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第四部
序章
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「ちょっとっ! 二人とも、そろそろ離れてよっ」
焦り声が俺の耳朶を打ち、振り向けば頬を膨らますヴェルが俺とフローレンスを交互に睨んでいた。
「ってか、まずフローレンスちゃん、服を着てってば!」
生まれた時の姿のままで俺の服の裾を握りしめる彼女に、ヴェルが顔を赤らめて俺とフローレンスを引き剥がそうとする。
だが彼女の腕から伸びる無数の蔓は俺を強く、それでいて優しく巻き付いて離させはしない。
ぺと、と彼女の艶めかしい素肌が、服の破れて露わになった俺の肌へと隙間なく密着する。
先程まで激闘を繰り広げていたためか、白磁色の肌は熱を持っている。
だが妙なことに、暑苦しさを全く覚えることはなく、むしろ、聖母もかくやと言うふうな安心感を醸し出していた。
「もうっ、レンもフローレンスちゃんもっ、そろそろいい加減に──!」
怒気を含んだヴェルの声と共に、すぱっ、と心地よい音とともに、何かがはらはらと床に落ちていく音がした。
同時に俺を離そうとしなかった蔓の圧力が消える。
見れば足元で散らばっていたのは、フローレンスの蔓だったものの残骸。
慌ててヴェルを見れば、鋭利な刃となった三本の触手が彼女の腕から生えていた。
「ちょ、ヴェル──」
流石に武力で俺とフローレンスを引き剥がすとは思いもしなかった。
たしかに俺は自由になれたが、それではフローレンスが傷ついてしまうではないか、と咎めようとして。
「あらあら、非常に名残惜しいことですけれど、ヴェルの手前、これ以上は自重するとしましょう」
くすくす、と笑いながら立ち上がるフローレンスは、別段切り裂かれた蔓のことを気にしたそぶりも見せず。
大丈夫なのか、と彼女の腕を見れば、手首から伸びる蔓は既に再生していて。
細く長く伸びた蔓はしゅるり、と短くなっていき、やがて人間と何ら変わりのない腕へ姿を変えていく。
(そうだった……。フローレンスの四肢は無限に再生するんだった)
ヴェルと同じく、厄介な特性を持つ者が現れたものだ、と苦笑した。
改めてフローレンスを眺める。
白磁のように白い肌、腰周りは滑らかな陶器のように無駄な脂肪はない。
それでいて胸や臀部、太ももは男の劣情を催して余りあるほどの肉付き。
夜の洞窟の暗闇と、微かに洩れる星の光のコントラストが、彼女の全身を淡く照らし出して。
絶妙なまでに、彼女は妖艶であった。
「……ちょっと、レン。なにじろじろみてるのっ」
あ、と我に帰るも時既に遅し。
ヴェルの凍てつく視線が、俺の胸を貫いた。
「い、いや……違うんだ、ヴェル」
「なにが?」
普段の快活な口調は形を潜め、俺は彼女の背後にどす黒い漆黒のオーラを垣間見た。
慌ててヴェルの視線をフローレンスに誘導する。
俺の示す先は、彼女の手足。
腕や太ももは相変わらず細くて白い。
だが、その手は蔓と同じ緑色で、その素足は根のように茶色いのだ。
「ヴェルと違って、あの姿は少々問題が出てしまう」
俺の言いたいことを理解したのか、ヴェルはハッ、と俺の瞳を見据えて頷く。
ヴェルは全身、例え真っ裸になろうとも、その姿は見た目だけなら完璧な十三歳少女のそれと変わらない。
だが、フローレンスは違うのだ。
この世界では半猫人やエルフ、ドワーフ、半竜人と呼ばれる様々な亜人が人間と共に暮らしている。
昔は亜人に対する差別もあったようだが、そんなものは二百年前、英雄グローリアスの時代に撤廃された。
そんな現代だから、亜人は昔と違って集落地でひっそりと過ごすことも減り。
今では大都市に行けば、この世の全ての種族に出会うことができる、とまで言われている。
フローレンスのような手が緑色で足が茶色な種族など、これまでにいないのだから、この時代においては珍しく思われるだろう。
いや、それだけではなく、彼女の正体を突き止めようと観察する人がいないはずがない。
これからフローレンスが生きていくとして──その色は自らの正体が露見されかねない危惧を孕んでいる。
もちろんここには、彼女が人間世界で生きていくのなら、という前提はあるが。
「フローレンス」
「はい、レン様。……どうしました?」
「……フローレンスは、これからどうするつもりなんだ?」
その言葉に、彼女はしばし黙り込む。
彼女は俺を今となっては慕っているものの、その心には人間に対する復讐の炎が変わらず燃え続けている。
遠く泡を吹いて動かないゾイドを侮蔑するように睨み、葛藤の表情を見せた彼女はぶんぶん、と首を横に振った。
激しい戦闘で幾つもの木々が薙ぎ倒され、遠く西に聳えるベルガニー山脈の稜線がここからでも見ることができる。
フローレンスの瞳はいまやベルガニー山脈に向けられて、動く事はない。
彼女の瞳には、何が映っているのだろう。
夜の帷が落ちて暗くなった今、その表情を窺い知る事はできなかった。
「……レン様」
不意に、フローレンスの口から俺の名前が漏れる。
先程まで遠くを見据えていたその目は、今は確固たる信念を携えて俺を見つめた。
「……わたくしは家族を、民を、愛したものすべてを失ったのです。精霊様はこれが運命だと仰った。……以前のわたくしなら、運命の導きに身を流されるまま、この矮小な命は遠くない内に地で果てたことでしょう」
初めて見せた真剣な表情に、はからずもこっちも固くなる。
「わたくしの願いは、食人花という民を再興させたい、それは変わりませんわ。ただ──今までは只の叶うことのない望みだと。だけど、今、わたくしは食人薔薇からプリンセス・ローズへと進化して、この姿に生まれ変わった」
自らの純白の裸身を誇らしげに撫でるフローレンスに、もはや劣情は沸き起こることなく、その堂々たる振る舞いと言葉に羨望さえ覚えたのだ。
俺が持つ【王の系譜】という未だに真価を発揮しないスキルは、むしろ彼女のためにあるべきなのだ。
フローレンスは尚も言葉を紡げる。
「わたくしは運命を信じるけれど、運命を変えられるとも信じている──この新しい力ならば、民を蘇らせることも夢じゃないはずですわ」
そう言って、フローレンスは俺の手を握る。
そんなはずはないのに、彼女の手が妙に熱く感じられた。
「命を蘇らせるなどというのは、神話の時代の言い伝えでしか残されていません。──レン様、貴方様は世界中を冒険するのだと仰いました」
そんなこと言ったっけ、と記憶を探る。
……ああ、宿屋でたわいない会話をしている時に、そう告白したかもしれないな、と一人で納得した。
フローレンスは俺に首肯を求めていたわけではないらしい。
「レン様の旅に、ぜひ同行したいのです。世界中のどこかには、もしかしたら命を蘇らせる術が残っているかもしれない……」
確かに、と俺は頷く。
この世界オーギュスタットは、まだまだ前人未到の地が多く存在する。
とくにこの国ハルヴェリア王国の北に聳えるベルガニー山脈を、さらに越えた北には広大なる森林が広がっており、その先を見たものはまだいないという。
もしかしたら、世界の果てに、伝説や神話がまだ生きているかもしれない。
不意に心が高揚するのを感じた。
ハーガニーに訪れて冒険者となってからまだ一ヶ月ほどしか経っていない。
たった一ヶ月のはずなのに、あまりにも忙しすぎて、半年ほど経っているんじゃないかと錯覚してしまうほどに、俺の冒険者の生活は濃密であった。
だから、しばらく忘れてしまっていたのだ。
世界中を冒険する、それに対する憧憬を。
思わず、俺はフローレンスの手をぎゅっ、と強く握り直した。
「──ああ。フローレンスのように強い人が仲間になってくれるのなら、これほど嬉しいことはない」
「そ、それでは……」
確かめるようなフローレンスの言葉に、
「これから、よろしくな」
そう言って、俺は笑った。
焦り声が俺の耳朶を打ち、振り向けば頬を膨らますヴェルが俺とフローレンスを交互に睨んでいた。
「ってか、まずフローレンスちゃん、服を着てってば!」
生まれた時の姿のままで俺の服の裾を握りしめる彼女に、ヴェルが顔を赤らめて俺とフローレンスを引き剥がそうとする。
だが彼女の腕から伸びる無数の蔓は俺を強く、それでいて優しく巻き付いて離させはしない。
ぺと、と彼女の艶めかしい素肌が、服の破れて露わになった俺の肌へと隙間なく密着する。
先程まで激闘を繰り広げていたためか、白磁色の肌は熱を持っている。
だが妙なことに、暑苦しさを全く覚えることはなく、むしろ、聖母もかくやと言うふうな安心感を醸し出していた。
「もうっ、レンもフローレンスちゃんもっ、そろそろいい加減に──!」
怒気を含んだヴェルの声と共に、すぱっ、と心地よい音とともに、何かがはらはらと床に落ちていく音がした。
同時に俺を離そうとしなかった蔓の圧力が消える。
見れば足元で散らばっていたのは、フローレンスの蔓だったものの残骸。
慌ててヴェルを見れば、鋭利な刃となった三本の触手が彼女の腕から生えていた。
「ちょ、ヴェル──」
流石に武力で俺とフローレンスを引き剥がすとは思いもしなかった。
たしかに俺は自由になれたが、それではフローレンスが傷ついてしまうではないか、と咎めようとして。
「あらあら、非常に名残惜しいことですけれど、ヴェルの手前、これ以上は自重するとしましょう」
くすくす、と笑いながら立ち上がるフローレンスは、別段切り裂かれた蔓のことを気にしたそぶりも見せず。
大丈夫なのか、と彼女の腕を見れば、手首から伸びる蔓は既に再生していて。
細く長く伸びた蔓はしゅるり、と短くなっていき、やがて人間と何ら変わりのない腕へ姿を変えていく。
(そうだった……。フローレンスの四肢は無限に再生するんだった)
ヴェルと同じく、厄介な特性を持つ者が現れたものだ、と苦笑した。
改めてフローレンスを眺める。
白磁のように白い肌、腰周りは滑らかな陶器のように無駄な脂肪はない。
それでいて胸や臀部、太ももは男の劣情を催して余りあるほどの肉付き。
夜の洞窟の暗闇と、微かに洩れる星の光のコントラストが、彼女の全身を淡く照らし出して。
絶妙なまでに、彼女は妖艶であった。
「……ちょっと、レン。なにじろじろみてるのっ」
あ、と我に帰るも時既に遅し。
ヴェルの凍てつく視線が、俺の胸を貫いた。
「い、いや……違うんだ、ヴェル」
「なにが?」
普段の快活な口調は形を潜め、俺は彼女の背後にどす黒い漆黒のオーラを垣間見た。
慌ててヴェルの視線をフローレンスに誘導する。
俺の示す先は、彼女の手足。
腕や太ももは相変わらず細くて白い。
だが、その手は蔓と同じ緑色で、その素足は根のように茶色いのだ。
「ヴェルと違って、あの姿は少々問題が出てしまう」
俺の言いたいことを理解したのか、ヴェルはハッ、と俺の瞳を見据えて頷く。
ヴェルは全身、例え真っ裸になろうとも、その姿は見た目だけなら完璧な十三歳少女のそれと変わらない。
だが、フローレンスは違うのだ。
この世界では半猫人やエルフ、ドワーフ、半竜人と呼ばれる様々な亜人が人間と共に暮らしている。
昔は亜人に対する差別もあったようだが、そんなものは二百年前、英雄グローリアスの時代に撤廃された。
そんな現代だから、亜人は昔と違って集落地でひっそりと過ごすことも減り。
今では大都市に行けば、この世の全ての種族に出会うことができる、とまで言われている。
フローレンスのような手が緑色で足が茶色な種族など、これまでにいないのだから、この時代においては珍しく思われるだろう。
いや、それだけではなく、彼女の正体を突き止めようと観察する人がいないはずがない。
これからフローレンスが生きていくとして──その色は自らの正体が露見されかねない危惧を孕んでいる。
もちろんここには、彼女が人間世界で生きていくのなら、という前提はあるが。
「フローレンス」
「はい、レン様。……どうしました?」
「……フローレンスは、これからどうするつもりなんだ?」
その言葉に、彼女はしばし黙り込む。
彼女は俺を今となっては慕っているものの、その心には人間に対する復讐の炎が変わらず燃え続けている。
遠く泡を吹いて動かないゾイドを侮蔑するように睨み、葛藤の表情を見せた彼女はぶんぶん、と首を横に振った。
激しい戦闘で幾つもの木々が薙ぎ倒され、遠く西に聳えるベルガニー山脈の稜線がここからでも見ることができる。
フローレンスの瞳はいまやベルガニー山脈に向けられて、動く事はない。
彼女の瞳には、何が映っているのだろう。
夜の帷が落ちて暗くなった今、その表情を窺い知る事はできなかった。
「……レン様」
不意に、フローレンスの口から俺の名前が漏れる。
先程まで遠くを見据えていたその目は、今は確固たる信念を携えて俺を見つめた。
「……わたくしは家族を、民を、愛したものすべてを失ったのです。精霊様はこれが運命だと仰った。……以前のわたくしなら、運命の導きに身を流されるまま、この矮小な命は遠くない内に地で果てたことでしょう」
初めて見せた真剣な表情に、はからずもこっちも固くなる。
「わたくしの願いは、食人花という民を再興させたい、それは変わりませんわ。ただ──今までは只の叶うことのない望みだと。だけど、今、わたくしは食人薔薇からプリンセス・ローズへと進化して、この姿に生まれ変わった」
自らの純白の裸身を誇らしげに撫でるフローレンスに、もはや劣情は沸き起こることなく、その堂々たる振る舞いと言葉に羨望さえ覚えたのだ。
俺が持つ【王の系譜】という未だに真価を発揮しないスキルは、むしろ彼女のためにあるべきなのだ。
フローレンスは尚も言葉を紡げる。
「わたくしは運命を信じるけれど、運命を変えられるとも信じている──この新しい力ならば、民を蘇らせることも夢じゃないはずですわ」
そう言って、フローレンスは俺の手を握る。
そんなはずはないのに、彼女の手が妙に熱く感じられた。
「命を蘇らせるなどというのは、神話の時代の言い伝えでしか残されていません。──レン様、貴方様は世界中を冒険するのだと仰いました」
そんなこと言ったっけ、と記憶を探る。
……ああ、宿屋でたわいない会話をしている時に、そう告白したかもしれないな、と一人で納得した。
フローレンスは俺に首肯を求めていたわけではないらしい。
「レン様の旅に、ぜひ同行したいのです。世界中のどこかには、もしかしたら命を蘇らせる術が残っているかもしれない……」
確かに、と俺は頷く。
この世界オーギュスタットは、まだまだ前人未到の地が多く存在する。
とくにこの国ハルヴェリア王国の北に聳えるベルガニー山脈を、さらに越えた北には広大なる森林が広がっており、その先を見たものはまだいないという。
もしかしたら、世界の果てに、伝説や神話がまだ生きているかもしれない。
不意に心が高揚するのを感じた。
ハーガニーに訪れて冒険者となってからまだ一ヶ月ほどしか経っていない。
たった一ヶ月のはずなのに、あまりにも忙しすぎて、半年ほど経っているんじゃないかと錯覚してしまうほどに、俺の冒険者の生活は濃密であった。
だから、しばらく忘れてしまっていたのだ。
世界中を冒険する、それに対する憧憬を。
思わず、俺はフローレンスの手をぎゅっ、と強く握り直した。
「──ああ。フローレンスのように強い人が仲間になってくれるのなら、これほど嬉しいことはない」
「そ、それでは……」
確かめるようなフローレンスの言葉に、
「これから、よろしくな」
そう言って、俺は笑った。
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