捨てられた貴族六男、ハズレギフト『家電量販店』で僻地を悠々開拓する。~魔改造し放題の家電を使って、廃れた土地で建国目指します~

荒井竜馬@書籍発売中

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第55話 『家電量販店』の本当の力

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 辺りには『仮設中』というのぼりや垂れ幕があり、乱雑に家電が散らばっていた。

「な、なんだ、ここは……メビウス、何をしやがった!」

 俺はラキスト兄さんに睨まれながら、辺りを見渡す。

 確かに、ここは『家電量販店』そのものだ。でも、俺がいつもいる家電量販店とは別物にしか見えない。

 俺がいつも暮らしている家電量販店はもっと片付いているし、フロアの数自体違う。

 そもそも、『仮設中』とか、『仕様変更実験中』というのぼりや垂れ幕は何を意味しているんだ?

 俺が眉をひそめていると、ウィンスが刀を鞘から引き抜いて切っ先を俺に向けてきた。

「ラキスト様。こいつ、喋る気がないみたいなので、無理やり吐かせてもいいですか?」

「ウィンス。そうだな。おまえに任せるとしよう」

 ラキスト兄さんが笑いながらそう言うと、ウィンスは剣を持っている手に力を入れる。

「おまえが何をしたのか分からないが、師匠の俺に勝てるはずがない」

 それから、ウィンスは俺を強く睨むようにして剣を振り上げた。

「おまえのせいで、俺の評価もだだ下がりだ! 貴様の首をはねて、ダーティ様に献上させてもらう!」

 そして、ウィンスは力いっぱいに剣を振り下ろしてきた。俺はお掃除ロボットに乗った状態で後退する。

 ガギィンッ!

 すると、俺の近くを飛んでいたお掃除ロボットがウィンスの一撃を盾のように防いだ。それから、鉄筒をウィンスの方に向けてウィンスに射撃をした。

「くっ! 小癪な!」

 ウィンスはお掃除ロボットの一撃を剣で弾いて、後退した。

 俺はそんなお掃除ロボットの働きに感心して思わず声を漏らす。

「さすが、お掃除ロボット。おれがゴミだと思うものはお掃除してくれるみたいだ」

「ゴミだと! 貴様、師匠の俺に向かってなんて口の利き方だ!」

 ウィンスは顔を真っ赤にしてそう言うと、また距離を詰めて俺に剣を振り下ろそうとしてきた。

 ヤバい、何とかしないと!

 俺は咄嗟にサブマシンのエアガンを構えようとして、ピタッとその手を止めた。

 さすがに、ここでウィンスをハチの巣にするのは気が引ける。というか、貴族の護衛を撃ち殺してしまったら、何かとマズい気がする。

 他にウィンスを制圧する方法はないか。俺はそう考えて、辺りに転がっている家電の中から現状を打開できそうな家電を探す。

「これだ!」

 俺はウィンスが剣を振り下ろすよりも早く拾った掃除機のノズルの先をウィンスに向ける。

 きっと、いつもと同じようにここの家電も仕様変更できるはず!

「『仕様変更』! どんなものでも吸い上げる吸引力!」

 俺がそう言うと、いつものようにウインドウが表示されることなく、掃除機が一瞬光った。

 そして、俺が掃除機の『強いボタン』を押した瞬間、凄まじいバキューム音と共に、掃除機が周りに落ちている家電もろともウィンスを吸い上げようとした。

 ズガアアア!!

「お、おおおっ! な、なんだ、それはぁ!」

 ウィンスは剣を床に突き刺して、掃除機に吸い込まれないように踏ん張って耐えていた。しかし、掃除機の吸引力に逆らえないのか、じりじりと掃除機に近づいてきている。

 いつもの『家電量販店』よりも仕様変更のスピードが速く、威力も強い気がする。それに、仕様変更を確認するときのウインドウが表示されなかった。

 なぜだろうかと考えていると、『仕様変更実験中』と書かれていたのぼりのことを思い出した。

 ピシッ、ピシッ!

 ちらっと掃除機のノズルに目を落すと、掃除機のノズルに小さなヒビが入り始めていた。俺は『仕様変更実験中』という言葉と、壊れそうな掃除機からとある仮説を立てる。

 ……もしかして、実験中だからいつもよりも雑に早く仕様変更できたり、耐久性を度外視したような仕様変更もできたりするのか?

「うおわあああ!!」

 俺がそんなことを考えていると、突然ウィンスの後ろにいたラキスト兄さんが、俺に向かって突っ込んできた。いや、突っ込んできたというか、掃除機に吸い込まれそうになっている。

 マズい、このまま掃除機に強引に吸い込まれたら死んじゃうんじゃないか?

 俺はそう考えて慌てて掃除機をオフにして、俺の方に突っ込んで来ているラキスト兄さんをひらりとかわした。

 そして、ラキスト兄さんは勢い余って、そのまま並んでいるショッピングカートに一直線に突っ込んでいった。

「ぶつかる! おいっ、誰か助けて――ぶっ!!」

 ドガシャーンッ!! ……カラカラッ。

 ラキスト兄さんは頭からショッピングカートに突っ込むと、ショッピングカートに体を打ち付けてそのまま動かなくなった。

 脚が情けなくピクピクッと動いているから、死んではいなそうだ。

 ……とりあえず、一人制圧完了かな?

「ラキスト様! こいつ、なんてことをっ!」

 ウィンスはラキスト兄さんを見た後、怒りに震えながらまた俺に剣を振り下ろしてきた。

 ガギィン!

 しかし、その攻撃はお掃除ロボットに弾かれ、俺のもとに剣が届くことはなかった。俺はお掃除ロボットにその場を任せて、足元にあるお掃除ロボットに乗って一気に二階のフロアに向かう。

 ウィンスを相手に掃除機だけじゃ勝てない! 他に何か武器になるものを探さないと!

 俺はそんなことを考えながら、二階フロアに乱雑に置かれている家電をチャックしていった。

 いつもよりも自在に仕様変更できる家電が無数にある。

 ……こんな状況なら、どんな奴が相手でも負ける気がしない。

俺はお掃除ロボットが時間を稼いでいるうちに、ウィンスを倒す計画を立てて、すぐにその準備に取り掛かることにしたのだった。

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