【完結】幼い義妹が聖女なのは内緒でお願いします

ほんだし

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生きていく街

よんじゅうさん

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 果穂が倒れて、元気になってから数日経った。
 結局それからの果穂は元気で元気で元気で、そりゃもう毎日こんなに元気だったっけってくらい元気だった。
 保育園に行ってた時はこんなに元気だったんだろうか。

 3人を見送って、片付けをして、お絵描きをして、お昼を食べて、昼寝をさせて、ちょっと庭で遊んで、百花と一緒に夕飯を作って食べて風呂に入って就寝。
 庭には果穂が遊べるようにぶらんこやビニールプールまで出してしまった。
 世の母親が子供を疲れさせて寝させるとはこういうことか、と思った。
 保育園の先生達はすごかったんだな……

 ただ、買い物等が必要ないとはいえ、いつまでも家に引き篭ってばかりという訳にはいかず……
 僕はともかく、果穂をずっと閉じ込めてはおけない。
 本人も出たい出たいと騒いでいるのでもうそろそろ限界かなって。

 そんな訳で、今日は3人を送ってから、お昼を作って外に行くことにした。
 街の方ではなく、まだ行ったことのない丘の上に行きたい。ピクニックみたいで楽しみだ。
 果穂にも一緒にサンドイッチを作るのを手伝ってもらい準備を済ますと、早く早くと腕を引かれて外に出た。
 眩しい。
 そういえば午前中にこうやって外に出るのは久し振りかもしれない。
 たまには陽の光も浴びないといけないのに。

「きょうはーあっちのとこ、いくんでしょー?」
「そうだよ、高いとこ。街がよく見えるって」
「たのしみねー」
「果穂歩いてく?」
「うん!」
「疲れたら兄ちゃんに教えてな」
「はーい!」

 とても元気なお返事。
 果穂のペースで歩いていくのは逆にしんどい気持ちもある。
 でもあちらこちらに寄りながら楽しそうに歩いてるもんだから、まぁいっかとなってしまう。時間はいっぱいある。毎日休みのようなもんだ。

「にいにー!」
「んー?」
「とりさん!」
「ほんとだねー」

 見たことのない鳥、見たことのない花、見たことのない空の色。
 向こうの世界でも実際に見たことがないものはたくさんあって、そりゃあこっちの世界でも見たことないものは更にたくさんあるだろう。
 まだ少し、得体の知れないものにびびっていたりするけれど、まあ皆が放ってるってことは危なくはないってことだ、多分。
 果穂に関してはやばければ精霊がどうにかして止めてくれるだろう。

「にいに」
「んー、そろそろ抱っこする?」
「んーん、おててぎゅってして」
「ああ、はいはい」

 僕の手を握って、ぐんぐん進んで行く。
 もうそろそろゴールだと気付いているのだろうか。

「後ちょっとで着くよ」
「うん!」
「どこでお弁当食べよっか」
「かほがさがすー!」

 あっちあっち、と連れていかれた先で、ふわっと風が吹いた。
 ここだあ、と果穂の嬉しそうな声がする。

「うわあ」
「すごおい」
「街が一望出来るってこういうことか」

 小高い丘の上から見える景色は綺麗だった。
 あっちがお城、あっちが3人の通う学園、あっちが買い物をした街、あっちが僕達の家。
 指をさしながら果穂にひとつひとつ説明をする。
 わかってるのかわかってないのか、それでも果穂はきゃっきゃと楽しそうにはしゃいでる。

「ここで!ごはん!たべる!」
「あーうん、そうしよっか」
「はやくー!おなかすいた!」
「待って待って」

 急かす果穂を落ち着かせて、まずは手を洗い、乾かす。
 ……魔法が便利過ぎて、これも前の世界で使えてたら忙しい世の母親には大変ありがたかっただろうなと考えてしまう。
 子供は本当元気でなにするかわからないから……

「たまごー!」
「はい」
「おいしー!」

 基本的に果穂の好きなものしか作ってない。
 だからどのサンドイッチに手をつけても果穂はご機嫌なのである。
 まだ卵サンドをもぐもぐしながら、次はどれにしようかなーと選んでる果穂の少し後ろで何か影が動いた。

 誰か来たか?なんか現れたか?とそちらをじっと見てると、木の幹からひょこっと覗いた顔はどうみても子供だった。
 ……この辺の子だろうか。
 僕達みたいにちょっと遊びに来た子だろうか。

 敵意は感じないので、一応笑顔を向けておく。
 それに対し、一瞬びくっと躰を震わせて、それからおずおずと手を振ってくれた。
 やっぱりこの辺の子かもしれない。

 その僕の視線を追い、果穂が振り返ってその子を見つけてしまった。

「あーっ!」

 突然の大声に、その子はまた驚いてしまう。僕もびっくりした。
 でもその果穂の瞳はきらきらしていて、そうか、友達だと思ってるのかもしれない。

「さんどいっち!たべる!?」

 ぶんぶん、と首を振る。

「おいしーよ?かほもいっしょにつくったの!たべる!?」

 また横に首を振る。
 それに果穂は黙って考え出し、それから思い出したように収納からカップケーキを取り出した。
 つい先日、百花と調子に乗って作りすぎたものだ。
 食べきれない程焼いてしまい、果穂の非常食になったらしい。

「これも!かほもおてつだいしたの!けーき!おいしーよ!」

 チョコとバナナのカップケーキ。
 ふんわりと甘いかおりがした。
 それにつられたのか、隠れてた女の子がふらふらと出てきたところで、こら!と別の女の子に捕まっていた。

 果穂くらいの女の子と、ふたつみっつくらい年上そうな女の子。
 食べ物につられちゃだめ!と怒られていた。
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