捨てられた貴族六男、ハズレギフト『家電量販店』で僻地を悠々開拓する。~魔改造し放題の家電を使って、廃れた土地で建国目指します~

荒井竜馬@書籍発売中

文字の大きさ
34 / 57

第34話 先行投資

しおりを挟む
「メビウス殿。あの二人は何者なのですか?」

俺が突然舞い降りたビックチャンスに気合を入れ直していると、エミーさんの部下の一人が声を潜めてそんなことを聞いてきた。

俺は質問の意味が分からず首を傾げる。

「といいますと?」

 すると、エミーさんの部下二人は顔を見合わせてから各々続ける。

「普通のメイドがあんな殺気出せませんよ。元凄腕の冒険者とかですか?」

「俺本気でブルっちゃいましたもん」

 俺は二人の言葉を聞いて、申し訳なさと気まずさを覚えてふいっと視線を逸らす。

 ……国家騎士団が怖がるくらい殺気を出してたのか、あの二人。

 俺はそんなことを考えながら、ふとよく見るテンプレ展開を思い出す。

 そういえば、領地経営のテンプレ展開だとよく元最強冒険者みたいな人いるよなぁ。こんなことを聞いてくるということは、この世界でも僻地に飛ばされた子供に凄腕の冒険者が付いてくるのが普通なのか?

「えーと、詳しくは俺も分からないですね。滅茶苦茶強いってことくらいしか、知らないんですよ」

 さすがに、元はペッハー君だったことなんて言えないだろう。俺のギフトを詳しく知らない人からしたら、人体錬成とかと間違われそうだし。

「なるほど、一言で言い表せないくらいの猛者ということか」

「い、いえ、そういう訳ではなくてですね」

 すると、俺の言葉を聞いたエミーさんが勝手に勘違いをして解釈をしてしまった。訂正しようとしても、『元国家騎士……いや、傭兵や裏ギルドの者だった線も……』などと言って、一人で考えこんでしまって、俺の声が中々届かない。

 どうしよう。エミーさんの中で、アリスとカグヤの経歴が凄いことになっていっている気がする。

「旦那様! 冷えている野菜をいくつかお持ちしました!」

「ご主人様、アレを持ってきたよ!」

 すると、アリスとカグヤが小走りで俺たちのいる家具売り場に戻ってきた。

 そして、二人が帰ってくると、エミーさんたちの背筋が少し伸びたような気がした。

 ……なんかさっきよりもエミーさんたちの表情が硬くなってる気もするな。

 アリスとカグヤは全くそのことに気づいていないのか、さっきと変わらない様子でテーブルの上にカットされた状態の野菜と、箱に入っている酒の瓶とチョコレートを置いた。

「え、なんですかこの新鮮な野菜は!」

「これが、『死地』で採れた野菜?」

 エミーさんの部下二人はアリスに出されたカットした色鮮やかな野菜を見て、目を見開いていた。

「頂いていいんだね?」

「もちろんです。どうぞ」

「おいしい。瑞々しく、ジューシーで甘みもある。な、なんだこの野菜は?」

「エミーさんが今食べたのは、トマタですね」

「トマタ? いや、そんなことはないだろう。確かに、見た目は似ているが、旨味がまるで違うぞ」

 エミーさんは俺の言葉が信じれらなかったのか、眉を寄せてカットされている他のトマタを見つめていた。

 すると、エミーさんの様子を見ていた部下の二人も同じようにトマタを口に運んでいく。

「うまっ! 何だこの野菜!」

「これ、グラン大国の貴族間でも出回らないくらいの旨さじゃないすか⁉」

 部下の二人はよほど感動したらしく、皿に盛られたカット野菜をかきこむように食べいた。

 ドレッシングも何もかけていないのに、そんなにがっついてくれるとは……よほど美味かったんだな。

 俺はそんな二人の反応を見て笑み浮かべながら続ける。

「あとは、こっちにお酒と甘味を用意しました。グラン大国への献上品として、お受け取りいただけますか? 少量ですが、皆様の分もあるので」

 俺はその流れに乗るように、カグヤが持ってきてくれた酒とチョコレートをすっとエミーさんたちの方に差し出す。

 すると、エミーさんはそれらに視線を落とした後、じっと真剣な眼差しを俺に向けてきた。

「……もちろん、タダで土産をくれるという訳ではないのだろう?」

 エミーさんの言葉を聞いて、カットされた野菜を掻きこんでいた二人の手がぴたりと止まった。

 どうやら、エミーさんにはこちらの考えが初めからバレていたみたいだ。

 俺は小さく息を吐いてから、言葉を続ける。

「将来的なお話をすると、グラン大国に『死地』が国であるということを認めて欲しいんです。大きな後ろ盾が欲しい。でも、メリットがないとそんなことはしていただけないでしょう」

「まぁ、当然そうなるだろうな」

 エミーさんはそう言うと、俺の言葉に小さく頷く。

 国を作ろうとしてはいるが、今はただ内々で話が動いているだけだ。タダ自称しているだけの状態と言ってもいいだろう。

 だから、それを他の国に認めてもらう必要がある。そして、それはできれば隣国の中でも権力が大きな国がいい。

 その条件に一番合うのが、グラン大国なのだ。

 俺はエミーさんがじっと話を聞いてくれているのを見て、話しを続ける。

「ですので、今は我々と貿易をすれば良い物が手に入るというメリットを提示しているだけです。お土産に色々と詰めていくので、今回は後ろ盾をするに値するかの判断材料にしていただきたいんです。後ろ盾をするのは難しくても、貿易関係だけ続けたいというだけでも構いません」

「……なるほど。先行投資という訳か」

 エミーさんは合点がいったのか、大きく頷いてから箱入りの酒を手に取ったり、チョコレートをしばらく観察してから短く息を吐いた。

「分かった。何とか話はつけてみよう」

「本当ですか! ありがとうございます!」

「でも、期待はしないでくれ。あくまで、報告をするときの資料の一つとして王国に提出するだけだからな。副団長の権力はそんなにないんだよ」

 エミーさんはそう言うと、仕方なしと言った様子で笑みを浮かべた。

 こうして、初めての他国との接触は案外悪くない感じで終わることになったのだった。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。

「雑草係」と追放された俺、スキル『草むしり』でドラゴンも魔王も引っこ抜く~極めた園芸スキルは、世界樹すら苗木扱いする神の力でした~

eringi
ファンタジー
「たかが雑草を抜くだけのスキルなんて、勇者パーティには不要だ!」 王立アカデミーを首席で卒業したものの、発現したスキルが『草むしり』だった少年・ノエル。 彼は幼馴染の勇者に見下され、パーティから追放されてしまう。 失意のノエルは、人里離れた「魔の森」で静かに暮らすことを決意する。 しかし彼は知らなかった。彼のスキル『草むしり』は、対象を「不要な雑草」と認識すれば、たとえドラゴンであろうと古代兵器であろうと、根こそぎ引っこ抜いて消滅させる即死チートだったのだ。 「あれ? この森の雑草、ずいぶん頑丈だな(ドラゴンを引っこ抜きながら)」 ノエルが庭の手入れをするだけで、Sランク魔物が次々と「除草」され、やがて森は伝説の聖域へと生まれ変わっていく。 その実力に惹かれ、森の精霊(美女)や、亡国の女騎士、魔王の娘までもが彼の「庭」に集まり、いつしかハーレム状態に。 一方、ノエルを追放した勇者たちは、ダンジョンの茨や毒草の処理ができずに進行不能となり、さらにはノエルが密かに「除草」していた強力な魔物たちに囲まれ、絶望の淵に立たされていた。 「ノエル! 戻ってきてくれ!」 「いや、いま家庭菜園が忙しいんで」 これは、ただ庭いじりをしているだけの少年が、無自覚に世界最強に至る物語。

異世界転生した俺は、産まれながらに最強だった。

桜花龍炎舞
ファンタジー
主人公ミツルはある日、不慮の事故にあい死んでしまった。 だが目がさめると見知らぬ美形の男と見知らぬ美女が目の前にいて、ミツル自身の身体も見知らぬ美形の子供に変わっていた。 そして更に、恐らく転生したであろうこの場所は剣や魔法が行き交うゲームの世界とも思える異世界だったのである。 異世界転生 × 最強 × ギャグ × 仲間。 チートすぎる俺が、神様より自由に世界をぶっ壊す!? “真面目な展開ゼロ”の爽快異世界バカ旅、始動!

『ゴミ掃除』が役立たずと追放されたが、実は『存在抹消』級のチートだった。勇者一行がゴミで溺れているが、俺は辺境で美少女と温泉宿を経営中なので

eringi
ファンタジー
「悪いが、お前のスキル『ゴミ掃除』は魔王討伐の役には立たない。クビだ」 勇者パーティの雑用係だったアレクは、戦闘の役に立たないという理由で、ダンジョンの最深部手前で追放されてしまう。 しかし、勇者たちは気づいていなかった。 彼らの装備が常に新品同様だったのも、野営地が快適だったのも、襲い来る高レベルモンスターの死体が跡形もなく消えていたのも、すべてアレクが『掃除』していたからだということに。 アレクのスキルは単なる掃除ではない。対象を空間ごと削り取る『存在抹消』レベルの規格外チートだったのだ。 一人になったアレクは、気ままに生こうと辺境の廃村にたどり着く。 そこでボロボロになっていた伝説のフェンリル(美少女化)を『洗浄』して懐かれたり、呪われたエルフの姫君を『シミ抜き』して救ったりしているうちに、いつの間にかそこは世界最高峰の温泉宿になっていて……? 一方、アレクを失った勇者パーティは、武器は錆びつき、悪臭にまみれ、雑魚モンスターの処理すら追いつかず破滅の一途をたどっていた。 「今さら戻ってきてくれと言われても、俺はお客さん(美少女)の背中を流すのに忙しいんで」 これは、掃除屋の少年が無自覚に最強の座に君臨し、幸せなスローライフを送る物語。

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

転生無双なんて大層なこと、できるわけないでしょう! 公爵令息が家族、友達、精霊と送る仲良しスローライフ

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
アルファポリス様より書籍化! 転生したラインハルトはその際に超説明が適当な女神から、訳も分からず、チートスキルをもらう。 どこに転生するか、どんなスキルを貰ったのか、どんな身分に転生したのか全てを分からず転生したラインハルトが平和な?日常生活を送る話。 - カクヨム様にて、週間総合ランキングにランクインしました! - アルファポリス様にて、人気ランキング、HOTランキングにランクインしました! - この話はフィクションです。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

ありふれた話 ~追放された錬金術師は、神スキル【物質創造】で辺境に楽園を築きます。今さら戻ってこいと言われても以下略

ゆきむらちひろ
ファンタジー
「追放」「ざまぁ」「実は最強」「生産チート」「スローライフ」「可愛いヒロイン」などなど、どこかで見たことがあるような設定を山盛りにして、ゆきむら的に書き殴っていく異世界ファンタジー。 ■あらすじ 勇者パーティーで雑用兼ポーション生成係を務めていた錬金術師・アルト。 彼は勇者から「お前のスキルはもう限界だ。足手まといだ」と無一文で追放されてしまう。 失意のまま辺境の寂れた村に流れ着いたアルトだったが、 そこで自身のスキル【アイテム・クリエーション】が、 実はただのアイテム作成ではなく、 物質の構造を自在に組み替える神の御業【物質創造】であることに気づく。 それ以降、彼はその力で不毛の土地を肥沃な農地に変え、 枯れた川に清流を呼び戻し、 村人たちのために快適な家や温泉まで作り出していく。 さらに呪いに苦しむエルフの美少女を救い、 お人好しな商人、訳ありな獣人、腕利きのドワーフなどを取り入れ、 アルトは辺境を活気あふれる理想郷にしようと奮闘する。 一方、アルトを追放した勇者パーティーは、なぜかその活躍に陰りが見えてきて……。  ―・―・―・―・―・―・―・― タイトルを全部書くなら、 『追放された錬金術師は、神スキル【物質創造】で辺境に楽園を築きます ~今さら戻ってこいと泣きつかれても、もう遅い。周りには僕を信じてくれる仲間がいるので~』という感じ。ありそう。 ※「小説家になろう」「カクヨム」「アルファポリス」に同内容のものを投稿しています。 ※この作品以外にもいろいろと小説を投稿しています。よろしければそちらもご覧ください。

処理中です...