60 / 66
2人の聖女様
ろくじゅう
しおりを挟む
「今日って……ど、どうすれば……」
「向こうから仕掛けてくるよ、それを返すだけでいい」
「……?」
「取り敢えず休もう、カレン顔色が大分やばい」
「私は大丈夫です」
「僕達もいるから大丈夫だよ、寝なくてもいいから、力を抜いてゆっくりしよう」
「でも、でも……」
「カレンが倒れたらリュカ様も責任を感じるよ、大丈夫、ね」
「……はい」
薄暗い部屋の中、果穂は怖がるかと思ったが大人しくしてくれてる。
自分で言い出したことでもある。果穂なりに考えるところもあるのだろう。
「……すみません、私……役に……立てなくて」
「そんなことない、カレンが居たからお城にも入れたんだよ」
「……ひとりじゃなんにもできなくて……皆さんがいてくれて、良かった……」
「そのお礼は全部済んだ後に取っとこう、大丈夫、こう見えて僕も……魔力は低いけど、ぶっ壊す系の魔法はそこそこ出来るんだよ!」
「……それはいざとなった時……ですか?」
「そう」
「ふふ」
「大丈夫、どうにかなるよ、精霊様が大丈夫って言ってるんだ、リュカ様も元気になる」
「はい……」
カレンが笑ってくれた。
それを見た果穂が僕を見上げてにこっと笑う。
そうだな、果穂が頑張ってくれてるお陰だ。もうちょっと、頑張ろうな。
数時間経ったが動きがない。
おかしいな、あんだけきめといて読みを外すの格好悪いじゃないか。
もしかしてまだじわじわ殺すつもりなんだろうか?
それなら少し焦らせるのもありかもしれない。
「焦らせるとは……?」
「最初にリュカ様治そうとした時に、果穂がばれちゃうから、って止めたでしょ」
「はい……」
「果穂に少しだけ魔法を掛けてもらおう、向こうは治されたら困るから焦る筈」
そして向こうが焦れば焦る程想定していたプラン通りにはいかなくなるだろう。
墓穴を掘ってくれるなら掘ってくれた方がいい。
「ちょっとだぞ、完全に治したら逃げられちゃうからな、ちょっと」
「うん!」
まかせて、とベッドによじ登り、リュカ様に向かって細い腕を伸ばす。
薄暗い部屋に、淡い光が広がる。重い空気の中、その光はとてもあたたかく感じた。
純粋に綺麗だな、と思った。これが果穂の力。
「……!」
真っ黒になっていた肌が薄くなった。
すごい!と思ったが、そんな場合ではない、慌てて果穂にそれくらいで……と止めに入る。
「すごい……本当に……リュカ様、治せるんですね……?」
「すぐに治せなくてごめんね」
「いいえ……いいえ、大丈夫です、わかります、ちゃんと終わらせないといけないからって……大丈夫です、治るってわかったから、だから……安心しちゃって」
「もう少しだけ、がんばろ」
「はい……!」
カレンが笑顔で立ち上がった瞬間だった。
ぶわっと黒い煙が立ち込める。
カレンがよろけたのを支えて、来たぞ、と構える。
やはり果穂の力を察知したようだ。
「果穂、出来るか!?」
「だいじょーぶ!」
部屋中の黒いものが一点に集まり、光に包まれる。一気に空気が軽くなり、部屋は明るくなり、リュカ様の様子がかわった。
一瞬だった。
一瞬だけ、綺麗な人が見えた。
……これが精霊様なんだろうか。
「果穂!」
「カホさん!」
ふら、と小さな躰がベッドに倒れた。
どうしようどうしようと慌てるカレンに多分大丈夫だと伝える。
薔薇園で初めてカレンに会った時、気持ち悪いと寝てしまった時と、多分同じだ。
あの黒いものに触れてしまったことによるものだろう。
寝息は穏やかだ、きっとまた暫く眠り続けるが支障はないだろう。
「リュカ様……」
「見た感じはよくなってるけど……どう?」
「どう、とは」
「カレンも力、戻ってない?」
「……!」
思い出したようにカレンはリュカ様に触れた。
果穂の時のように淡い光が、リュカ様を包む。
どうやらカレンの力も戻ってきたようだ。
「良かった……良かった!」
リュカ様に覆い被さるようにしてカレンが涙を零す。
良かった、これで終わった。と思った。
そんな訳はない。
扉をどんどんと強く叩かれ、カレン様、カレン様、と呼ぶ声がする。
ルイズ様の声だ。
カレンが扉を開けると、廊下も明るい。
城全体の暗い空気がなくなってる。やっぱり果穂はすごい子だった。
「ルイズ様!リュカ様が!」
「カレン様、お母様が!」
その瞬間、やばいことになったと思った。
果穂は本当に『返した』んだ。
あの呪いのようなものは消えたんじゃない。
この城に覆っていたものと、リュカ様、カレンに纏っていたものが全て『返った』。
人を呪わば穴二つ、呪い返しのように、本人の元へ。
自業自得だ、第1王子を殺そうとし、医師達を殺した。
赦されるものではない。
ただ見殺しに出来る程僕達の肝も座ってなかった。
心配だったが、いざとなれば精霊様がどうにか守ってくれる筈だと果穂とリュカ様を残し、エリザ様の部屋へ走った。
エリザ様の部屋の前は既に人集りが出来ていた。
中からすごい声が上がっている。
カレンと通して下さい、と無理矢理割り込み、部屋に入り、絶句する。
真っ黒になったエリザ様が酷い声を出しながらのたうち回っていた。
思わず、ルイズ様は見るな、と声を出してしまった。
「向こうから仕掛けてくるよ、それを返すだけでいい」
「……?」
「取り敢えず休もう、カレン顔色が大分やばい」
「私は大丈夫です」
「僕達もいるから大丈夫だよ、寝なくてもいいから、力を抜いてゆっくりしよう」
「でも、でも……」
「カレンが倒れたらリュカ様も責任を感じるよ、大丈夫、ね」
「……はい」
薄暗い部屋の中、果穂は怖がるかと思ったが大人しくしてくれてる。
自分で言い出したことでもある。果穂なりに考えるところもあるのだろう。
「……すみません、私……役に……立てなくて」
「そんなことない、カレンが居たからお城にも入れたんだよ」
「……ひとりじゃなんにもできなくて……皆さんがいてくれて、良かった……」
「そのお礼は全部済んだ後に取っとこう、大丈夫、こう見えて僕も……魔力は低いけど、ぶっ壊す系の魔法はそこそこ出来るんだよ!」
「……それはいざとなった時……ですか?」
「そう」
「ふふ」
「大丈夫、どうにかなるよ、精霊様が大丈夫って言ってるんだ、リュカ様も元気になる」
「はい……」
カレンが笑ってくれた。
それを見た果穂が僕を見上げてにこっと笑う。
そうだな、果穂が頑張ってくれてるお陰だ。もうちょっと、頑張ろうな。
数時間経ったが動きがない。
おかしいな、あんだけきめといて読みを外すの格好悪いじゃないか。
もしかしてまだじわじわ殺すつもりなんだろうか?
それなら少し焦らせるのもありかもしれない。
「焦らせるとは……?」
「最初にリュカ様治そうとした時に、果穂がばれちゃうから、って止めたでしょ」
「はい……」
「果穂に少しだけ魔法を掛けてもらおう、向こうは治されたら困るから焦る筈」
そして向こうが焦れば焦る程想定していたプラン通りにはいかなくなるだろう。
墓穴を掘ってくれるなら掘ってくれた方がいい。
「ちょっとだぞ、完全に治したら逃げられちゃうからな、ちょっと」
「うん!」
まかせて、とベッドによじ登り、リュカ様に向かって細い腕を伸ばす。
薄暗い部屋に、淡い光が広がる。重い空気の中、その光はとてもあたたかく感じた。
純粋に綺麗だな、と思った。これが果穂の力。
「……!」
真っ黒になっていた肌が薄くなった。
すごい!と思ったが、そんな場合ではない、慌てて果穂にそれくらいで……と止めに入る。
「すごい……本当に……リュカ様、治せるんですね……?」
「すぐに治せなくてごめんね」
「いいえ……いいえ、大丈夫です、わかります、ちゃんと終わらせないといけないからって……大丈夫です、治るってわかったから、だから……安心しちゃって」
「もう少しだけ、がんばろ」
「はい……!」
カレンが笑顔で立ち上がった瞬間だった。
ぶわっと黒い煙が立ち込める。
カレンがよろけたのを支えて、来たぞ、と構える。
やはり果穂の力を察知したようだ。
「果穂、出来るか!?」
「だいじょーぶ!」
部屋中の黒いものが一点に集まり、光に包まれる。一気に空気が軽くなり、部屋は明るくなり、リュカ様の様子がかわった。
一瞬だった。
一瞬だけ、綺麗な人が見えた。
……これが精霊様なんだろうか。
「果穂!」
「カホさん!」
ふら、と小さな躰がベッドに倒れた。
どうしようどうしようと慌てるカレンに多分大丈夫だと伝える。
薔薇園で初めてカレンに会った時、気持ち悪いと寝てしまった時と、多分同じだ。
あの黒いものに触れてしまったことによるものだろう。
寝息は穏やかだ、きっとまた暫く眠り続けるが支障はないだろう。
「リュカ様……」
「見た感じはよくなってるけど……どう?」
「どう、とは」
「カレンも力、戻ってない?」
「……!」
思い出したようにカレンはリュカ様に触れた。
果穂の時のように淡い光が、リュカ様を包む。
どうやらカレンの力も戻ってきたようだ。
「良かった……良かった!」
リュカ様に覆い被さるようにしてカレンが涙を零す。
良かった、これで終わった。と思った。
そんな訳はない。
扉をどんどんと強く叩かれ、カレン様、カレン様、と呼ぶ声がする。
ルイズ様の声だ。
カレンが扉を開けると、廊下も明るい。
城全体の暗い空気がなくなってる。やっぱり果穂はすごい子だった。
「ルイズ様!リュカ様が!」
「カレン様、お母様が!」
その瞬間、やばいことになったと思った。
果穂は本当に『返した』んだ。
あの呪いのようなものは消えたんじゃない。
この城に覆っていたものと、リュカ様、カレンに纏っていたものが全て『返った』。
人を呪わば穴二つ、呪い返しのように、本人の元へ。
自業自得だ、第1王子を殺そうとし、医師達を殺した。
赦されるものではない。
ただ見殺しに出来る程僕達の肝も座ってなかった。
心配だったが、いざとなれば精霊様がどうにか守ってくれる筈だと果穂とリュカ様を残し、エリザ様の部屋へ走った。
エリザ様の部屋の前は既に人集りが出来ていた。
中からすごい声が上がっている。
カレンと通して下さい、と無理矢理割り込み、部屋に入り、絶句する。
真っ黒になったエリザ様が酷い声を出しながらのたうち回っていた。
思わず、ルイズ様は見るな、と声を出してしまった。
0
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
異世界に落ちたら若返りました。
アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。
夫との2人暮らし。
何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。
そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー
気がついたら知らない場所!?
しかもなんかやたらと若返ってない!?
なんで!?
そんなおばあちゃんのお話です。
更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
異世界に行った、そのあとで。
神宮寺あおい@1/23先視の王女の謀発売
恋愛
新海なつめ三十五歳。
ある日見ず知らずの女子高校生の異世界転移に巻き込まれ、気づけばトルス国へ。
当然彼らが求めているのは聖女である女子高校生だけ。
おまけのような状態で現れたなつめに対しての扱いは散々な中、宰相の協力によって職と居場所を手に入れる。
いたって普通に過ごしていたら、いつのまにか聖女である女子高校生だけでなく王太子や高位貴族の子息たちがこぞって悩み相談をしにくるように。
『私はカウンセラーでも保健室の先生でもありません!』
そう思いつつも生来のお人好しの性格からみんなの悩みごとの相談にのっているうちに、いつの間にか年下の美丈夫に好かれるようになる。
そして、気づけば異世界で求婚されるという本人大混乱の事態に!
【完結】平民聖女の愛と夢
ここ
ファンタジー
ソフィは小さな村で暮らしていた。特技は治癒魔法。ところが、村人のマークの命を救えなかったことにより、村全体から、無視されるようになった。食料もない、お金もない、ソフィは仕方なく旅立った。冒険の旅に。
追放された聖女は旅をする
織人文
ファンタジー
聖女によって国の豊かさが守られる西方世界。
その中の一国、エーリカの聖女が「役立たず」として追放された。
国を出た聖女は、出身地である東方世界の国イーリスに向けて旅を始める――。
異世界召喚された巫女は異世界と引き換えに日本に帰還する
白雪の雫
ファンタジー
何となく思い付いた話なので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合展開です。
聖女として召喚された巫女にして退魔師なヒロインが、今回の召喚に関わった人間を除いた命を使って元の世界へと戻る話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる