【完結】幼い義妹が聖女なのは内緒でお願いします

ほんだし

文字の大きさ
61 / 66
2人の聖女様

ろくじゅういち

しおりを挟む
 リュカ様は倒れて動けなくなっていたが、元が自分の力だからだろうか、エリザ様は奇声を発しながらもまだ動いている。
 カレンはそんな、と真っ青になり、どうしましょう……と震えた声で訊いてくる。
 外からはお母様、とルイズ様の声。僕達が見るなと言ったからか、誰かがルイズ様はこちらへと抑えてくれてるようだ。

 果穂はもう参加出来ない。
 僕達でどうにかするしかない。
 大丈夫だ、カレンだって力は戻った。
 ……この部屋に精霊がいるのかわからないけど。

「カレン」
「は、はい……」
「さっき果穂がしたみたいにあの黒いのひっぺがすこと出来るかな」
「……時間が掛かってよければ」

 果穂のお陰で、多分僕達の周りにも精霊は少し残ってると思う。
 けどやはり普段と比べたらこの部屋での魔法は難しいかもしれない。
 カレンの魔法も、先程の果穂と比べたら光が弱い気がする。やはり果穂が異常なのだ。

「……これ、離したらどうしたらいいんでしょう?リュカ様に返したり他に飛ばす訳にはいきませんし……」
「ぎゅっと圧縮してこれに入れられないかな」

 魔力を入れる玉を見せると、壊れたりしないでしょうか、とカレン。
 そうだよな、こんな真っ黒いの、純粋な魔力じゃなさそうだし、どうなってしまうかがわからない。

「ヴア、あ」
「エリザ様!」

 苦しそうな声を上げ、エリザ様が窓の方まで走る。
 まさか、と思った時には遅かった。
 部屋の外から見ていたメイドの悲鳴が上がる。

「エリザ様!」

 ここは3階だった。
 慌てて下を見る。飛び降りた先はただの地面だ。そこには血一滴すら見えない。
 どこに、と視線をやると、よろよろと歩いてるのが見える。

 今から追い掛けて間に合うか。
 いや、見逃してしまうのは困る。

「カレン、飛び降りよう」
「えっ、ここ3階ですよ!?カレン様が大丈夫なようなのは……あの黒いもののお陰かもしれませんが」
「大丈夫、僕も結構練習したんだよね」
「えっ、え……」

 カレンを抱えて、窓枠に足を掛け、そのまま飛び降りる。背後と耳元から悲鳴が聞こえた。
 足元に魔力を込める。
 ルルに教えて貰った剣術、その際に覚えさせられた魔法だ。
 飛んだり跳ねたり剣を振ったりにも躰を強化する魔力がいる。
 これくらいなら多分、耐えられる。

「……っ!」

 カレンを抱えてる分負荷はある。
 どうにか足がびりびりする位ですんだ。もっと筋トレ頑張っとくべきだった。

「大丈夫?」
「っあ、あ」

 カレンに訊くと、ぱくぱくと口を開き、暫くしてからだいじょうぶです……と呟いた。
 説得する暇とかなくてごめん。

「歩ける?大丈夫?」
「は、はい……」
「あっちだ、行こう」

 カレンの手を引いて走る。そこで足音が他にも聞こえるのに気づいた。
 城の外に待っていた3人だった。
 あの騒ぎで入口の見張りもなにもあったものではなく、入ってくるのは簡単だったのだろう。

「叫び声が聞こえたけど!」
「カレンだ、ごめん3階から抱えて飛び降りたから」
「大丈夫ですか!?」
「大丈夫!それより」

 犯人は第2王子の母親だったこと、おかしくなって飛び降りたことを走りながら簡単に説明する。

「って訳で取り敢えず追い掛けてるんだけど!カレンに黒いのをひっぺがして貰ったあとどうするのが正解かな!?燃やす!?」
「……」
「実体がないから倒し方がわからなくて!第1王子は黒いのを離したら元に戻ったっぽいんだけど、エリザ様から離した後どうするのが正解なのかわからなくて!そのまま殺す訳にはいかないし!」
「……精霊はいなかったのよね?」
「果穂が言うには」
「カレン様!」
「はい!」
「第1王子が倒れるまではお城が暗かったりすることはなかったのよね!?」
「……はい!」
「おいあそこだ!」

 答えが出る前にルルが指をさす。
 植木に隠れて黒いものが蠢いていた。
 百花の息を吞む声が聞こえた。

「カレン、またお願い」
「はい!」

 また淡く光る。
 黒いもやはそれを嫌がるかのようにぐねぐねと動く。
 僕等はそれを見てることしか出来ない。

「果穂は寝てるのよね?」
「うん」
「ユート……」
「何か良い案あった?」
「ユートに入れてみたらどうかしらと……思ったのだけど……間違ってたら」
「僕に?」
「悠斗さんに!?」

 脂汗を浮かべながら、カホのようにはっきり見えないから絶対ではないのだけれど、とララが続ける。

「あの黒いものは、精霊を消すか精霊を使って生み出してるものだと思うの、ユートみたいに魔力に精霊を使わない人は聞いた事ないから。……ユートという前例がいる以上、エリザ様がユートと一緒じゃないとは言えない。だからカホがいれば確実だったんだけど」
「僕に入れたら消える……とか?」
「それがわかんないのよ……あんなの見たことないもの……」
「燃やしたりした方が?」
「……やってみる?」

 その言い方が既に無駄そうじゃないか。
 でも実際僕の魔力は少ない。
 果穂もいないことだし、出来るだけ無駄打ちは避けたい。
 百花も魔力は多い方らしいけど、果穂以外から魔力を貰ったことがないから上手くいくかもわからない。

「カレン!それエリザ様から出せたら僕に入れて」
「えっ」

 戸惑うカレンに、大丈夫だから!と言う。
 いや大丈夫なのかどうかとか知らないけど。
 でもそう言わなきゃあんな恐ろしいの入れるような子じゃない。
 大丈夫だ、大丈夫、僕には果穂がついてる。
 何かあれば果穂が助けてくれる。
 ララにルルに百花、カレンもいて、ここは城の中だ、きっと誰かがどうにかしてくれる。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

異世界に落ちたら若返りました。

アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。 夫との2人暮らし。 何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。 そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー 気がついたら知らない場所!? しかもなんかやたらと若返ってない!? なんで!? そんなおばあちゃんのお話です。 更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

異世界に行った、そのあとで。

神宮寺あおい@1/23先視の王女の謀発売
恋愛
新海なつめ三十五歳。 ある日見ず知らずの女子高校生の異世界転移に巻き込まれ、気づけばトルス国へ。 当然彼らが求めているのは聖女である女子高校生だけ。 おまけのような状態で現れたなつめに対しての扱いは散々な中、宰相の協力によって職と居場所を手に入れる。 いたって普通に過ごしていたら、いつのまにか聖女である女子高校生だけでなく王太子や高位貴族の子息たちがこぞって悩み相談をしにくるように。 『私はカウンセラーでも保健室の先生でもありません!』 そう思いつつも生来のお人好しの性格からみんなの悩みごとの相談にのっているうちに、いつの間にか年下の美丈夫に好かれるようになる。 そして、気づけば異世界で求婚されるという本人大混乱の事態に!

【完結】平民聖女の愛と夢

ここ
ファンタジー
ソフィは小さな村で暮らしていた。特技は治癒魔法。ところが、村人のマークの命を救えなかったことにより、村全体から、無視されるようになった。食料もない、お金もない、ソフィは仕方なく旅立った。冒険の旅に。

追放された聖女は旅をする

織人文
ファンタジー
聖女によって国の豊かさが守られる西方世界。 その中の一国、エーリカの聖女が「役立たず」として追放された。 国を出た聖女は、出身地である東方世界の国イーリスに向けて旅を始める――。

異世界召喚された巫女は異世界と引き換えに日本に帰還する

白雪の雫
ファンタジー
何となく思い付いた話なので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合展開です。 聖女として召喚された巫女にして退魔師なヒロインが、今回の召喚に関わった人間を除いた命を使って元の世界へと戻る話です。

処理中です...