたのに。
とてつもなく短い春も、BBQが何回出来るかワクワクした夏も、紅葉しない秋も、そんなに寒くならないのに頑張ってコート着る冬も。
毎年巡って来た季節に、一緒にいれないって事なんだよ。

頭は忙しなく動くのに、言葉にする事が出来なくて。
それでも涙は止まらなくて。
なのに翔はずっと立ち止まったまま。

応援したいんだよ。
側にいたいんだよ。
だって、15年、そうやってきたじゃん。
たった15年だけど、今の私の全てに翔が居るんだよ。
この部屋だって、私が触れてないとこなんて1㎜も無い。
お互いの家族だって知っているし、知らないとこなんて無かったハズなのに。










秒針の音だけが響く。

見上げた先には、困った様な顔を浮かべた翔がいて。

…あぁ、もう何を言ってもこの決定は覆らないんだって悟った。

「…いつ…引っ越すの…」
「…卒業式の次の日…」
「私の合格発表は見に行かない…?」
「…うん。」
「…そっか…」

その後はどうしたか覚えていない。

唯一の救いは、学校が自由登校になった事で、翔ともクラスメイトとも会わなくて済んだ事。

入試だって受けたハズなんだ。
でも何も覚えてなくて。
毎日毎日、息をするのがやっとの状態で生きていた。


















卒業式の日。
実は頭の良かった翔は、卒業を代表して挨拶をして。
クラスの子達と楽しげに写真を撮っていた。
私を目の敵にしていた陽キャの女の子達が、私と翔との写真を撮ってくれた。
いつも怒ってばっかりだった先生が号泣してるのをみんなで笑って。
帰り間際には、後輩の女の子達から学ランのボタンを強請られて。

晩御飯は翔の家族と私の家族で、いつもお祝いの時に使う、海辺のホテルの中華レストランでいっぱい食べた。
信じられない位笑って、明日から会えないなんて、実は壮大なドッキリなんじゃないかって何度も願った。

だけど、ドッキリなんかじゃなくて。
ちゃんと空港にお見送りに行った。
「私は女優」
そう自分に言い聞かせて、人生一番の笑顔を見せた、と思う。

友達・家族に見送られながらゲートに向かう翔を、本当に見えなくなるまで見続けた。
振り返って、振り返って!
最後まで祈ったけど、翔が振り返る事はなく。
明確な別れの言葉もないままに、私の世界は色を失った。







 












そして私は、二人で行くハズだった高校に進学した。
あんなにテンションの上がった制服も、新しい出会いにも心動かないままに。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます

おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」 そう書き残してエアリーはいなくなった…… 緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。 そう思っていたのに。 エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて…… ※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。

君が見た春をもう一度

sika
恋愛
高校時代、ひとつの誤解で離れた二人。 十年後、東京で再会した彼女は、もう誰かの「恋人」になっていた。 置き去りにした想い、やり直せない時間、そしてそれでも止まらない心。 恋と人生のすれ違いを描く、切なくも温かい再会ラブストーリー。

愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました

蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。 そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。 どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。 離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない! 夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー ※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。 ※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。

たとえ夜が姿を変えても ―過保護な兄の親友は、私を逃がさない―

佐竹りふれ
恋愛
重なる吐息、耳元を掠める熱、そして——兄の親友の、隠しきれない独占欲。 19歳のジャスミンにとって、過保護な兄の親友・セバスチャンは、自分を子供扱いする「第二の兄」のような存在だった。 しかし、初めてのパーティーの夜、その関係は一変する。 突然降ってきた、深く、すべてを奪うような口づけ。 「焦らず、お前のペースで進もう」 そう余裕たっぷりに微笑んだセバスチャン。 けれど、彼の言う「ゆっくり」は、翌朝には早くも崩れ始めていた。 学内の視線、兄の沈黙、そして二人きりのアパート――。 外堀が埋まっていくスピードに戸惑いながらも、ジャスミンは彼が隠し持つ「男」の顔に、抗えない好奇心を抱き始める。 「……どうする? 俺と一緒に、いけないことするか?」 余裕の仮面を被るセバスチャンに、あどけない顔で、けれど大胆に踏み込んでいくジャスミン。 理性を繋ぎ止めようとする彼を、翻弄し、追い詰めていくのは彼女の方で……。 「ゆっくり」なんて、ただの建前。 一度火がついた熱は、誰にも止められない。 兄の親友という境界線を軽々と飛び越え、加速しすぎる二人の溺愛ラブストーリー。

幼馴染と夫の衝撃告白に号泣「僕たちは愛し合っている」王子兄弟の関係に私の入る隙間がない!

佐藤 美奈
恋愛
「僕たちは愛し合っているんだ!」 突然、夫に言われた。アメリアは第一子を出産したばかりなのに……。 アメリア公爵令嬢はレオナルド王太子と結婚して、アメリアは王太子妃になった。 アメリアの幼馴染のウィリアム。アメリアの夫はレオナルド。二人は兄弟王子。 二人は、仲が良い兄弟だと思っていたけど予想以上だった。二人の親密さに、私は入る隙間がなさそうだと思っていたら本当になかったなんて……。

貴方の事なんて大嫌い!

柊 月
恋愛
ティリアーナには想い人がいる。 しかし彼が彼女に向けた言葉は残酷だった。 これは不器用で素直じゃない2人の物語。

好きな男子と付き合えるなら罰ゲームの嘘告白だって嬉しいです。なのにネタばらしどころか、遠恋なんて嫌だ、結婚してくれと泣かれて困惑しています。

石河 翠
恋愛
ずっと好きだったクラスメイトに告白された、高校2年生の山本めぐみ。罰ゲームによる嘘告白だったが、それを承知の上で、彼女は告白にOKを出した。好きなひとと付き合えるなら、嘘告白でも幸せだと考えたからだ。 すぐにフラれて笑いものにされると思っていたが、失恋するどころか大切にされる毎日。ところがある日、めぐみが海外に引っ越すと勘違いした相手が、別れたくない、どうか結婚してくれと突然泣きついてきて……。 なんだかんだ今の関係を最大限楽しんでいる、意外と図太いヒロインと、くそ真面目なせいで盛大に空振りしてしまっている残念イケメンなヒーローの恋物語。ハッピーエンドです。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりhimawariinさまの作品をお借りしております。

すれ違ってしまった恋

秋風 爽籟
恋愛
別れてから何年も経って大切だと気が付いた… それでも、いつか戻れると思っていた… でも現実は厳しく、すれ違ってばかり…

処理中です...