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一章 入学
バス
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遅かったことに不満な顔をしている青葉に謝りながら玄関に出る。
「行ってらっしゃい。体には気をつけなさい」
「帰ってくるときはお土産持ってきなさいよ。物とかじゃなくて、洋菓子の美味しいやつねぇー」
父さんの言葉は嬉しかったけど、母さんの言葉で色々と台無しなんだが。青葉も俺と同じように苦笑している。思いどころはあるけど、境本家長男である境本敦は今旅立ちします。
「敦、反対の方向に移動しているぞ」
「青葉、早く言ってくれよ!?」
朝から出落ち多くないか。そこからは失敗体験はなく、電車に乗り駅で待っている学校専用のスクールバスに乗って目的地に向かう。スクールバスに初めて乗ってみたが、意外にも人が少ない。
「なぁ、青葉……このバスで合っているのか? 始業式なのに人が少ないような気がするんだが」
「バスの運転手にも聞いたから、これで合っている筈だが」
皆、先に移動しているのかな。時間的には寝坊したけど早めのバスに乗れたような気がしたけど。青葉と一緒に困惑していると、後ろから肩を叩かれる。振り返ると金髪の爽やかそうなお兄さんが笑っていた。
「そんなに、不安にならなくても大丈夫だよ。このバスは鏡境学園に辿り着くからさ。なんも心配しないでいいよ」
ニコニコとしている姿はテレビに出そうなアイドルに見える。陽気な人だなぁという第一印象だ。言葉を素直に受け止めて、俺はバスの行き先が合っていることに安心を覚える。
「人が少ない理由は元から鏡境学園は中高の進学校だから、寮で生活する人が多いんだよ。中学校と高校との始業式の日にちも違うし、このバスに乗っているのは外部生ぐらいか実家に用があった人ぐらいかな」
「ふーん、春休みに寮から家に帰宅する人はいないのかよ」
青葉の疑問に乗って、俺も頷くように聞く。一瞬、質問と同時に爽やかな顔が暗くなったような。直ぐに笑顔で答えてくれた。
「鏡境学園には努力家が多いからね。だから、バスに乗っているのは外部生以外は『不良品』が多いと思うよ」
「……不良品?」
「あぁ、不良品。……鏡境学園では上手くいかなかったやつのことを指す言葉。お前達も行けば学園のルールがよく分かる筈だよ」
バスに見渡すと、何処か魂が抜かれたような生徒たちがちらほらといた。急に寒気が体に感じる。変な不安が積もるまえに、俺は寒気が吹き飛ばすように質問を変える。
「なぁ、爽やかなお兄さんは先輩なんですか?」
「えっ、爽やかなお兄さん、……先輩!?ふふっ、ははっ!!」
お兄さんは笑い転けそうになっている。笑い上戸なのか。青葉は俺に向かって溜め息を吐いて「ネクタイのバッチ」と一言呟いた。俺たちの制服はブレザーでネクタイの着用を求められていた。ネクタイにそれぞれ学年がわかるバッチと何処のクラスにいるか分かるネクタイを付けている。お兄さんのネクタイのバッチを見てみると無色のネクタイと青バッチだった。
「……無色の青バッチ。青バッチは確か……一年生。あっ、俺たちと同い年か!?」
「ははっ、正解。まさか、年上に見られると思わなかったよ。俺の名前は東山望。よろしく」
「いや、だって物知りだったからてっきり。えっと、俺の名前は境本敦。こいつは俺の幼馴染みで風間青葉。宜しくな」
「説明された通り、俺の名前は風間青葉だ。こいつが馬鹿ですまないな」
馬鹿発言にイラッときて、青葉の肘を蹴る。強く蹴ったのに、痛める姿はなくドヤ顔をしてきたので苛つきを増した。三人で話していると、バスは鏡境学園に辿り着いたのか停止した。
「行ってらっしゃい。体には気をつけなさい」
「帰ってくるときはお土産持ってきなさいよ。物とかじゃなくて、洋菓子の美味しいやつねぇー」
父さんの言葉は嬉しかったけど、母さんの言葉で色々と台無しなんだが。青葉も俺と同じように苦笑している。思いどころはあるけど、境本家長男である境本敦は今旅立ちします。
「敦、反対の方向に移動しているぞ」
「青葉、早く言ってくれよ!?」
朝から出落ち多くないか。そこからは失敗体験はなく、電車に乗り駅で待っている学校専用のスクールバスに乗って目的地に向かう。スクールバスに初めて乗ってみたが、意外にも人が少ない。
「なぁ、青葉……このバスで合っているのか? 始業式なのに人が少ないような気がするんだが」
「バスの運転手にも聞いたから、これで合っている筈だが」
皆、先に移動しているのかな。時間的には寝坊したけど早めのバスに乗れたような気がしたけど。青葉と一緒に困惑していると、後ろから肩を叩かれる。振り返ると金髪の爽やかそうなお兄さんが笑っていた。
「そんなに、不安にならなくても大丈夫だよ。このバスは鏡境学園に辿り着くからさ。なんも心配しないでいいよ」
ニコニコとしている姿はテレビに出そうなアイドルに見える。陽気な人だなぁという第一印象だ。言葉を素直に受け止めて、俺はバスの行き先が合っていることに安心を覚える。
「人が少ない理由は元から鏡境学園は中高の進学校だから、寮で生活する人が多いんだよ。中学校と高校との始業式の日にちも違うし、このバスに乗っているのは外部生ぐらいか実家に用があった人ぐらいかな」
「ふーん、春休みに寮から家に帰宅する人はいないのかよ」
青葉の疑問に乗って、俺も頷くように聞く。一瞬、質問と同時に爽やかな顔が暗くなったような。直ぐに笑顔で答えてくれた。
「鏡境学園には努力家が多いからね。だから、バスに乗っているのは外部生以外は『不良品』が多いと思うよ」
「……不良品?」
「あぁ、不良品。……鏡境学園では上手くいかなかったやつのことを指す言葉。お前達も行けば学園のルールがよく分かる筈だよ」
バスに見渡すと、何処か魂が抜かれたような生徒たちがちらほらといた。急に寒気が体に感じる。変な不安が積もるまえに、俺は寒気が吹き飛ばすように質問を変える。
「なぁ、爽やかなお兄さんは先輩なんですか?」
「えっ、爽やかなお兄さん、……先輩!?ふふっ、ははっ!!」
お兄さんは笑い転けそうになっている。笑い上戸なのか。青葉は俺に向かって溜め息を吐いて「ネクタイのバッチ」と一言呟いた。俺たちの制服はブレザーでネクタイの着用を求められていた。ネクタイにそれぞれ学年がわかるバッチと何処のクラスにいるか分かるネクタイを付けている。お兄さんのネクタイのバッチを見てみると無色のネクタイと青バッチだった。
「……無色の青バッチ。青バッチは確か……一年生。あっ、俺たちと同い年か!?」
「ははっ、正解。まさか、年上に見られると思わなかったよ。俺の名前は東山望。よろしく」
「いや、だって物知りだったからてっきり。えっと、俺の名前は境本敦。こいつは俺の幼馴染みで風間青葉。宜しくな」
「説明された通り、俺の名前は風間青葉だ。こいつが馬鹿ですまないな」
馬鹿発言にイラッときて、青葉の肘を蹴る。強く蹴ったのに、痛める姿はなくドヤ顔をしてきたので苛つきを増した。三人で話していると、バスは鏡境学園に辿り着いたのか停止した。
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