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第一章
崩壊
しおりを挟む仕事を終えて愛する人のいる家へ帰る。
それだけで、こんなに幸せ。
あと少しで家を買う為に目標としていた頭金が貯まる。
そしたら健吾と住む素敵な家を買おう。
健吾は、どんな家がいいかな。
和風?健吾の実家は和風だっから、その方が慣れてるかもしれない。
いや、もしかしたら洋風の方が憧れとかあるかな?
バルコニーで朝食食べるとかも、いい。
夢は膨らむばかり。
ふんふん、と鼻歌混じりにドアを開ける。
「ただいまーー!!」
そこには、いつも通りの健吾が夕食を作っていた。
「今日のお弁当も美味しかったよ~♡けんごぉ~ありがとう♡」
「そっか」
冷たい健吾が、また興奮して最高。
いつもの僕とお揃いのエプロンはしてないみたいだけど、その身体の線が良く見えて、これも僕へのサービスかな。
鞄を置いてさっと着替えて用意を手伝おうとすると遮られた。
「もう出来てるから運んで」
なんだろう、少し元気がないような?
「健吾?どうしたの?何かあった?」
よく見ると泣いた跡が僅かに目元にある。
僕は急いで近付いて顔を観察する。
「大丈夫。なんでもないよ、食べよう」
おかしい。
話し方もぎこちない。
僕の顔も見ない。
何かあったにちがいない。
「今日は、どこか出かけたの?」
さり気なさを装って聞く。
ほんとは知ってるんだ、全部。
健吾のスマホにGPSを入れてあって、いつでも僕のスマホで見れるようになってる。
今日は10時から16時までアカネママのところに行ってたはず。
「うん、ちょっとアカネママのところにね」
ほっとする。
嘘はつかれてない。
詳しい話は後でアカネママに聞けば分かる。
「そっかぁ、今度は僕も一緒に行きたいな♡」
にっこり言うと、健吾はぎこちなく笑う。
僕の中で警報が鳴る。
おかしい。
「健吾、口に付いてるよ」
口元に手を伸ばすと、びくっとして後ろに避け僕の指は空を切る。
「あ、ごめん、自分で取れるから大丈夫」
手の甲で、ゴシゴシと口元を拭う健吾。
どうして?
疑問の中、僕の夢の城が崩れていく音がする。
「唯人…これ食べ終わったら、大事な話がある」
この雰囲気は、おかしい。
だめだ、聞いちゃだめだ。
死にたい。
もし健吾に振られるなら幸せな夢を見たまま死にたい。
「大切な話なら、僕もあるんだ」
健吾が驚いた顔で僕を見る。
やっと目が合った。
嬉しい。
でも、その目は僕を通り過ぎて行く気がした。
「あのね、もう少しで頭金が貯まるから二人の家を買おう?二人だけの素敵な家を。健吾は、どんな家がいい?和風?それとも洋風?あ、平屋も人気あるよね。僕、平屋も好きだなー。二人で、ずっと死ぬまで仲良く…」
「唯人」
健吾の声は大きく無いのに、とても響いた。
僕の夢物語なんて、あっさり遮られるくらいに。
「俺たち、別れよう」
僕の心臓をいつでも止めることが出来るのは、きっと健吾だけだ。
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