捨てられた貴族六男、ハズレギフト『家電量販店』で僻地を悠々開拓する。~魔改造し放題の家電を使って、廃れた土地で建国目指します~

荒井竜馬@書籍発売中

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第42話 税金の会議

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「それじゃあ、第一回税金の会議を始めます」

 そして、グラン大国との貿易を終えた俺たちは、さっそく次の問題をどうするか考えるために会議をすることにした。

 いつもの家具コーナーにあるテーブルを囲んで、俺とアリスとカグヤ、そしてラインさんのメンバーで税金について話し合うことにした。

「あのー、本当に俺がここにいてもいいんでしょうか?」

 すると、ラインさんが遠慮気味に手を上げてそう言った。

 まぁ、俺たちが三人というのに対して、ラインさん一人という構図は肩身が狭いかもしれない。

 それでも、まだ税金について決まっていないというのが他の人たちにバレるのは避けたい。

 あんまりだらしない所とかは見せない方がいいでしょ。流れ的に、なんか俺が『死地』の長みたいな感じになってるし。

「本当は色々決まってから通達って言うのがいいんでしょうけど、ラインさんには他の人たちの代表として会議に参加して欲しいんです。アストロメア家での税金や理想的な税率とかについて、実際に領地で生活していた人の意見が聞きたいです」

 何よりも、俺だけで決めたら後から不満が出る恐れがある。互いのためにも、ある程度はオープンな関係でいないと。

 それに、ラインさんたちはアストロメア家の領地にいたとき、その増税に耐えかねて出てきている。

 色々と決める前に彼らが求めることなんかを把握しておいた方がいい。ここを出ていかれたら、俺たちだけじゃどうしようもなくなってしまうしね。

 俺がそう考えて言うと、ラインさんたちは目元をぐっと抑えた。

「そ、そこまで考えてくださっていたとは……分かりました。そう言うことでしたら、全力で参加をさせていただきます!」

「う、うん。ほどほどにお願いね」

 ラインさんはスイッチが入ったのか、前のめりになって座り直した。俺は少しだけ気圧されながらも咳ばらいを一つする。

「それじゃあ、話し合いを始めようか。初めに、アストロメア家の領地にいた頃の税金はどんな感じだったの?」

 すると、ラインさんは思い出すように腕を組みながら続ける。

「ええっと、農家はその年に採れた農作物の収益の半分を所得税、農地の使用と公共の道の使用料として残った収入の半分のうち1/3、特別徴収の税が残りの額から……」

「あ、あのっ、それって生活できていたんですか?」

 俺はあまりにもすらすらと出てきた税金の多さと重さを聞いて、思わず食い気味にそう言ってしまった。

 ラインさんは気まずそうに頬をかいて、俺から視線を逸らす。

「人間らしい生活をするのは、結構大変でしたね。その結果、耐えられずに逃げてきたんですよ」

「な、なるほど。でも、よくそれで領民から反発がなかったですね……ん? あ、『死地』から近いアストロメア家の領地というと、領主はラキスト兄さんか」

 俺はそこまでラインさんの話を聞いたところで、ラインさんたちの元領主の存在を思い出した。

 アストロメア家の次男、ラキスト。ラキストは『調教』のギフトを持っており、そのギフトを活かして領民から多くの税を徴収している。

 おそらく、より多くの税を巻き上げる手腕は、歴代のアストロメア家の中でもトップクラスと言えるだろう。

 ……あくまで、方法を選ばないのならということを前提にしてだが。

 すると、ラインさんが顔を伏せたまま続ける。

「領主としては飴と鞭の使い方が上手い方でした。働き甲斐と言うのを掲げたり、同調圧力で支配したりと……はっ! すみません、何でもないです! メビウス様のお兄様でしたよね!」

 ラインさんは途中でバット顔を上げて、慌てて言葉を訂正した。

 おそらく、兄のことを悪く言われることを良く思わないと思ったのだろう。

 俺はラインさんの言葉に首を横に振る。一般的な兄弟ならまだしも、俺はあの家から捨てられた人間だ。

 今さらラキストのことだって好いている訳ではないし、悪く言われて心を害することなんかない。

「いえ、言ってくれて大丈夫ですよ。あのやり方は私も好きじゃありませんから」

「そ、そうですか。そうですよね、メビウス様はあの方とはまるで違いますし」

 ラインさんはそう言うと、どこか安心したように胸をなでおろした。

 俺は少し落ち着いたようなラインさんをまっすぐ見て続ける。

「ラインさん。それでは、もう少し詳しくラキスト兄さんが領主だったころの税金を教えてもらえますか?」

「はい、もちろんです! えっと、他にもいくつか税金がありましてーー」



 それから、俺たちはラインさんから、ラキスト兄さんが領主をしている領地での税について詳しく聞いた。

 それらの内容はカグヤがタブレットでまとめてくれおり、今はアリスが運んできてくれた液晶にその詳細が映し出されていた。

「これは凄いな……」

 液晶に映し出されていたのは、目に見えないような形で何重にも税金が掛けられ、手元には僅かしかお金が残らないといった悲惨な領民の給料事情だった。

これって、『調教』のギフトがあっても結構ギリギリなんじゃないか?

 俺がそう考えていると、アリスが俺の方をとんとんっと突いてきた。

「あの、旦那様。領地を治める場合って、普通はこんなに税金をかけるものなんですか?」

「違う違う。典型的な悪役貴族のやり方だ。『調教』のギフトがなければ、絶対に無理だろうな」

 俺が食い気味に手をブンブンと横に振ると、それを見ていたラインさんが気まずそうに俺たちから視線を逸らした。

 すると、しばらくタブレットを見つめていたカグヤがふぅとため息を漏らす。

「とにかく税を取ることだけに特化してるね。これ、参考になるのかな?」

「ここから多く取ってる物を引いていけばいいんじゃないかな? ええっと、とりあえず、所得税と農地関連の税以外を引いてみて」

 俺が液晶を見ながらカグヤに言うと、カグヤはまとめて他の税を一括削除した。自分と見やすくなった税を見て俺はふむと頷く。

「うん。税としてはとりあえず、こんなものでしょ」

「え⁉ いいのですか?」

 俺がそう言うと、ラインは目を見開いてガタッと音を立てて椅子から立ち上がった。

 俺は思ってもいなかったラインの反応に驚きながら続ける。

「まぁ、今は道の整備とかもしてないので、かける税金もないかと」

「いやいや! 水道にベッドや水洗トイレ、警備用の発明品の数々……さすがに、これだけ住みやすい環境を整備していただいて、食事までずっと恵んでいただいていて、それだけの税金なんておかしいじゃありませんか!!」

「ラインさん?」

 ラインさんは急にスイッチが入ったみたいで、テーブルに前のめりになりながら熱弁を続ける。

「メビウス様! 失礼を承知で申し上げますが、お兄様の領地での税金の方が高くて悪い環境なのに、そこよりも馬鹿みたいに税金が安くて、いい暮らしができるなんておかしいです!」

「いや、それはラキスト兄さんの所がおかしかっただけでーー」

「はっ! そうだ、メビウス様は我々を助けてくれたときも、『あ、礼とかは大丈夫なんで』とか、『お金の心配はしないでください』と言っていた……きっと、慈悲深過ぎる人なんだ! きっと、自分のことを顧みないで私たちのためだけに、税を軽くしようとしているんだ。このままでは、建国どころでは……はっ!」

 ラインさんは俺の言葉が聞こえないのか、何も言っていないのにドンドンと自分の世界に入っていってしまった。

 それから、ラインさんは妙案を思いつたかのように顔を上げると、拳を突き上げた。

「増税だ! 増税を要求します!!」

「い、いや、ラインさん。そっち側が増税を要求するのは違う気が……」

 そんなこんなで、謎のスイッチが入ったラインさんを止めることができず、他にもいくつか税が追加されてしまった。

 それでも、ラキストの領地と比べるとあまりにも税金が軽すぎたみたいだった。

 そして、その後に貿易で得たお金の配分をラインさんと決め、第一回税金会議は幕を閉じたのだった。



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