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第一章
愛する人
しおりを挟む「野上せんせぇ!」
新任の佐々木先生が声を掛けてくる。
若くてかわいいと先生にも生徒にも評判の先生だ。
学校なのに明るい茶髪で、髪を巻いてる。
マニキュアまでして短いスカート履いて合コンにでも来てるつもりか。
目障りだ。
「今日ってぇ、夜、空いてますかぁ?」
「すみません、今日は予定がありまして」
くねくね喋るんじゃない、語尾は上げるな。
お前、教師だろ。
「じゃあ、明日は?」
「明日も予定がありまして」
即答する。
しゅんとした表情を作るコイツが強かな女なことは良く分かる。
本物の『しゅん』は、もっとかわいい。
うちに本物の『しゅん』の見本がいるから騙されないし余計に気分が悪い。
「じゃあ、いつなら空いてますかぁ?わたしぃ、野上先生と二人っきりで、ご相談したいことがあってぇ」
「それなら外じゃなくて職員室でどうぞ。今からなら五分程、時間取れますが」
にっこり言うと、少しムッとする。
アヒル口?今どき古いんだよ。
「個人的なお話しなんですぅ。野上先生にとっても良い話だと思うんですけどぉ」
お前と話す時間なんて、無駄以外の何物でもない、
「はは、仕事のことですか?」
「いえ、だからぁ、プライベートですぅ。私たちの仲じゃないですかぁ、ね?」
ウインクするな、気色悪い。
付けまつ毛がバサバサしてて吐き気がする。
「申し訳ないんですが、僕のパートナーが妬きもち焼きでして、他人と二人で会うことは出来ないんです」
笑顔ではっきりと伝える。
佐々木先生が驚いて大口開けてる。
やっぱりブサイクだな。
僕の目は美しい恋人に慣れてるから、こういう異物を見ると腐りそうだ。
「え?え?だって、結婚してないって他の先生から」
「事実婚ですから。僕は指輪をしたいんですけど…恥ずかしがりの恋人が嫌がるから指輪も作っていなくて」
そう笑うと、佐々木先生は後ずさる。
「えー知らなかったー。そうなんですね。じゃあ、私はこれで失礼します」
甘ったるい喋り方も終わった。
切り替えの早さは抜群だな。
「相談はいいんですか?」
笑顔で念を押すと、僕に興味を失ったように後退って去っていく。
「あ、もう大丈夫です」
ちゃんと喋れてるな。
こっちの方がまだ幾分かマシだ。
「そうですか。では何かありましたら、いつでもどうぞ。勤務中に」
爽やかな笑顔で僕も歩き去る。
これで邪魔者は、もうこの学校にはいない。
寄り付いて来る者は、全部はねつけた。
健吾を心配させたくないからね。
一度だけ、仕事の飲み会から帰ったら襟元に口紅が付いていたことがあった。
さっきの、どこぞの馬鹿の仕業だ。
見つけた健吾は鬼の形相で怒り狂った。
その怒りは、殴るどころじゃ済まなかった。
「違うんだっ!ほんとに、何もないんだよっ!僕には健吾だけだって、ううっ」
あの日は、本当に辛かった。
僕は手足を全て縛られて、目の前でエロ過ぎる健吾の痴態を見せつけられた。
どんなにギンギンになって痛くても、根元までぎっちり縛られてイカせてもらえず、まさに蛇の生殺し状態で、朝まで床に転がされた。
あれは、もう1回やってもらってもいいかもしれな…いや、イカンイカン。
違う違う。
僕は心から反省したんだ。
二度と健吾を心配させたりしない。
でも、あれはもう一度やってほしい。
そんなこんなもあるけれど、僕はこの世で一番幸せだ。
こんな僕に生きていることを感謝するような幸せが訪れるなんて、今でも夢みたいだ。
お昼のお弁当も変わらず作ってくれている。
健吾の料理の腕は、どんどん上達していて、もはやプロ並みだ。
どこの国の料理でも抜群に美味しくて、とてもじゃないけど、そこらへんの店なんか入れない。
胃袋までガッチリ掴まれて、僕の心も身体も全部健吾の色に染められた。
願望が全て叶って本当に嬉しい。
僕の両親にも紹介して、両親は僕達を理解して応援してくれている。
僕が変われたきっかけが健吾だと話していたから両親も健吾に感謝していたようで、終始、暖かい会食となった。
もちろん、健吾の両親にも会った。
緊張していたが、なぜか、ものすごく爆笑された。
『こんなイケメンと健吾が?あっはっはっ!おもしろー!!腹痛ーい!』
だった。
健吾は怒るし大変だったけど、結局は応援してくれていて。
健吾みたいに、あったかい家族だった。
思い出して、ふふふ、と笑いながら、玄関のドアを開ける。
「ただいまー」
声を掛けて進むと、台所でエプロンを付けた健吾が鍋を混ぜている。
多分、僕は健吾のお陰で視力も良くなった。
こんな眩しい存在を毎日見ていれば視力なんて回復して当たり前だ。
「おけーりー」
健吾の後ろから、そっと抱き着いて鍋の中身を覗く。
匂いで分かるけど、これがやりたいんだよ。
「お、ビーフシチュー?大好き♡」
「唯斗は、何でも大好きだろ」
冷めた口調で言う健吾。
あー、ゾクゾクする。
「もちろん、健吾が一番好きだよ♡」
「知ってるよ、ばーか。このクズイケメンが」
ああ、今日も健吾の見下した口調に下半身が熱くなる。
もう、興奮がピークだ。
一刻も早く健吾と愛し合いたい。
「ねぇ、今夜、いい?」
耳元で囁くと、何かに気付いたように、うん?と健吾が振り返る。
「女の匂いがする」
は?と自分の匂いを嗅ぐ。
全然分からない。
「今日、甘い香水使ってる女といただろ」
すぐに甘ったるい話し方をする、あのクソ雑魚新任が思い付く。
「…ああ!いや、でも廊下で立ち話しただけで」
「なんの話?」
ぐいっと襟を掴まれて、健吾の目の前に引き寄せられる。
身長差があるから、僕は中腰だ。
ちょうど、僕は前かがみになりたかったから良かった。
「えーと、その、それは」
「嘘ついたら根元グルグル巻きな」
耳元で低く囁かれる。
前回のことを思い出して、ズクン、と更に下半身に血が集まっていく。
はぁ、はぁ、と息が荒くなる。
ああ、あの罰を、また僕に…
ゴクリ、と生唾を飲み込む。
「相談があるからって食事に誘われた」
「ふーん、それで?」
目が恐い恐い恐い。
もっと責めて。
もっと、もっと僕だけを見て。
「もちろん、はっきり断ったよ。僕にはパートナーがいるからって」
ふうん、と満足気だ。
あ、これ、罰無し?ちょっと残念…
「だからさ、指輪買おうよ。ひと目で分かるようにさ?」
「んー…考えとく」
いつも、こうやって流される。
僕は、健吾が僕のモノだという証が欲しいのに。
「なんでさ、僕は付けたいのにー」
ちょっとごねてみる。
するり、と健吾にまた抱きつく。
拒否されないことを確認して、ちょっと強気になる。
「だって…」
健吾の耳が少し赤い。
おや?これは?
「なんか照れるだろ…お前は俺のモノって言ってるみたいで」
「───好き」
僕たちは、朝まで存分に愛し合った。
根本をギチギチにしてもらったのは言うまでもない♡
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