のんびりまったりダンジョン村で人間の子供を育てるの巻

にじいろ♪

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俺とヒグは、ギアから学んだ標準的な人間について会議で説明をしていった。
みんな、驚きながら聞いていたが、なるほどと納得していた。

そんな中、街の人間と唯一関わりのあるセイラが異論を唱えた。
セイラ曰く、街の人間は、そんなに丈夫じゃない、むしろすぐ死ぬと。
セイラ曰く、特別に速くもない、むしろ遅いと。
そして、勇者よりも強くもない、むしろそこらへんの枝くらいの弱さだと。

「じゃあ、なんだ!ギアが特別だっていうのか!!!」

俺がそう言うと、みんな、満更でもない顔をした。
いや、そういうことじゃなくてね?
まあ、そうなんだけど。

「まあ、ギアは特別だよな」

「そうね、ギアは本当にかわいいもの」 

「頭も良くて、優しくて、あんな子が他にいるはずがないわ」

「ギアは天使だ。街の人間やクソ勇者と一緒にするな」

口々に、ギアの素晴らしさを語り始めた。
まあ、それは俺も同感だ。
ギアが特別なのは間違いない。
だがなぁ…そうと分かれば、益々悩む。

「しかし、どうする?ギアは、地面を棒切れで裂ける程に強くなっちまってるぞ」

だが、それにもセイラが手を挙げた。

「えーっとねぇ、商人は、商品を持って旅する時、荷物を盗賊に襲われることもあると聞いたわ。場合によっては命を落とすこともあるって。だから、そういう時に強ければ盗賊を倒せるから、ギアの身が守れて丁度いいんじゃないかしら?」

セイラの言葉に、よく人間のことを知らない皆は、ウンウンと頷く。
そうだ、そうだ、さすがはセイラ。
商人になるのに丁度良い才能があるなんて、流石はギア!と皆が褒め称える。

要するに、誰もがギアの訓練を止める係をしたくないのだ。
ギアがしょぼんとすると、ダンジョン内の温度が急激に下がるから。
そして、皆から大罪人のように白い目を向けられる。
つまり、いつも明るい太陽のようなギアの笑顔で、ダンジョン内の温かさは保たれているのだ。

ヒグが手をあげる。

「じゃあ…ギアに剣を作ってもいいか?」

ギアは訓練を初めてから、ずっと剣を欲しがっていた。
けれど、俺たちはギアに戦いをさせたくない。
あれから、一度も勇者たちは来ないし。
だから、ずっとギアのお願いにも渋っていたのだが。

「そうだな、盗賊と戦うために剣に慣れておくのも大事かもな」

ついつい、このギア馬鹿連中の話し合いでは、皆がギアの願いを叶える方向にまとまってしまう。
そうだ、そうだとすぐさま意見がまとまった。

「…うん、ギアが商人になるためだ。作ってやってくれ」

ついに負けて俺が言うと、ヒグはギアのための剣を作れるのが誇らしいようで鼻をヒクヒクさせていた。
いや、どうやっても顔面こえーから。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ヒグが作ったギアの剣は、そりゃーもう立派な一振りだった。

何せ、ヒグが危険を冒して山を越えた先にあるダンジョンまで行って最高級のミスリルを取って来て作ったのだ。
うちのダンジョン村じゃあ、もうミスリルなんて出ないからな。
魔素が足りなすぎて。


俺たちは、基本的に他のダンジョンには行かない。
行く必要も無いし、知らない魔物同士が会えば、自ずと争いにもなる。
だから、そのダンジョンのミスリルについて勇者が以前話していたなんてジョーイから聞いた途端、ヒグが今から行くと言い始めた時には、そりゃーびっくりしたなんてもんじゃない。

もちろんみんなで止めた。

「ここにだって、鉱物はあるだろ。しょぼいけど」

「それなら街から、私が剣を買ってくるわよ」

「そんな無茶するな。木製でもいいんじゃかいか?とりあえず」

そんな皆の制止を振り切って、ヒグは行ったのだ。
山を越えるとなれば、ヒグの足で歩いても最短で1週間はかかる。
勇者たちくらいだと、1ヶ月近くはかかるだろうか。
しかも、そこからダンジョンに潜ってミスリルを取るなんて、ただのオークに出来ることとは思えなかった。
だが、ヒグは往復3週間で最高級ミスリルを持ち帰って来た。

信じられない。

ボロボロになって帰って来たヒグは、そのまま着の身着のままで自分の家に引きこもった。
時々、誰かが差し入れを持って行っているが、脇目も振らず、ひたすらにギアの剣を作り続けている。

ドラゴンの火を借りるなどはしていたが、なんと僅か6ヶ月程で、剣は完成した。
完成した剣を手に出てきたヒグは見るに堪えない程に憔悴していた。
痩せて半分くらいになっていた。
だが、その手に握られていた剣は、それはもう素晴らしい逸品としか言いようがなかった。
剣自体も凄まじい切れ味で、見たこともない程の薄さなのにしなやかで、且つ岩をも簡単に切り裂ける硬さもあるという、こんな萎びたダンジョンのオークがどうやって作ったのか、さっぱり想像もつかない逸品だった。
さらに持ち手部分は、どうやって手に入れたのか大ぶりの宝石を幾重にも散りばめつつ、実に握り心地も良く、更に凝りに凝った彫刻が施されているのに派手過ぎず趣味が良い。
どこかの宝箱から出たら大騒ぎになりそうな完成度。

ヒグは、俺にその剣を託して

「これを…ギアへ」

の一言を残して、昏睡かと思う程の爆睡に入った。
そりゃそうだ。
恐らく、ほとんど寝食を忘れてダンジョンへ潜り、そのまま剣作りなんて半年もしたんだ。
どれも、ヒグには初めてのことだったはず。
俺は、すぐさまギアの元へこの剣を…渡せなかった。

これをギアに渡したとして、ギアは本当に商人になる道を選ぶのか?
ギアに最高の物を授けたいヒグの気持ちも分かるが、盗賊を相手にするには、いささか豪華過ぎるというか本気過ぎるというか…

これではまるで、一流の冒険者や戦士にでも贈るような品物。
ヒグは、もちろんギアに渡したいだろう。
見せたいだろう、喜んで欲しいだろう。

だが…と俺達は悩みに悩んだ。
会議は連日、深夜まで及んだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


連日会議をしても結論には至らず。
結局、ひとまずはギアには伝えず、最下層の宝箱に保管することにした。
もう勇者も来ないから、そこは只の物入れになっていた。
ギアは普段、宝箱は使わないから見つかることも無い。
ギアの様子を見ながら、ゆっくり話し合いをしていくことにした。

ところが、みんな寝不足でバタバタと倒れ始めた。
ただでさえ、魔素が減っている上に、食料確保の為の農作業や内職、家事に壁などの修理。
その上での連日の会議で皆は限界に達していた。
これはまずいとなって、一旦の会議保留。
焦ることでもない、と皆の回復を優先させた。
ギアにも心配をかけてしまった。

「大丈夫だよ。僕が畑もやっておくから」

倒れた皆の分も、ギアが各畑や家を回って、いろいろと手伝ってくれている。
とても素早く的確だから、食料が減る心配は無いが、その分、ギアの勉強や訓練に当てる時間が減ってしまう。
倒れていない奴らは、出来るだけギアに負担が行かないよう、お互いに助け合うよう声を掛け合った。

その甲斐もあって、少しづつだが倒れた者も回復し、元の生活に戻りつつあった。
ふう、やっと話し合いも出来そうか…

そんな空気の中、あいつらが来た。
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