ロボットの居留守

西坂

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ロボットの居留守

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「造ったのはいいが、こいつは、あまりにも忠実過ぎる」

博士は、自分が造ったお手伝いロボットに頭を抱えていた。

このロボットに重大な欠陥があるわけではない。

様々な機能を搭載し、一点の欠陥もない、完璧なロボット。

しかし、命令に忠実過ぎる。

こちらの要求を守りすぎて、融通がまるで効かない。

めんどくさい客人は通すなと命令すると、全ての客人を門前払いにしてしまう。

私の研究のスポンサーを追い払ってしまったときは、ロボット相手に怒鳴り散らしてしまった。

「もういい!これからは呼び出しベルが鳴っても対応するな!私が全て対応する!このポンコツが!」

ロボットは頭のランプを光らせ、了解のシグナルを出した。

博士は研究室に戻ったが、少しして、呼び出しベルが研究室に響いた。

博士はため息をついた。

速歩きで玄関に行き、ドアを開けた。

そこには、スーツを着たセールスマン風の男が立っていた。

博士はドアの外に出て、男の要件を聞いた。

「何でしょうか。私は忙しいのですが」

男は何も言わずに、ビジネスカバンから出した刃物で、博士の胸を刺した。

倒れたこんだ博士を見下ろし、男は告げた。

「あなたに恨みはありませんが、私のクライアントはあなたの死を望んでいます」

「ク、クライアント…?」

博士は男の足元にしがみついたが、男はそれを払いのけ、その場から離れた。

博士はクライアントという言葉を聞いて、思いあたった。


そういえば、私の研究が商売の妨げになると、主張する企業があるらしい。

なるほど。

私を亡き者にすることで、企業活動の邪魔を排除したいのだろう。

博士は最後の力を振り絞り、立ち上がった。

ふらふらにながらも、博士はドアを開けようとした。

しかし、滴った血で手が滑り、ドアノブを回せない。

それならばと、博士は呼び出しベルのボタンを押したが、ハッと気づく。

博士は膝から崩れ落ち、倒れ込んでしまった。

そうだ、そうだった。

博士の意識は徐々にかすみ始めた。

もう体に力は入らない。

全く融通の効かないロボットだ…
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