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2人の聖女様
ごじゅうさん
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果穂が寝たのを見計らって、百花に託して僕は家を出た。
待ち合わせは夜、薔薇園で。
1人でも良かったんだけど、ララが一緒についてきてくれる。
本当はクラスメイトの百花が少しは安心して貰えるかもしれないんだけど、夜に13歳の女の子を連れ出すのは躊躇う。
ララだって女の子だけど、ルルがいたらびっくりしちゃうでしょ、とのこと。
うーん、だから1人でも良かったんだけどな、と言うと、貴方1人じゃ心配よと言われてしまった。
「それに今日来るかもわからないし、明日来るかもわからない。来ないかもしれないんだから、その間1人なのも……その、寂しいでしょ」
「ありがと」
確かに話し相手がいるだけで時間の流れは変わる。
何日も1人でぼーっと空や薔薇を見て時間を潰せる程ロマンチストではない。
「ほんとに薔薇ばかりなのね」
「綺麗だよね」
「香りがすごいわ、ここに少しいるだけで帰る頃には薔薇の精になったようになるでしょうね」
学園の隣にも関わらず、ここに来たことはないらしい。
そういえば、今日は花祭りだったんだし、観光客がまだうろうろしていてもおかしくない。夜でも十分綺麗なのに。
入りにくい何かがあるのだろうか。
「寒くない?大丈夫?」
「大丈夫よ」
「お茶飲む?」
「あるの?準備がいいのね、じゃあ頂こうかしら」
収納は便利だ。
魔法瓶のようなものがなくても、ボトルに入れて収納するだけでいつでも熱々の状態のまま持ち運び出来る。
こういう時にさっと出せるのが助かる。
「ふう」
「……ごめんな、付き合わせて」
「なんで謝るのよ」
「皆明日からまた学園始まるのに」
「今まで冒険してきたのよ、これくらい全然疲れる内に入らないわよ、それにある程度のところで帰るんでしょ」
「うん……」
「……こんなにゆっくり出来ることもそうそうないわ、折角だし薔薇を楽しみましょ」
「……ありがとう」
僕達と出会わなければ、ララとルルは真っ直ぐ王都に来て、学園生活を過ごしながら、聖女云々とは関わらずに生きてきたのかもしれない。
僕や百花は2人に出会えて助けて貰ってばかりだけど、僕等がいなければ、こんな面倒もなかったかもしれない。
……いや、ララのことだ、首を突っ込んでしまい、仕方なしにルルを巻き込んでいたかもしれない。
「何よ、にやにやしちゃって」
「にやにやって……」
「まあね、カレンは綺麗な子よね」
「カレン?今ララとルルに会えたことを考えてたんだけど」
「……!」
「ララも綺麗だと思うよ、カレンとはジャンルが違うけど」
「……!!」
赤茶色の長いふわふわした髪と、ぴこぴこ揺れる耳と尻尾、しなやかな躰。
丸くて大きな、少しだけつったような意思の強い瞳とつんとした鼻、少し小さな唇。
プラチナの長いさらさらした髪と、色素の薄い肌、華奢な躰。
少し垂れ目の、穏やかな綺麗な碧い瞳と小さな鼻、薄い唇。
どちらも十分美少女だ。
勿論百花も果穂もかわいい。
綺麗な黒髪は安心するし、黒目がちの瞳は赤ちゃんみたいで、ほっぺたもまだ2人ともぷにぷにしていて……いやこれ本人に言ったら怒られそうだからやめておこう。
「あっ、あたしが綺麗ならルルも綺麗ね!」
「うん、髪色や毛色は一緒だけど、顔は似てる訳じゃないんだよね、でも」
なのに何故か、双子だからか、間違いなく兄妹だな、って思う。
キリッとした目元に、高い鼻。
文句なしのイケメンなのに、ララと同じで揺れる耳と尻尾がかわいくて、そのギャップがずるい。
「……もしかしてユートってルルのこと好き?」
「え、皆好きだよ」
「怪しいわね……」
「何がだよ」
「……まあいいわ、れ、恋愛は自由よね……」
「え、そういう意味だったの?それはないよー」
「どうだか」
「そういうのは果穂が大きくなるまで考えられないな~」
「はぁ!?」
「えっ、だってそんな場合じゃないし」
「それは……そうかもしれないけどぉ……」
ララの声が小さくなる。どの世界でも女の子は恋バナが好きなんだなあ。
僕なんか果穂が彼氏です!って男を連れてきたらって想像だけで卒倒しそうだ。
お前に僕のかわいい妹はやらん。
「はぁ……そうよね、ユートはそうよね、カホ優先よね、わかってる、わかってたわ」
「うん」
「……まぁカホを優先しないユートなんてユートじゃないわね、そうよね、まだまだ甘えたい子供だもんね……」
まだ5歳なんだ、のびのび友達と遊んで勉強をして、大きくなってもらいたい。
僕はそれを見届ける義務がある。
それとは別に、ララにもルルにも百花にも、孤児院の子達も先生も、皆幸せになってほしい。
それでも、カレンになにかがあるのなら、そのカレンを犠牲にして幸せを築くのは違う。
矛盾なのはわかってるんだ、果穂を差し出さないけどカレンにも何かしたいだなんて。
自分の罪悪感を減らすだけの、自分勝手な気持ちなんだって。
この世界に来た時の理由が果穂の使命が聖女というなら、それを阻んでる僕に出来ることは何なのか。
せめて考えさせて欲しい。
その日を含め4日間、カレンは現れなかった。
待ち合わせは夜、薔薇園で。
1人でも良かったんだけど、ララが一緒についてきてくれる。
本当はクラスメイトの百花が少しは安心して貰えるかもしれないんだけど、夜に13歳の女の子を連れ出すのは躊躇う。
ララだって女の子だけど、ルルがいたらびっくりしちゃうでしょ、とのこと。
うーん、だから1人でも良かったんだけどな、と言うと、貴方1人じゃ心配よと言われてしまった。
「それに今日来るかもわからないし、明日来るかもわからない。来ないかもしれないんだから、その間1人なのも……その、寂しいでしょ」
「ありがと」
確かに話し相手がいるだけで時間の流れは変わる。
何日も1人でぼーっと空や薔薇を見て時間を潰せる程ロマンチストではない。
「ほんとに薔薇ばかりなのね」
「綺麗だよね」
「香りがすごいわ、ここに少しいるだけで帰る頃には薔薇の精になったようになるでしょうね」
学園の隣にも関わらず、ここに来たことはないらしい。
そういえば、今日は花祭りだったんだし、観光客がまだうろうろしていてもおかしくない。夜でも十分綺麗なのに。
入りにくい何かがあるのだろうか。
「寒くない?大丈夫?」
「大丈夫よ」
「お茶飲む?」
「あるの?準備がいいのね、じゃあ頂こうかしら」
収納は便利だ。
魔法瓶のようなものがなくても、ボトルに入れて収納するだけでいつでも熱々の状態のまま持ち運び出来る。
こういう時にさっと出せるのが助かる。
「ふう」
「……ごめんな、付き合わせて」
「なんで謝るのよ」
「皆明日からまた学園始まるのに」
「今まで冒険してきたのよ、これくらい全然疲れる内に入らないわよ、それにある程度のところで帰るんでしょ」
「うん……」
「……こんなにゆっくり出来ることもそうそうないわ、折角だし薔薇を楽しみましょ」
「……ありがとう」
僕達と出会わなければ、ララとルルは真っ直ぐ王都に来て、学園生活を過ごしながら、聖女云々とは関わらずに生きてきたのかもしれない。
僕や百花は2人に出会えて助けて貰ってばかりだけど、僕等がいなければ、こんな面倒もなかったかもしれない。
……いや、ララのことだ、首を突っ込んでしまい、仕方なしにルルを巻き込んでいたかもしれない。
「何よ、にやにやしちゃって」
「にやにやって……」
「まあね、カレンは綺麗な子よね」
「カレン?今ララとルルに会えたことを考えてたんだけど」
「……!」
「ララも綺麗だと思うよ、カレンとはジャンルが違うけど」
「……!!」
赤茶色の長いふわふわした髪と、ぴこぴこ揺れる耳と尻尾、しなやかな躰。
丸くて大きな、少しだけつったような意思の強い瞳とつんとした鼻、少し小さな唇。
プラチナの長いさらさらした髪と、色素の薄い肌、華奢な躰。
少し垂れ目の、穏やかな綺麗な碧い瞳と小さな鼻、薄い唇。
どちらも十分美少女だ。
勿論百花も果穂もかわいい。
綺麗な黒髪は安心するし、黒目がちの瞳は赤ちゃんみたいで、ほっぺたもまだ2人ともぷにぷにしていて……いやこれ本人に言ったら怒られそうだからやめておこう。
「あっ、あたしが綺麗ならルルも綺麗ね!」
「うん、髪色や毛色は一緒だけど、顔は似てる訳じゃないんだよね、でも」
なのに何故か、双子だからか、間違いなく兄妹だな、って思う。
キリッとした目元に、高い鼻。
文句なしのイケメンなのに、ララと同じで揺れる耳と尻尾がかわいくて、そのギャップがずるい。
「……もしかしてユートってルルのこと好き?」
「え、皆好きだよ」
「怪しいわね……」
「何がだよ」
「……まあいいわ、れ、恋愛は自由よね……」
「え、そういう意味だったの?それはないよー」
「どうだか」
「そういうのは果穂が大きくなるまで考えられないな~」
「はぁ!?」
「えっ、だってそんな場合じゃないし」
「それは……そうかもしれないけどぉ……」
ララの声が小さくなる。どの世界でも女の子は恋バナが好きなんだなあ。
僕なんか果穂が彼氏です!って男を連れてきたらって想像だけで卒倒しそうだ。
お前に僕のかわいい妹はやらん。
「はぁ……そうよね、ユートはそうよね、カホ優先よね、わかってる、わかってたわ」
「うん」
「……まぁカホを優先しないユートなんてユートじゃないわね、そうよね、まだまだ甘えたい子供だもんね……」
まだ5歳なんだ、のびのび友達と遊んで勉強をして、大きくなってもらいたい。
僕はそれを見届ける義務がある。
それとは別に、ララにもルルにも百花にも、孤児院の子達も先生も、皆幸せになってほしい。
それでも、カレンになにかがあるのなら、そのカレンを犠牲にして幸せを築くのは違う。
矛盾なのはわかってるんだ、果穂を差し出さないけどカレンにも何かしたいだなんて。
自分の罪悪感を減らすだけの、自分勝手な気持ちなんだって。
この世界に来た時の理由が果穂の使命が聖女というなら、それを阻んでる僕に出来ることは何なのか。
せめて考えさせて欲しい。
その日を含め4日間、カレンは現れなかった。
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