きらきら王子とハウスキーパー生活

にじいろ♪

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第一章

会えない

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俺は、どんな顔して唯斗に会えばいいか分からなかった。

なんで、あんなことになったんだ…

途切れ途切れの記憶が、間違いなく俺と唯斗が繋がったと伝えて来る。
起きた時はパジャマを着ていたが尻や腰の違和感はすごくて。
乳首もすっかり腫れてて、服が擦れると敏感に感じてしまうから絆創膏を貼った。

俺は恥ずかしいやら、自分が情けないやら、どうしたら良いか分からず、しばらく動けなかった。

「唯斗も、なんであんなこと…」

嫌われてはいないと思っていた。
いや、本当は好意を持たれていると、薄々は感じていた。
唯斗の熱い視線は、いつも俺をじっとりと捉えて離さない。
その視線だけで犯されているような。
でも、全てに蓋をして気付かないふりをしてきた。
あくまでも俺たちは雇用関係だから。

そう言い聞かせていたはずが、昨夜、全て崩れた。
俺は、間違いなく唯斗の視線を意識して快感に堕ちて、その名前を呼んで達した。
そして、なし崩し的に唯斗に抱かれた。

もう、元の関係には戻れない。
荷物は、あのまま置いて行こう。
元々、ほとんどが唯斗に買って貰った物だ。
しばらくは唯人のお陰で貯まった貯金を崩して生活しながら仕事を探そう。
次こそ、まともな仕事を。
でも、こんな俺に、まともな仕事なんて…

あちこちぼんやりと歩き回って、すっかり疲れ果てた俺は、近くにあったこじんまりとしたバーへと入った。

「あーら、いらっしゃーい」

カウンターに、めちゃくちゃ厳ついイケメンがいた。
なんだか気圧されて足が前に出ない。

「…あ、ここって…」

「どうぞー、食事でも何でも出せるわよ」

なんとなく雰囲気が違うような…
冷やっとしながらも、もう逃げることも出来ず中に入り、カウンターを勧められて厳ついイケメンの前にそろりと座る。

「何がいい?」

「じゃあ…えっと、ナポリタンで」

メニューを見て頼むと、手際よくイケメンが作り始める。

「お客さん、初めてねー。ノンケでしょ」

「は?ノンケ?なに?それ…あ、ごめんなさい、なんですか?」

ははっと笑うイケメン。
世の中、イケメンが渋滞してんな。
こんな、こじんまりとしたバーにもすごいイケメンいるとか日本はどうなってんだ。

ナポリタンを食べながら、厳ついのに案外話し易いイケメン店員と話をする。

「ノンケってのは、ゲイじゃないってことよ」

ぶっとむせる。
タイムリー過ぎて鼻からスパゲティが出そうになった。

「はあ…いや、まあ、なんだろ…えっと」

何と返答すればいいか分からない。
つい昨夜、男同士であんなことがあって、とも言えない。

「あら、違った?もしかして、目覚めたてとか?やーだぁ、かわいい~♡」

このイケメン店員の言い方に、ゾワゾワする。
とりあえず急いで食べて店を出よう。
ここは、今の俺にはダメだ。
俺は必死にむせながらも、ナポリタンをかき込む。

「まあまあ、ゆっくり食べて?あ、あれもあるわ」

目の前に高そうなワインが置かれる。

「新たな目覚めのお祝いに♡」

「いや、そんな、けっこうですから。俺、もう帰らなきゃ」

グイグイ来るなー、この人。
しかも、勝手に俺が目覚めたって決めつけてるし。
違うとも言い難いけど…

「いいから、いいから。お兄さん、何て呼べばいい?」

「けん、ご、ですけど…」

戸惑いながらも、威圧感に負けて、おずおずと答える。
負けた感がすごい。

「健吾?最近、どっかで聞いたわねーうーん。あ、アタシはアカネママね」

グラスに高そうなワインを注ぎながら、イケメン店員が何か考え込んでる。
俺は、注がれたら代金を払わずに出ることも出来ないよな、と結局はそのままワインを貰う。
これ、いくらになるんだ?
まさかボッタクリじゃないよな?
一応は貯金があるから、どうにかなるか?
そんなことを考えながら飲んでいると

「あっ思い出した~唯斗の健吾ちゃん♡」

ブフッとワインを吹き出す。

「あら~大丈夫?これで拭いて?」

ピンクの布巾を渡されて、俯いてテーブルを拭く。

一番聞きたくない名前が出た。
でも、俺の知ってる唯斗じゃないかもしれない。
この広い世界、ゆいとなんて名前、5万といる。

「常連の子で、健吾っていうノンケを好きになっちゃった子がいてね?その子が、しつこいのよー。叶わない恋を10年も抱えて拗れちゃって。ストーカーして、その子の弱味に付け込んで、嘘並べて色々利用して、強引に同棲に持ち込んだらしいのよ」

ふふっと笑って話すアカネママ。
10年…唯斗と俺は大学からの付き合いだから違うはず。
ホッと胸を撫で下ろす。

「どーしよーもないでしょ?アタシもね?止めろって言ったのよ。正直に話して謝れって。でもね、その子はさー」

遠くを見ながらタバコの煙を吐き出す。

「どうしても、その子と離れたくなかったんだって。お金払ってでも居てもらう為に、ハウスキーパーになってもらうだなんてね。バカでしょ」

俺は、頭痛がしてきた。
俺じゃないけど、なんだか聞いていられない。

「誰とも付き合ったことないのに、ストーカー被害に遭ってるなんて嘘まで付いて。隠しカメラまで…ま、ほんと恋って盲目なのよ。健吾くんも気を付けてね?」

ワインの味も分からない。
何を考えればいいんだろう。
これは、俺とは関係無い話し…
そう、俺とは違う。
唯人は、俺に嘘なんて吐かないし…

カランカラン

「け、ん…ご?」

扉からフラフラの唯斗が入って来た。
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