終わりなき進化の果てに──魔物っ娘と歩む異世界冒険紀行──

淡雪融

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3-3

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「ギルドマスター! 調査部隊、ただ今戻りました!」
レンデリックとヴェロニカが寝入った頃、冒険者ギルドのグラノイアスの執務室前に、五人の男女がやってきた。部屋の主に向けて声を発したのは、その中のリーダーとおぼしき男である。
「ふむ、入りなさい」
グラノイアスの声を受けて、男が扉を開け、中に入る。残る四人も後に続いた。
五人はデスクを挟んで、グラノイアスと向かい合う。
彼らは、グラノイアスお抱えの隠密おんみつ部隊。その活動は極秘調査がメインであり、いずれも、並大抵なみたいていの使い手ではない。
グラノイアスの命令とあらば、戦場であろうが魔物の巣窟そうくつであろうが、どこへでも飛び込んでいく……それが、ハーガニー冒険者ギルドの調査部隊なのである。
「ご苦労だった。……して、ベルガニー山脈の状況は?」
そう問われ、さきほど言葉を発したリーダーらしき短髪たんぱつの隊員が、一歩前に出て言った。
「……結論から申し上げますと、現地の状況を見るかぎり、大氾濫が再び到来とうらいしたことは疑いようがありません」
その言葉に、グラノイアスは険しい表情をして腕を組む。
「そうか……やはりな。それで、現地ではどんなことがわかった?」
「例の高山獅子、岩喰猿、人面樹などが大量発生しておりました。これらは、先日ブラッドキャップ討伐隊が、麓の森で掃討そうとうしたと聞いておりますが、ベルガニー山脈にいる個体の数はおそらくその時以上です。我々が離れた場所からざっと確認しただけでも、それぞれの種で、数百から千近くおりましたから」

「千……か」
「はい。しかし我々も、山脈全域を見て回ったわけではありませんので……実際には、各種族とも、さらに多くの個体が存在している可能性があります」
「ふむ……」
短髪の隊員が息を吸い込む。まだ、続きがあるらしい。
「それから……討伐隊の報告にはなかった別の魔物の大量発生も、確認しました」
「……何だと?」
「『食人花しょくじんか』です」
食人花。
その名のとおり、人を食らう花の魔物だ。
グラノイアスが聞き返す。
「食人花……Fランク指定の、食人花か? 奴らは、二種族存在するはずだが……」
「我々が目撃したのは『紫』の食人花です。『赤』の姿は確認できませんでした」
ふむ、とグラノイアスは豊かな髭を撫でる。
「紫か……紫が大量発生したとなれば、赤は、縄張なわばり争いに負けるだろうな」
隊員は頷いた。
「ええ、赤の連中も同じく大量発生していなければ……そうなるでしょう。しかし、だとするとやっかいです。万が一、赤が滅びたら、我々は『みつ』の供給源を失うことになります。また、大量発生した山脈の魔物たちがまた山を下りてきた場合、隣の神聖皇国アドロワにつながる街道の封鎖解除を延期せざるを得ません」
「……うむ、至急、ベルガニー山脈に討伐隊を派遣はけんせねばなるまい。やれやれ、また緊急依頼か。この二週間でもう三度目になる」
グラノイアスは思わず肩をすくめてしまう。そして、続ける。
「山脈に棲息する魔物たちが大量発生している。それも、多数の種が、同時多発的に、だ。今のところ、二十年前のゴブリンのように、異常な戦闘力を持つ特殊進化個体は確認されていないが、それも果たして……。いずれにしても、人々が行き交う街道まで出てくるのも時間の問題だろう。ブラッドキャップらが討伐された今も、慎重を期して街道の封鎖は継続中だ。だが人々の間では、まもなく解除されるとの期待が大きい。それが今後も封鎖継続となれば……人々の不満は噴出ふんしゅつし、他都市との人的交流も停滞して、経済活動にさらなるダメージが出る。ハーガニーの信頼が失墜しっついしかねん。早急に、対応が必要だ」 
ブラッドキャップらの討伐が無事に終わったことで、それまで足止めを食らっていた商人たちは喜んだ。
だがそれも束の間、結局「念のため調査を継続する」としたギルドの判断を受け、ハーガニー上層部は隣国アドロワにつながる街道の封鎖をまだ解除していなかった。
そのため、不満を募らせた商人や旅行者たちが、説明を求めて、連日ギルドや関連施設に押し寄せていたのである。
「とにかく、急ぎ現地に討伐隊を派遣しなければ。同時に、麓の森およびその周辺の街道に、大量発生した魔物が下りてきていないかの調査が必要だ。またお主らの手を借りることになるだろう。各自いったん休息をとり、次の指示に備えておくように」
「ハッ!」
五人が部屋を出ていった後、グラノイアスは、部屋の窓から外の通りを眺め下ろした。
はす向かいの建物の一階にある喫茶店では、窓際の席で、二人の商人らしき服装の男たちが険しい顔で何かを話している。
もちろん内容はわからないが、街道封鎖の文句を言っているに違いない。グラノイアスにはそう思えた。がらにもなく、プレッシャーめいたものを感じてしまう。
あせる自分を落ち着かせるように、彼は声に出して呟いた。
「前例のない大氾濫……か。乗り切ってみせるさ」
このたびの大氾濫は、明らかに異常。
前回のそれから、たった二十年足らずで起こったことももちろんだが、それ以上に、「一度の大氾濫において大量発生するのは、一種類の魔物のみ」という定説にこうから反している。
今のところ、二十年前に冒険者たちを恐怖のどん底におとしいれた特殊進化ゴブリンのような個体は発生していないようだが、これだけの異常事態……何が起こるかわからない。
常に最悪のシナリオを想定しておく必要がある。
そして……グラノイアスの不安を大きなものにしているもう一つの要因は、あの瓶だ。
相次あいつぐ魔物の特殊進化と、そのたびに現場から発見される謎の瓶。
一見、無関係に思えるこれらの事件だが、その特異性からして、どうしても今回の大氾濫との関連を疑ってしまう。

グラノイアスは、体が震えるのを感じた。
武者震むしゃぶるいだった。
それは、二十年前――悪魔のごとき強さを誇る特殊進化ゴブリンと対峙たいじした、あの時以来のことだと、彼は思った。

  †

「ガハァッ……!?」
同じ日の夜――ハーガニー近郊の森。
鳩尾みぞおちを激しくられた男は、苦悶くもんの声を上げた。
「や、やめろ……命だけは助けてくれっ……あああああああ!? お、俺の耳が……っ」
耳をがれたもう一人の男が、激痛に悶絶もんぜつする。
人の気配がまったくないこの場所で、二人の冒険者が数名の男たちに囲まれてリンチを受けていた。
「ところが、そうもいかなくてなあ。……悪いねえ、マックス、エストガルデ。いちいち命乞いのちごいなんて、聞いてらんねえのさあ」
一人の男が、手に持ったナイフを舌でねぶりながら、イッヒヒヒ、と愉快そうに笑った。
ほおのこけた顔に、落ちくぼんだ目。狙った獲物を絶対に逃さない、狡猾こうかつな狩猟者を思わせる。
「どうして俺たちの名を……知っているっ……」
痛みに耐えながら、マックスはナイフの男を見上げた。
殴られ、蹴られ、斬られ……マックスら二人は血まみれだ。
元の顔を想像することが困難なほどに目元や頬がれ上がり、鼻は折れ、エストガルデに至っては片方の耳がそっくり切り取られている。
そんな二人を愉快そうに見下ろしながら、ナイフの男は、再びイヒヒと笑った。
「さあ、どうしてだろうなあ。きっとあの世で神様が教えてくれるぜえ? せいぜい祈るんだな、来世はもうちっとマシな人生になりますように、ってよお……じゃあな」
男がそう言い終わると、周りの男たちが、一斉にナイフを取り出した。そして高く掲げ、二人にその刃先を向ける。
「ああああああああああっ……!」
「や……やめろおおおおおおっ……死にたくねええっ!」
薬草採集に来た女性が二人の死体を見つけたのは、それから二日後のことだった。

  †

ヴェルが魔核を取り込んで成長した、その翌日。
日課である早朝鍛錬をこなし、宿の美味い朝ごはんを済ませた俺とヴェルは、三日ぶりに冒険者ギルドへとやってきた。
ギルドには、連日、大勢の冒険者が訪れる。
少なくとも俺たち二人がハーガニーの街に来てからは、いつ足を運んでも、それなりに賑わっていた。レッドキャップ討伐の緊急依頼が発せられたこともあり、ここのところはとくにピリピリした雰囲気が漂っていたのだ。
「……ん?」
ギルド内に足を踏み入れた瞬間、俺は違和感を覚えた。
一階ロビーが、これまでにないほど緊迫きんぱくした空気に満ちていたからだ。
どういうことだろうか?
レッドキャップとブラッドキャップの討伐は、無事終了している。
街道の封鎖は継続中みたいだが、だからといってギルド内がこれほどの緊張感に包まれる理由にはならないはずである。
そんなことを考えていると、ロビーのすみに一人で立つユリアと目が合った。
俺とヴェルは近づいていって挨拶する。
「おはようございます、ユリアさん」
「あら、レン君にヴェルちゃん、おはよう。三日ぶりね」
「おはようございますっ、ユリアさん!」
ユリアは、お姉さんが住んでいるという神聖皇国アドロワに向かう途中で、ここハーガニーに立ち寄り、偶然レッドキャップ討伐の緊急依頼を知って参加した。街道がまだ封鎖されているために、足止めを食らっているのだ。
「ところでユリアさん。なんか、ギルドの雰囲気が重くないですか?」
苦笑するユリア。
「やっぱりそう思う? 私もついさっき来たばかりなんだけど、やたら空気が重くてびっくりしちゃったわ。……どうも二階から、異様な緊張感が発せられてる気がするのよ。たぶん、またよ」
嫌な予感。
ユリアの言う「また」とは、おそらく――。
「あ、ギルドマスターだわ」
ユリアが階段の上を指差す。グラノイアスが、ロビーにいる俺たちを見下ろしていた。
ゆっくりと下りてくるグラノイアス。
まるでデジャブのような光景。
数日前の、レッドキャップ討伐依頼告知の時にそっくりだ。
俺はさとった――緊急依頼だ。
階段のなかばからロビーを見渡して、グラノイアスが、口を開いた。
「……これより緊急依頼を告知する。まず、ベルガニー山脈で、魔物の大氾濫が起こっていることが確実に認められた」
大氾濫、という言葉にロビーは騒然となる。たまたまだと思うが、見たかぎり若い冒険者が多く、実際に大氾濫なるものを冒険者として体験した者は少なそうだが、皆このワードは知っているのだ。
そして、それが意味するところも。
「今回の大氾濫は特殊だ。複数の種族において、大量発生が確認されている」
どよめきを増す冒険者たち。
「高山獅子、岩喰猿、刃翼鳥、人面樹……それから、食人花だ。それも、紫の食人花である。今のところ大量発生したことが確実なのは、この五種。いずれもランクとしては中位であることから、依頼の指定ランクはCとする」
Cランク依頼か……意外と低いハードルだな。
いや、そうでもないか。ネビュラス・コーボルト、ブラッドキャップと、ここのところBランクの強敵と連戦しているからそう感じるだけで、一般の冒険者からすれば、Cランクだってそこそこの難易度だろう。
「繰り返すが、今回の大氾濫は、過去に例を見ないものである可能性が高い……応募人数があまり少なくならぬよう、指定ランクはCとしたが、腕に覚えのない者はみだりに参加を希望せぬように」
グラノイアスの忠告に息を呑む冒険者たち。きっと二十年前に起こったという、ゴブリンの大発生の話を思い浮かべているのだろう。
その時はレーザーを発する特殊進化個体が現れて、大勢の冒険者が命を落としたという。俺の両親も、その討伐に参加していた。
重苦しい沈黙が漂う中、グラノイアスは、静かに言葉を継ぐ。
「……緊急依頼の具体的なミッションは、以下のとおりとする。第一に、紫の食人花をはじめ、大量発生した魔物の殲滅せんめつ。第二に、赤の食人花の、保護救出」
保護? どうして、魔物を保護するんだ?
ヴェルはもちろん、ユリアも、俺と同じ疑問を抱いているようだった。
「……なお、討伐メンバーを二手ふたてに分け、一方をベルガニー山脈に向かう殲滅部隊、他方を、ハーガニーを守る防衛部隊とするつもりだ」
……防衛部隊?
それはつまり――山地に出向いた殲滅部隊が全滅する可能性もゼロではない、ということか。
そして大量発生した魔物の大群が山を下り、森を抜けて、ハーガニーにまで攻めてくる可能性があるということでもある。
実際に、高山獅子をはじめ数種の魔物が、麓の森まで下りてきている。
一体、何が起こっているというのだろう。
俺は、突然舞い込んだ緊急依頼に武者震いを覚えながらも、言い知れぬ不安を拭い去ることができないでいた。

  †

グラノイアスが二階に戻っていった後、ギルド内は再び騒がしくなった。
今回の依頼は、大氾濫に関わっている。討伐対象となる魔物の個体数も膨大なはずだ。
討伐対象の魔物の数が多い依頼では、当然だが、参加メンバーの定員数も大きくなる。 
しかも、今回の指定ランクはC。つまりDランクの冒険者にまで応募資格がある。そうなると、ルーキーを除くほとんどすべての冒険者が志願できることになる。
前回のレッドキャップ討伐はBランク指定だったからな……あの時応募できなかった連中が、こぞって手を挙げるに違いない。
受付カウンターに殺到する冒険者たちを遠巻きに眺めていると、見知った男女が入り口付近に立っているのが目に入った。
「オルバさん、エスティアさん、おはようございます」
俺はヴェル、ユリアとともに挨拶に行く。
「おう、レンデリック、それにじょうちゃんと、ユリアじゃねえか。こないだの打ち上げ以来だな」
重厚なよろいと大きな斧が、いかつい顔にマッチしているオルバが笑う。 隣のエスティアも、にっこり微笑んだ。
「おはよーございますっ、オルバさん、エスティアさん!」
満面の笑みを浮かべて、ヴェルが元気に挨拶した。
「おう、今朝も元気だな、嬢ちゃん」
ヴェルの快活かいかつさに、オルバがまた笑う。
「やっぱり大氾濫だったみたいね。あんたたちも参加するわよね? 私とオルバは、もちろんするわよ」
ゆったりした服装に身を包んだエスティアが言う。自身の背丈ほどもあるつえが、いかにも魔法使い然としている。
「はい、俺たちも参加するつもりです。って、あ、えーと……」
俺はユリアのほうを見た。彼女はどうするのだろうか?
「ふふ、私も、参加するわ」
俺の視線を察したらしいユリアが答える。
まあ、そうだろうな。
彼女は旅の途中だけど、まだ街道は封鎖されているわけだし。それに、好奇心旺盛おうせいな性格みたいだからな。
「という感じです。……ところでオルバさん、ミッションの一つが『赤の食人花の、保護救出』って、どういうことなんでしょうね?」
オルバの目が点になる。
「……何を言ってんだ? お前、知らないのか?」
……え?
「あの、何がですか?」
オルバとエスティアは顔を見合わせ、ため息をついた。
俺とユリアとヴェルの三人は、わけがわからずキョトン顔だ。
「その様子じゃ、あとの二人も知らねえみたいだな。赤と紫の食人花の生態の違いをよ」
食人花の生態?
基本的に、俺は魔物の情報はひととおり知っている。
というのも、「魔物名鑑」という、これまでに確認された魔物の情報が網羅もうらされているレアな図鑑があって、俺の実家にはそれが置いてあったからだ。
小さい頃から冒険者になりたくてしかたなかった俺は、もちろんその本を読んだ。何度も何度も。しまいには、一時は、中身をすべて暗記してしまったほどだ。
だけど……食人花についてはどうしても思い出せない。他の、獣系の魔物なんかに比べると地味だから、あんまり印象に残らなかったのかもしれない。
それに、最後にあの本を開いてからかなり時間が経っているので、さすがに記憶が色あせてきているのだと思う。
……他にも、忘れている魔物とかいそうだ。
「しょうがねえなあ、じゃ、ちょっとレクチャーしてやるよ」
「お願いしますっ!」
ぺこりと頭を下げるヴェル。
おう、とオルバが説明を始める。
「ベルガニー山脈にはよ、食人花が二種類いるんだ。俺たち人間でも、黒い肌を持つ砂漠さばくの民とか、白い肌の雪原せつげんの民とか、色々いるだろ? それと同じだよ。他の種類もいるのかもしれんが、とりあえず今のところ確認されてるのは、赤色の花を持つ食人花と、紫色の花を持つ食人花の二種なんだ」
ふむふむ、とヴェルが興味深そうに頷く。ユリアも「へえ」と驚いている。
エスティアが、話を引き取って続ける。
「それで面白いことにね、その二種、同じ食人花なのに行動原理がまるで違うと言われているの。赤の食人花はどちらかというと温厚おんこうな性質で、他種族とも共存可能みたいなんだけど、紫のほうはとても好戦的らしいわ。 『あいつら紫は、人間をひどく恨んでる』なんてことをまことしやかに語る冒険者もいるくらいよ」
「へええ。正反対なんですね」
俺も驚いてそう言った。
……図鑑にも書いてあったのかな? まったく記憶にないぞ。
「まあ、人間が勝手にそう解釈かいしゃくしてるだけで、食人花から聞いたわけじゃないけどね。温厚とか好戦的とかいうのは、要するに、襲ってくるかこないかってだけの違いなのよ。それで、温厚とされる赤の食人花からは、『ハイポーション』の原料になる蜜がれるの。だから人間に重宝ちょうほうされてるのよ」
食人花の蜜。
その後のエスティアの話によれば、食人花の蜜を採集するには、花の口の奥にある「蜜袋」を回収する必要があるのだそうだ。
これも彼女に教えてもらったのだが、赤、紫ともに、食人花の見た目は非常にきれいだという。というのも、頭部に当たる大きな花が、鮮やかな赤や紫に輝いているから。
そのため、時々正体を知らずに近づいてしまう人間や動物がいるらしいのだが、それが紫の食人花だった場合、ぱっくり口を開けた花に呑み込まれてしまうのだという。ちなみに赤色のほうも、温厚といっても魔物には変わりなく、危害を加えられれば反撃してくることもあるそうだ。実際に、ちょっかいを出して食べられてしまった人間もいるのだとか。
食人花の体内に取り込まれた獲物は、強酸に溶かされ、養分として吸収されてしまうそうだ。
前世の地球でも、食虫植物なんかは存在したが……まさか人間を食らうとは、恐ろしい話である。
ちなみに回復薬――ポーションの素材は、食人花の蜜以外にも色々ある。もっともポピュラーなのは、森なんかに自生しているハイデン草だ。これは世界中で採れるらしい。
その回復効果はあまり高くないが、大量に存在するため、非常に安価だ。ハイデン草は、せいぜい日常でのちょっとした怪我とか病気の治療くらいにしか使えない。
一方、食人花の蜜から作ったポーションは、ハイデン草よりも回復効果が高いという。かつ、食人花はベルガニー山脈一帯にしか棲息しておらず、本来個体数が限られているため、蜜は自然と貴重品になった。
そのため、食人花の蜜で作ったポーションは「ハイポーション」と呼ばれ、ハイデン草などのポーションと区別されているのだという。
勉強になるな……まあ、俺とヴェルの場合、ヴェルのスキル【中級回復魔法】があるから、ポーションとかの知識は今のところあまり必要ないのかもしれないが。
単身活動を続けているベテラン冒険者のユリアがそのことを知らなかったのは意外だったが、けっこうのんびり屋で抜けたところもある人みたいだから、本当に聞いたことがなかったのだろう。
それに、よく考えたら、彼女も回復魔法が使えるんだったな。
「当然だけど、回復魔法を使う人がパーティにいない場合、ポーションは冒険者にとって無くてはならないものなのよね」
エスティアが言う。
──だから人々は、とくに冒険者は、食人花の蜜を欲しがった。
蜜などと可愛らしい名前で呼ばれているが、実際にはどろどろに溶けた、様々な生物が混じりあった液体なのだとか。
「……というわけだ。それじゃ、緊急依頼の申請をしとこうぜ」
説明をエスティアに任せてソファでくつろいでいたオルバが、受付カウンターを指差す。見ると、さっきまでの混み具合はだいぶ解消されていて、カウンター前には数名が並んでいるだけだった。
あれだけ大勢がむらがっていたのに、もう申請が終わったのかな? カウンターに立つギルド受付係のレヴィーと目が合う。マイペースなイメージの彼女だが、どうやら仕事は早いらしい。
俺はレヴィーに向かって頷く。
そして、ヴェルら四人とともに、カウンターに向かった。

  †

「ああっ、うめえ、本当にうめえ……」
宿屋、麦穂亭。
その食堂で、俺とヴェルは早めの昼食をとっていた。
オルバらとともに緊急依頼の申請を終えた俺とヴェルは、三人と別れていったん麦穂亭に帰ってきていた。今回はベルガニー山脈にまで足を運ぶということで、身支度を整えるために戻ってきたのである。
ギルドを離れていいものか迷ったが、レヴィーに確認したところ、「今回は応募人数が非常に多いし、各人の戦力を考慮して攻略と防衛の部隊に分ける必要があるから、出発までに多少時間がかかる」と言われた。
それでも、今回の緊急依頼は前回に比べても緊急性が高いのか、「一時間くらいしたら戻ってきてね」と念を押された。
それにしても、俺やヴェルもそうだが、レヴィーも、俺たちが選出されるのを当然と考えているようだ。
数日前まで、俺たちにEランクの依頼を受けさせることさえしぶっていた彼女が、こうして俺たちの実力を認めてくれた……そのことが、俺はとても嬉しかった。
宿に戻ってきた俺とヴェルは、すぐに身支度を完了し、その足で食堂に向かった。厨房で昼食の仕込みをしている女将さんたちに討伐隊への参加を報告するためだ。
そして報告をしたところ……「そりゃあ大変だ。たっぷり腹ごしらえしていきな!」と言われ、大盛りの料理を出されてしまい、そのまま食事をすることになったというわけである。
まだ朝食を取ってからあまり時間が経ってないので、正直空腹感はなかったのだが、食べてみるとやっぱり絶品。思わず、次から次へと口に運んでしまう。
ちなみに「報告」といっても、女将さんたちに伝えたのは「また魔物の討伐に出かける」ということだけだ。大氾濫のことは伝えていない。冒険者以外の一般市民にその事実が知れ渡れば、無用な混乱を招きかねないからだ。

「じー……」
……ん?
「どうした、ヴェル。俺の顔に何か付いてる?」
テーブルの向こうから俺を凝視しているヴェルの視線に気づいて、俺は聞いた。
「ううん、違うよっ。レンがそんなに美味しそうに食べるのなら、私も何か料理を作って、レンを喜ばせたいなって」
そう言って、ヴェルは焼きそばを口に運ぶ。「私も、こんな美味しいもの作れるようになりたいな」と呟きながら。
ヴェルの何気ない優しさに、俺は胸がいっぱいになった。……やばい、焼きそばの美味うまさとあいまって、なんか涙が出そうだ。
「ど、どうしたの、レン? 目がうるんじゃってるよ?」
困惑気味な表情を見せるヴェル。
「いや、その、何でもないよ。……ヴェルの料理、楽しみにしてるからなっ」
「……? うん、期待しててねっ」
不思議そうに俺を見つめた後、ヴェルははじけるような笑みを浮かべた。
楽しみだな、ヴェルの手料理。


第三章 しゅうラフレシア


俺たちは、ベルガニー山脈のすぐそばまでやってきた。
「よし、それじゃあ、ミッションを開始するよ。各自、警戒けいかいおこたらないようにね」
ブラッドキャップ討伐時と同じく、今回の緊急依頼のリーダーを任された、守備兵団団長のローレンが討伐隊メンバーに向かって言った。シルバは参加しなかったようなので、おそらくAランクは彼だけなのだろう。
麦穂亭での腹ごしらえを終えて、俺とヴェルはギルドに戻った。
その時ロビーでは討伐隊メンバーが発表され始めていて、俺たちはちょうど建物に足を踏み入れたところで名前を呼ばれた。
オルバ、エスティア、それにユリアは、すでに呼ばれていたようだ。
最終的に選出された冒険者は、三十名にのぼった。
この三十人が、ベルガニー山脈に向かう殲滅部隊と、ハーガニーへの攻撃に備える防衛部隊とに分かれ、俺・ヴェル・オルバ・エスティア・ユリアを含む二十数名が、こうして山までやってきたのである。
そういえば、シルバに加え、前回同行したリタとラカンも参加していない。あの二人は打ち上げにも来なかった。
まあ、別に不思議でも何でもないけどな。
冒険者っていうのは曲者くせものというか変わり者が多いみたいで、ユリアやオルバ、エスティアみたいに社交的なのはむしろ珍しいタイプなのだろうから。
ちなみに、防衛部隊に割り振られた冒険者の数が少ないのは、冒険者はあくまで殲滅ミッションが主であるためらしい。
「出発前にも一度説明したとおり、今回のミッションの目的は二つ。紫の食人花はじめ大量発生した魔物の殲滅と、赤の食人花の保護だ。……それじゃあ行くよ!」
俺たちは「おう!」と声を上げ、目の前にそびえる山に向かって駆けた。

  †

「~♪ ~♪」
宿屋「麦穂亭」の厨房に、軽やかな口笛が響く。
ふいに、その口笛がんだ。
「どうしたの、キルケお姉ちゃん?」
「……ネーファちゃん、私、行かなきゃいけないかもしれない」
キルケは、皿を洗っていた手を止めた。
「行くって、どこに?」
ネーファも皿洗いを中断し、勢いよく水が出ていた水道の蛇口じゃぐちをひねって閉じる。
「森……。あの森に、どうしても戻らなきゃいけない気がするの」
「森……?」
ネーファはわけがわからなかったが、不安を覚え、ぎゅっとキルケの服の裾をつかんだ。
その手を、キルケの手が包む。
「ネーファちゃん、心配しないで。でも、私の心が、本能が、行けと言っている気がするの」
キルケの目には、強い意志が感じられた。止めることができないと悟ったネーファは、キルケから手を離す。
「キルケお姉ちゃん。……約束して。ちゃんと帰ってくるって」
「ええ、約束するわ。ちょっと時間がかかるかもしれないけど……」
はっきりした理由はないが、ネーファはふいにさびしくなった。どういうわけか、涙が出そうになる。キルケを心配させたくなくて、唇をぎゅっと噛んで涙をこらえ、胸をらした。
「大丈夫、キルケお姉ちゃんの分まで、私がやっておくから!」
「ありがとう、ネーファちゃん。……それから、このことは皆には黙っていてほしいの。余計な心配させたくなくて……」
もちろん、とネーファはった。
「任せて! お母さんたちには、私からうまく言っておくよ!」
ネーファが無理をしていることが、キルケには痛いほどよくわかった。だが、キルケはネーファの優しさに甘えることにした。
「本当にありがとう……ネーファちゃん。それに、ごめんね、仕事の途中なのに。……それじゃ、私、行ってくる!」
キルケはそう言って厨房を出て、身支度もせずに宿を飛び出した。ロビーのカウンターに女将さんの姿はなかった。洗濯物でもしているのだろう。
宿の前の大通りを駆け抜けたキルケは、ハーガニーの検問所を抜け、「暗い森」へと続く街道を急いだ。
キルケ自身にも理由はわからないが、彼女は確信していた。
あの森で……自分が守ってやらなければならない存在が待っているのだと。

  †

「うおっ……マジで紫の食人花ばっかじゃねえか」
オルバが声を上げる。他の冒険者たちも、同じように驚いていた。
俺たち討伐隊は、今、山の高台たかだいから中腹を見下ろしている。
ベルガニー山脈の中心にそびえる山をしばらく登り、遭遇した人面樹や岩喰猿を殲滅しつつ、目的の場所近くまでやってきた。グラノイアスの派遣した調査部隊が、大量の食人花を発見した場所である。
敵の数を確認するため、前もってグラノイアスから聞かされていた、偵察ていさつに適した高台に移動した俺たちの目に飛び込んできたのは――紫の花、花、花。
道中でエスティアらに聞いたかぎりだと、この山の中腹には草原が広がっていて、本来様々な植物が見られるということだったが……今、目の前にあるのは、大地にほとんど隙間すきまなくひしめく紫色の食人花だけだ。
凄まじい数である。
先日、ブラッドキャップ討伐直後に遭遇した高山獅子やさきほど殲滅した人面樹よりも、遥かに数が多い。
鮮やかな紫色の大きな花は、一つだけならきっと美しいのだろうが……さすがにこれほどの数となると、不気味ぶきみというほかない。
眼下がんかの光景に圧倒されていると、紫の大群の中に、赤い花が交じっているのに気づいた。
ただし、その様子は紫の花とはまったく違う。
くしゃくしゃに、踏み潰されているのだ。
「あっ……」
ふいに隣のヴェルが、ある方向を指差した。
俺もそちらを見やる。
うじゃうじゃとひしめく紫の花たちの頭上。そこに、魔力のかたまりが生じているのが見えた。
かたまりはどんどん大きく、濃くなっていく。
そして、そのかたまりの中心に、魔核が生まれた。まるで種子の発芽はつがをビデオの早回しで観ているかのように、みるみるうちに魔核からが伸び、くきえ、葉がつく。
そして、紫色の大きな花が、茎の先端に咲き誇った。
ヴェルがそちらを指差してから、この間わずか数秒である。
今、また新たに、一体の魔物が生まれたのだ。
「ほお……」
初めて見る光景に、俺は思わず感嘆かんたんの声を漏らしてしまった。
知識としては知っていたが、百聞ひゃくぶん一見いっけんにしかず。やはり、実際にの当たりにするとインパクトがある。
「へー、珍しいものを見られたなあ」
いつの間にか俺たちの背後に立っていたローレンが呟く。
「でも、気分を切り替えなくちゃね。今から、あいつらを討伐しなきゃいけないんだから。……さて、皆、今から食人花の対処法について説明するよ。知っている人も多いだろうけど、一応、ね?」
ローレンがそう言い、俺たち参加メンバーは、彼のもとに集まった。
ローレンが語った対処法は、至極しごくシンプルなものだった。
まず食人花は、基本的に地面に根を張っている。そのあたりは一般的な植物と同じだ。
そして人間や獣が、ただの植物だと勘違いして近づいてくると、頭部に当たる花部分に隠した口を大きく開いて、丸呑みしてしまうのである。
そのスピードは凄まじいらしく、それなりの冒険者であっても、決して油断はできないのだという。
それでも、「こちらから近づかなければ基本的に害はない」ということでFランク扱いになっているらしい。
ただ、注意すべき点があって、それは「食人花に見つからないようにする」ということ。好戦的な紫の食人花にかぎった話だが、獲物を見つけると、なんと食人花は根ごと地面から離れて襲いかかってくるのだという。
根が足の代わりというわけだが、移動速度はそこまで速くはない。そのため冒険者としては、こちらに近寄ってきたところで、人間の首に当たる茎部分を折るなり切るなりして対処するのが一般的らしい。
一本の茎で大きな花を支えているため、茎を損傷するとそれを支えることができず、花は地面に落ちる。切り離された花は魔力を失い、食人花は絶命する。
「……というわけで、作戦開始だ。繰り返すけど、標的は紫の食人花のみ。赤いほうは、保護対象だからね」
ローレンの言葉を聞きながら、俺は目の前の山々を見つめる。
大地にいくつもの紫の花が根を張っていた。
「よしっ」
自分を鼓舞こぶするために、俺は頬を両手で何回か叩いた。
「それじゃ、行くよ!」
ローレンが高台を駆け下り、紫の食人花でひしめく大地へと向かう。
俺たちもそれに続いて、食人花の大群目がけて高台を駆け下りた。
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