それはすべてが曖昧で

ricoooo

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嘘と本当と約束と

マイルドな君と その4

カフェを出て駅に向かって行く途中で、千葉は立ち止まった。
「あの、光希さんの連絡先知ってる?」
『言うと思った。誘ってみる?』
光希にも聞いてもらいたいなと千葉が呟いていたのを僕は聞き漏らさなかった。

そうして30分後。
僕と千葉が本日二杯目のコーヒーを飲んでいるところに、呼ばれた光希とそれに付き添ってきた司が現れた。
「な、なんで司くんが!」思わず千葉は僕の腕を掴み小声で必死に訴えてきた。
『電車で会ったんだろ』
そう言うしかなかった。
「桃佳ちゃんお疲れ様ー!スカート似合ってるね可愛い」流れるように言うので本心で言っているのかは僕には分からなかった。
でも、千葉の顔は明らかに赤く染まっていた。

そして4人並びでデザートを囲んだ。
「本当にいいの?光希さん私たちだけで食べちゃって……」
「いいの。仕事終わりにすごく食べちゃって」
4人分注文して僕と司で光希の分を食べることにした。
『今日は千葉の話を聞いてもらいたいと思います』
「え?桃佳ちゃんの話?」司は背筋を伸ばした。
「あっ………えっと………好きな人がいて」
「そうなんだ」光希は初耳と言わんばかりに目を大きく開いた。
司は僕に視線を送ってきた。
「でも全く届いてなくて。その人から誤解されてるし」
「同じ大学にいるって聞いたけど………ほんと?」司は千葉に尋ねた。
千葉は黙って頷く。
「気付いてもらうってどうすればいいかな」
そこで光希は何かに気が付いたかのように僕を見つめた。
「そうだなぁ、桃佳ちゃんに好意向けられて気が付かない男なんている?」
お前だよ、と僕はツッコミを入れたくなった。
「いるんだよね。それが」千葉は少し苦笑いを浮かべながら呟いた。
「だったら気がつくように行動だよね。ソイツと飯行くとか」
千葉はそれを聞くとスッと深呼吸をした。
「じゃぁ司くん。この後ひま?いきたいカフェまだまだあるんだけど」
「え?あ!練習?いいよ行こう」
「練習じゃなくて本番」

2人と別れた僕は、電車の座席に座ると小さく背伸びをした。
「わたしずっと桃佳ちゃんは藤吾かと思ってた」
『みんなそう言うけど、千葉はずっと司だったんだよ』
「そうだったんだ」
『司への視線を周りが僕への視線と勘違いしてたから。千葉が否定しない限り僕も否定できないし』
「優しいんだね」
『そう?普通だろ』
「………藤吾なら信じてもいいかな」
『?なに光希』
光希は僕の顔に近付くと、そっと唇を重ねてきた。
一瞬、時が止まった気がした。



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