王道を書いてみたい

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一章 入学

親衛隊

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あっという間に時間が流れて、一日目の終わりのチャイムが鳴った。時間を早く感じたのは茫然としていたからでもある。先生からは後で委員会のことに教えるから、社会科第三室に来るよう言われているけど気が重たい。だって、先から教室から出ていく人達がジロジロと見てきて居心地が悪い。笹木も生徒会に用事があるから、残って説明してくれなかったし。俺は溜め息を吐いていると、何処からか声が聞こえた。

「貴殿が境本敦だな」

 声がする方へ反応するが、何処も人はいなかった。俺の名前を呼んでいた気がするが。

「僕は此処にいる!!」

 背中の方向から脚を蹴られる。不意に来たから痛みが込め上がっていく。骨の部分にひびが出来たらどうしてくれるんだ。蹴ってきた本人に怒ろうと振り向くが、その場所には150cmぐらいしかない少年が立っていて俺を睨んでいた。

「僕は笹木様の親衛隊の隊長である沢田信明と申す!! 」

「うぉ!? また変な人が出てきた!!」

「変な人とは失礼な!! 貴殿のことを笹木様から頼まれていて待機していたというのに」

「えっと、……すいません」

 鋭い睨み目からして、笹木と話していたときに睨んでいたのは沢田だったじゃないのか。いや、先程の殺意ほどではない。まぁ、小さいくせに威圧感が伝わってくるけど。武士みたいな間違った言葉遣いがあれだけど。悪い子じゃないかも。

「本来なら制裁など言っていた方がいいけど。僕はそういうのは苦手だから言わないぞ!!」

「よく分からないけどありがとうございます?」

「感謝するなら笹木様にしなさい。笹木様は誰でも優しいからこそ、皆が平等になっている。だから、醜い争いや制裁は起きない」

「あの……色々と話が混ざりすぎて困っているですが。まず、制裁て何でしょうか?」

 勝手に語りだした沢田に後から順に質問をすることにした。沢田は説明するときも得意気な顔である。一種のドヤ顔だな。

「制裁というのは生徒会メンバーに触れあってしまった愚かなものに罰を与えるものだ。だが、笹木様の場合はそういうことは起きることはない。笹木様の許しや平等の愛があるから、笹木様の親衛隊は制裁などはしないのだ!!」

「笹木は優しいのは分かるよ。無表情だけど、保健室帰りの俺にすぐ話しかけてくれたし」

「笹木じゃなく、笹木様と呼びなさい。無表情などあり得ない。愛らしい表情ではないか!!」

「……そろそろ、喋る口調を合わせたらどうよ?あと、少しは言葉のキャッチボールをなぁ?」

「僕は元からこんな感じでな。あと、キャッチボールは苦手だ」

 うん、会話を諦めよう。親衛隊というのは濃そうな人が多そうだなぁ。少し面倒臭い感じになってきた俺は帰った方がいいかもしれないと思い始めた。

「……貴様、寮の場所など知らんだろう」

「心を読まれた!?」

「笹木様の親衛隊隊長だから当たり前のことだ!!」

 親衛隊隊長は関係ないだろう。秘密結社でもあるまいし。でも、寮の場所を確認していないのも事実だ。まず、入学式のパンフレットに書いているものだが倒れていたせいで回収していなかった。現状、俺は帰ることはできないのだ。沢田は自慢気な顔で俺を見てきた。

「笹木様はそれを見通して、僕を派遣したのだ。哀れな不幸という役割を与えられたお前に同情でもしたのだろう。きっと、そうだな」

「哀れな役割って、俺はそこまで不幸じゃないぞ!!」

「ふん。入学式で倒れては保健室行きの病人系平凡という扱いをされ。そして、鏡境学園の影響が大きい委員会に入ってしまって時点で不幸だろう!!」

「言葉にすると結構、不幸だった!!」

 どっちも叫んだことで息を吸い込み深呼吸する。不幸でも幸せは来るはず。ポジティブに考えることが一番だな。学校に影響が大きい委員会というのはどういうことなのだろうか。そこら辺の話を聞いておかないと。

「おーい、境本ッ!! 置いていくぞ!!まずは社会科第三室だろう!!」

 近くにいた沢田が教室の扉の付近まで移動していた。よし、沢田から聞かないで先生に聞こう。それが一番話が分かるはすだ。
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