両片想いのループの中で

静穂

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中3の夏。
小さい頃から一緒に練習してきたチームでの最後の大会。
毎年順位を上げてきた。
今年がきっと、このチームで踊るのは最後。
優勝したい、優勝しよう。
何度もチームで励まし合って。
ぶつかり合う事も多かったけど、その分固く繋がったと思う。
地方大会を勝ち抜いて、全国。
後1勝したら、決勝と言うところで、俺達チームは敗退した。

自信があった。
悪い所は全部修正して臨んだ。
…今になって思うと、その自信が、悪い方に作用してしまったんだと思う。
茫然としたまま華を見ると、人前では絶対に泣かないあいつが号泣してて。
それを見たチームメイト達がびっくりして泣き止んだ。
「頑張った。頑張ったよ、俺達。」
自然と出た言葉で、みんながガッツポーズしてくれたのが嬉しかった。

その後、応援に来てくれてた家族達と一緒にお疲れ様会をして。
そんな時、ずっと教えてくれてた山田先生から呼ばれた。

「今日のダンスを見て、是非にと言ってくれてるんだ」
男の俺でも聞いた事のある大手芸能事務所。
芸能界には興味がなかったけど、これでダンスが続けられるなら、という微かな光を感じてしまった。
両親もダンスで生きていけるのは一握りなんだから、やれるだけやってみたらと後押ししてくれた。
だから、いわゆるレッスン生の立場でダンスだけ踊っていれば良いと思ってた。
実際、呼ばれる機会はそう多くないかも知れないって言われてたから。
ほんとに最初は軽い気持ちだったんだ。

夏休み中は3週間、ホテル暮らしだった。
そのうち2週間は専業主婦の母親が、同じく夏休み中の妹を連れて遊びに来た為、「ひとり」を感じなくて、完全に旅行気分だった。
ダンスレッスンは楽しくて、テレビで観てた人も気さくな人ばかりで、刺激的。
部活の延長みたいな、夢の様な時間だった。
試しに出てみようか、と言われて着いていった所は、大人が忙しそうに動き回っている所で、どうやら雑誌の撮影らしいってことが分かった。
言われるがまま、着替えて、メイクやヘアセットをされる。
白い幕の前に座って、カメラに向けて笑って。一緒に映る子達の見様見真似で笑った。

明日は地元に帰るという日。
急に呼ばれて、先輩の後ろで踊る事になった。同じ衣装を着た子達と、本番2時間前に振り入れをして、そこからは目にも留まらぬ早さで本番。
事前に華に連絡する時間も無かった。
でも、俺としてはそんなに問題視する事でも無かったし、バックだしあまり映る事も無いだろうと思ってた。
だから、その日から自分の人生が変わるなんて思ってもいなかったんだ。
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