【完結】幼い義妹が聖女なのは内緒でお願いします

ほんだし

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2人の聖女様

ごじゅうよん

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「ほんとに現れるのか怪しくなってきたわね」

 今日で5日目だ。
 どうやらまだ学園にも来てないらしく、もしかしたら本当にお城から出して貰えなくなってるのかもしれない。
 どうしよう、状態がわからなきゃこっちもどう動いていいかわからない。

「付き合わせてごめん、眠いだろうし帰ってていいよ」
「ユートを1人にする方が気になって眠れなくなるわ、ここまで来たら聖女様取っ捕まえるまで粘るわよ」
「……カレンは悪いことした訳じゃないからね」

 5日目にもなるとやはり薔薇や星空に感動はない。綺麗だな、とは思うけど。
 スマホやゲームのように時間を潰せるものがないから、話し相手がいるのは本当はとても助かる。
 僕1人だと多分ベンチで寝てた。

 今日は学園の話を聞いていた。
 日本のものとは違う、魔法を使う授業は面白い。
 自分が弱いと思っていた百花もめきめき力をつけてきたみたいだし、元々強かったララとルルもまだ勉強が楽しいという。

 個性の強い人達の話を聞きながら笑っていると、ララの耳がぴくっと動いた。

「……誰か来た」
「……カレンかな?」

 土を踏む音。
 黙りこくった空気の中では、薔薇の葉が揺れる音も良く聞こえる。

「……お待たせしてしまい、申し訳ございません」

 さらさらとしたプラチナの髪は夜でも輝いていた。
 でもあれだけ綺麗に手入れされていたカレンのロングヘアは少しパサついて見えたし、5日前と同じかそれ以上に窶れて見えた。

「取り敢えず座った方がいいわ、ほら」

 ララがベンチを譲る。
 少しふらつく足取りでそこに座るカレンに暖かいお茶を渡す。
 一口含んで、暖かい、と呟くカレンが落ち着くまで待った。
 5日も待ったんだ、少し位待てる。

「……多分……大分、お待たせしましたよね……申し訳ございません」
「謝らなくていいわ、理由があったのよね」
「なかなか……外に出れなくて」
「学園すら来ないものね、わかる?あたし」
「えっと、先輩ですよね……」
「そう、ごめんね、こんな時間だし、一応着いてきてるの。あたしがいない方が良ければ席を外すわ」
「……いえ、大丈夫です」

 ちら、と2人して僕を見てくる。僕に早く話せということだ。
 無理してここに来てくれたなら、確かに手早く済ませないといけない。

「……その、気を悪くしないで聞いてほしいんだけど、今、カレンがやってることを教えて欲しい」
「え……?」

 噂話としての第1王子のこと、カレンが窶れる程頑張ってもおそらく治ってないこと、少しでも手伝いたいから原因があるなら教えてほしいこと。

「もし必要な薬草とか、ものとか、あれば取りにいってもいいし……」
「第1王子が病に伏してることはそんなに広まってることなのですか……?」
「いえ、憶測よ、カレンが休みがちになったことと、第1王子は元々色々な所に顔を出していたのに最近どこにも現れなくなったようだから……」
「……伝染るようなんです」
「え」
「感染症らしくて、でもどこにも……調べても、分からなくて」

 ……顔色が悪い。真っ青だ。
 大丈夫か訊くと頷かれたが、強がりだろう。

「……医者と、その助手の方が亡くなりました。今は結界を貼って隔離している状態なんです……私しか、近寄れなくて」
「カレンは大丈夫なのか?」
「私は……大丈夫、みたいで」
「聖女様だものね」
「……私なんか、聖女様じゃ、ないんです」
「え?」
「私、聖女になんか、なりたくなかった……聖女様じゃないって、何回も、何回も言ったのに」

 じわっと涙が溢れて、カレンが口を開く度にぽろぽろと零れていく。
 思ってた以上に、聖女様としての重荷が蝕んでいるようだった。

「あんなの、知らない……真っ黒、真っ黒になっていくんです、わた……私が、呪ってるかのように、毎日、真っ黒になってくんです……リュカ様は、私を助けてくれたのに、私は助けられない……!」

 リュカ様……第1王子のことだろうか。そこは今触れるところじゃないと思い、カレンの背中を撫でる。
 思っていた以上に細い。きっと食事どころじゃなかったのだろう。

「私……私じゃ助けられない、でも皆、聖女様なら大丈夫って言うんです、私じゃなきゃ、助けられないって……でも、でもどうしたらいいかわからないんです、今はただ、進行を遅くすることしか出来なくて、今も……リュカ様が黒くなっていってて……」

 かたかたと震えてきた。
 果穂の言葉を思い出す。黒くて苦しくなる。精霊が少ない。
 ……カレンが原因?
 いやそんなまさか、それなら第1王子だけではなく、他の王族や学園周りの人も倒れててもおかしくない。

「薬草とか、そういうのじゃなくて……聖女様を探して欲しい、リュカ様を助けて欲しい……このままじゃ、リュカ様も、この国の人達も皆死んでしまう、私だけ、助かってしまう……」
「落ち着いて」
「こわいんです、私、ちょっと怪我とか病気とか治せるだけなんです、なんでも治せる訳じゃないんです、伝説のような、話で聞くようなこと、何も出来ない、あんな、真っ黒に……」
「いいえ、病気や怪我を治せるのは誰でも出来ないわ、実際に貴女は守られてるのでしょう」
「聖女様は1人しか存在しない訳ではないと聞きました、他の国にはいるかもしれない、私、探しに行きたい、でも探しにいけない……」

 元々か細い声が、更に消えるような声になっている。
 カレンが消えてしまいそうで、肩を抱くとわああと泣いてしまった。
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