両片想いのループの中で

静穂

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中学最後の大会の後、ちょっとしてから。

しょうがテレビに出始めた。
あの大会でのダンスが評価されて、声をかけてもらえたのだ。
全国的に有名な芸能事務所。
カッコいい人ばかりのあの事務所。

ダンスだけで生きていけるのは一握り。

だからこそ、そのチャンスを逃してはいけない。
そう周りから説得されて通い出した、東京。 

私達の地元からは、飛行機を使わないといけなくて。

マイルめっちゃ貯めて二人で夢の国、行こうぜ、なんて笑いながら話してた。

毎日隣にいた翔は、よくて週に1回程度しか会えなくなった。
都会に馴染む様に、顔つきも洗練されて。
会う度に身長も伸びていて、可愛らしい思春期の男の子から、青年になっていた。

雑誌やテレビで見る翔は、
テストで思った様に点数が伸びなかった、
と拗ねる彼とは別人だった。
いつもは着ないシャツに、いつもは付けないアクセサリー。
挑発する様に笑う彼は、私の知ってる「翔」では無かった。

だからこそ、メディアに出れば出る程「釣り合わない」って言われてる様な気がして。

そんな事を考えたく無いから、受験勉強に集中した。
二人で一緒に決めた志望先は、夏服と冬服で雰囲気が変わる人気高。
私の成績では頑張らないと通えない、いわゆる進学校だった。
通学はバスになるけど、今までと同じ様に、当たり前にずっと一緒にいるつもりだった。

だけど、私の気持ちとは違いどんどんと開いていく、翔との距離。

東京土産は定番のバナナのお菓子から、地元では買うことの出来ないおしゃれなお菓子になった。

…誰に教えてもらったの…?

二人でいる時の会話が、先生やクラスメイトの話題から、一緒にお仕事をした先輩や芸能人の話になった。

…可愛いあの女優さんと仲良くしないで…








会えない時にはあんなに苦しいのに、会ってしまうと二人の間に透明なパネルが増えていく様で。

笑顔でいたいのに、いつも涙を堪える様になった。

楽しみにしてた毎週水曜日の帰り道、
お互いの妹と弟と4人で帰る事が増えていく。
もちろん、並んで歩く事も手を繋ぐ事も無くなった。
知らない人から声を掛けられて、それに笑顔で応える翔が、全くの別人に見えて。

13歳から付き合い始めて3年、私達の間には何もなかった。
手を繋ぐことだけが、翔の体温を受け取れる唯一の手段だったのに。

きっとここで、もっと近くにいれたなら。
お互いに我慢せずに言いたいことを言い合う事が出来ていたのなら…

















あの日。
急に呼び出された翔の部屋で見たのは、東京の高校の合格通知とワンルームの契約書だった。
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