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第一章
朝から王子
しおりを挟む「ふぁ~あ…」
俺は、背中をポリポリ掻きながら目玉焼きを焼いてる。
朝ごはんの用意だ。
俺の今の仕事、一応ハウスキーパーだし。
ガチャッと扉の開く音がして、唯人がリビングに出てきた…はぁ??
「おはよう、健吾」
なんでそんな髪型決まってんの?寝起きでしょ?
たった今、起きたばかりのはずの唯人には、ちくちく無精ヒゲはもちろん、目ヤニなんて付いてない。
よだれ跡も無し。
更には、時間をかけて丁寧にセットしたかのように、寝癖なんて1つも無い完璧なヘアスタイル。
コイツ、人間?
「お前さー、なんで寝起きから王子なわけ?髪型、整いすぎじゃね?」
コーヒーをいれながら、冗談交じりに言う。
唯人は、少し照れながら髪を触って俺の方をチラチラ見て気にしている。
「へ、変?」
女子かよ!彼氏の反応を気にする付き合いたての彼女かよ!
居たことないけど!!
まあ、大人な俺は朝からツッコまない。
余計な気遣いは疲れるし。
「いや、いーんじゃね?もはや、そういう生き物って感じで面白い」
「面白い?…健吾は、面白い人って、どう思う?」
急にぐいぐい聞いてくる。
どう思うって、なんだよ。
朝からめんどくせぇな、こいつ。
コーヒー飲んで、さっさと朝飯食えよ。
お前は仕事行くんだろがよ。
「んーいいんじゃね?面白くないより、一緒にいて楽しいじゃん。俺は面白い方が好きだな」
コーヒーを飲みながら適当に返す。
さて、まずは洗濯をして、掃除機かけて…
ハウスキーパーの仕事を考えながら、ふと返事が無い唯人を見ると、両手で顔を覆っている。
耳が真っ赤で、よく見ると身体もぶるぶる震えている。
「えっちょっと、どうした?具合悪い?なぁ、唯人?」
唯人は首をぶんぶん横に振ると、凄まじい速さでトイレに駆け込んで、そのまましばらく出てこなかった。
昨日の晩御飯で、何か当たった?もしかして食中毒?
雇い主の異常に、さすがの俺も不安になってトイレの外から声を掛けても返事は無い。
救急車呼ぶ?
スマホ片手に悩んでいると、ようやく、まだ赤い顔の唯人がトイレから出てきた。
「唯人?お前、大丈夫か?」
唯人は俺の問いかけに黙って頷く。
真っ赤過ぎて、逆に触れられない。
俯いたまま急いでテーブルについたと思ったら、すごい勢いで朝食をバクバクと食べ始めた。
飲んでる?
いや噛んでる?
いや、やっぱり飲んでる。
俺は、明らかに異常な雇い主の様子を、ただぽかんと眺めていた。
「すっっっっごく!!美味しかった!ごちそうさまでした!ありがとう!」
まだ真っ赤な顔で俯いたままそれだけ叫ぶように言うと、唯人はスーツとカバンを持って、急いで玄関を出て行った。
え?
パジャマで出てったぞ、あいつ。
は?
仕事…だよな?
教師ってどこで着替えるの?
「ま、いっか。考えるのめんどくせぇ」
とりあえず、予定通りに部屋中の掃除と洗濯をした。
と言っても、引越して来たばかりで元からきれいな室内に二人分の洗濯物もたかが知れていて、そんなにやる事も無い。
昨日、スーパーでまとめて買い物もしたから、出掛ける用事も無い。
そういえば、と唯人から昨夜もらった封筒を見る。
「住居費と食費を引いて、毎月これくらいだと少ない?」
唯人から受け取った封筒には、10万円入っていた。
「いや、全然少なくないデス」
むしろ、こんなに貰っていいのか。
これまでの給料と比べても遥かに多い。
「良かった。足りない時は教えてね?」
ホッと安堵したような唯人の表情。
なんで、こんなに高待遇?
思わず強気なこと言っちゃったけど、ほんとは俺、ストーカー撃退も出来ないよ?
罪悪感がよじよじと、俺の背中を這い登ってくる。
「なあ、俺で良かったの?もっと強い奴とかの方がボディガード的には良かったんじゃね?」
これで追い出されたら困るのは俺だけど、ついそんなことを口走る。
唯人は、困ったように笑っていた。
「家事が出来る強い人って、そうそう居ないよ。それにさ、強さよりも、一緒にいるのに気が合わないと暮らしにくいだろ?」
確かに、と俺は納得した。
そりゃ、そうか。
屈強で無口なボディーガードと二人暮らしとか、ちょっと大変そう。
「じゃ、とりあえずは俺で我慢して下さい」
笑って握手した唯人の手は汗だくだった。
随分、汗かくタイプだったんだな、あいつって。
だから痩せてるのか。
女子が聞いたら羨ましがる体質。
家事を終わらせて暇になった俺は、ぶらぶらと公園を散歩したり、コンビニで立ち読みして過ごした。
なんか、ニートみたい。
どうせ唯人の帰りは残業で遅いから、風呂入ってから晩御飯作ればいいし。
しばらくプラプラしてから5時過ぎにマンションに向かうと、見た事のあるスポーツカーが俺の脇に止まった。
「何してるの?」
いやいやいやいやいや。
唯人だと思ったよ。
こんな高級車乗ってる知り合いなんて他にいねーもん。
でも、な?
「いや、唯人こそ何してんだよ?これから、どこかに行く途中?仕事は?」
「えっと…今日は体調が優れないから、少し早く帰って来たんだ」
そう笑う唯人は、もう顔は赤くなくって、また完璧王子になっていた。
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