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第1章「追放聖女、旅に出る」
01:聖女は、祈るより殴りたい
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「――聖女セレスティア。聞いておられるのですか?」
低く、ねっとりとした声が鼓膜を揺らす。
私はゆっくりと目を開けた。
視界に映るのは、豪奢な刺繍が施された祭壇の布。天井から吊るされた巨大なシャンデリア。そして、目の前で苦虫を百匹ほど噛み潰したような顔をしている白髪の老人。大神殿の最高位に立つ、アークビショップ・オルコットその人だった。
「……はい。もちろん、聞いておりますとも」
私はにっこりと、練習してきた完璧な聖女スマイルを浮かべた。内心では、前世の上司とのデジャヴに冷や汗が止まらなかったけれど。
私の名前はセレスティア。由緒正しきアークライト王国の聖女だ。
そして、前世は日本のしがないOLだった。
なぜ死んだのか、今となっては定かではない。ただ心当たりなら腐るほどあった。連日の残業。休日出勤は当たり前。そして何より、私の精神をゴリゴリと削り取っていった粘着質なパワハラ説教上司の存在。
あの人の説教は、長かった。とにかく長かった。一度捕まれば二時間拘束は当たり前。同じ話をループさせ、こちらの非をあげつらい、人格否定まで織り交ぜてくる。反論しようものなら「言い訳か?」「口答えか?」とさらに倍の時間をかけて説教が続くのだ。
だから私は学んだ。面倒な事態に陥ったときは、思考を止めるのが一番だと。ただただ頷き、嵐が過ぎ去るのを待つ。心を無にして、唯々諾々と受け入れる。それが、しがないOLだった私の唯一の処世術だった。
そんな私が、気づいたらこの美しい金髪と青い瞳を持つ聖女・セレスティアに転生していた。「あ、私、死んだんだな」と、妙にあっさりと受け入れられたのは、間違いなく前世の過酷な労働環境のおかげだろう。嬉しくもなんともない。
「聞いている、ですと? 聖女よ、あなたは先ほど、王国繁栄を祈る最も重要な祈祷の最中に、あろうことか船を漕いでおられたではありませんか!」
「滅相もございません。あれは、より深く神と交信するために、精神を集中させていただけです」
「その集中とやらの結果、口からは可愛らしい寝息が漏れておりましたが?」
「それは……神への感謝の念が、旋律となって現れたものでしょう」
我ながら無理のある言い訳だ。しかし、ここで素直に「すみません、寝てました」などと言おうものなら、このアークビショップの説教は夜まで続くに違いない。前世の上司そっくりのねちっこさだ。
「はぁ……」
今世の上司であるアークビショップは天を仰ぎ、わざとらしくため息をついた。
「聖女セレスティア。あなたは神に選ばれし、奇跡の乙女。その身に宿す聖なる力は、この国を、ひいては世界を照らす光となるはずなのです。しかし、あなたのその振る舞いはどうです? 儀式はすっぽかす、祈りの言葉は覚えない。聖女としての自覚が、あまりにも欠けている!」
聖なる力、ねえ。
私がこの世界で神から与えられた力は、どういうわけか「治癒」や「浄化」といった、いわゆる聖女らしいものではなかった。
その代わり私の身体には、常人を遥かに超える身体能力が宿っていた。
岩をも砕く筋力。
矢よりも速く走れる脚力。
鋼鉄の鎧を紙切れのように引き裂く握力。
……聖女ってこう、もっと違うものなのでは?
なぜこんな脳筋仕様になってしまったのかは不明だ。神様が発注を間違えたのかもしれない。もしくは受注先が間違えたのかな。どちらもあり得そうだ、前世のブラック職場的に考えて。
でも私としては、祈りの力が足りないというのはきちんと理解しているのだ。だからその分を、物理で補うしかない。そう真剣に考えている。でも残念ながら今現在まで、周囲の理解は得られていない。
「申し訳ありません、アークビショップ。今後はより一層、聖女としての務めに励む所存です」
思考を止め、前世で培った謝罪スキルを発動する。これ以上、面倒なことになるのはごめんだ。今世では穏やかに、平和に、スローライフを送りたいのだから。
「……よろしい。ならば、今日の午後の祈祷会では、決して粗相のないように。民衆もあなたの姿を一目見ようと集まっております。くれぐれも、王国聖女の名に泥を塗るような真似は……」
アークビショップの説教が、また長くなりそうな気配を察知してゲンナリする。
その時だった。
「アークビショップ! 大変です!」
私が祈りを捧げていた祈祷室の扉が勢いよく開かれた。ひとりの若い神官が、血相を変えて飛び込んでくる。
アークビショップは説教の出鼻を遮られたせいか、露骨に顔をしかめさせた。けれど神官はそれに気づく様子はない。あ、これは彼も説教コースですわ。
「西の森に、魔物の群れが出現! すでにいくつかの村が襲われ、被害が拡大しているとのこと!」
「なんだと!?」
しかし説教コースは免れたようだ。思いもよらない重大事のおかげで。
アークビショップの顔色が変わる。一転して真面目な顔になった。
「騎士団はまだ出払っているはず……。くっ、こうなれば我々神官団で浄化の結界を張るしかない! 聖女セレスティア、あなたもすぐに祈りの準備を!」
「あ、はい」
私は頷き、アークビショップと共に祭壇へと向かった。
長い説教から解放された安堵と、面倒な事態が起きた憂鬱が入り混じる。
大神殿の中枢ともいうべき、祭壇が鎮座するホール。そこに着くと既に、大神殿に所属する関係者が集まっていた。
遅れて到着した私も、祭壇の前に膝をつき、両手を組む。周囲の神官たちが荘厳な祈りの言葉を唱え始めた。私もそれに倣って、かろうじて覚えているフレーズを口ずさむ。
「おお、聖なる光よ……我らが声を聞き届け……邪悪なる者を打ち払い……えーっと……」
ダメだ、全然出てこない。祈りの言葉はどれもこれも長くて小難しくて、覚えるのが面倒くさいのだ。みんなよく覚えていられるな。本当にすごいと思う。
そんな私の苦労をよそに、結界の準備は着々と進んでいるようだった。祭壇の中央に設置された巨大な魔水晶が、神官たちの祈りに応えるように淡い光を放ち始める。この光が最大限に高まった時、王都全域を覆う浄化の結界が完成するのだという。
「聖女よ、あなたの力が必要です! どうか、我々と共に祈りを!」
アークビショップに檄を飛ばされ、私は「ええい、ままよ!」と目を閉じて意識を集中させた。
聖女の力よ、宿りたまえ! 邪悪なるものを打ち払う、聖なる奇跡を!
――グッ!
私の両腕に、凄まじい力がみなぎるのを感じた。血管が浮き出し、筋肉が隆起する。今なら岩でも握り潰せそうだ。
……うん、いつも通り。私の聖なる力は今日も物理に全振りで絶好調である。
「おお……! 聖女様の祈りが、魔水晶に力を与えているぞ!」
誰かが歓声を上げた。見ると、魔水晶の輝きが先ほどよりも一段と増している。
どうやら、私の有り余る生命力というか、身体エネルギー的なものが、祈りの代わりになっているらしい。これなら祈りの言葉を覚えなくてもなんとかなる。便利な身体だ。
「この調子です、聖女よ! あと少しで結界が……!」
アークビショップが希望に満ちた声を上げた、その瞬間だった。
ドッゴオォォォン!!
耳をつんざくような轟音と共に、大神殿のステンドグラスが粉々に砕け散った。
ガラスの破片が雨のように降り注ぐ。美しいとさえ見えてしまうその輝きの中、大神殿に飛び込んできたのは、巨大な一体の魔物だった。
牛のような頭に、ゴリラのような逞しい体躯。
手には巨大な斧を握り、その目は血走っている。
ミノタウロス、だろうか。
「な、なぜ魔物が神殿内部に!?」
「ひぃぃっ! 結界が間に合わなかったのか!?」
神官たちが恐怖に慄き、パニックに陥る。
平和な祈りの場は、一瞬にして阿鼻叫喚の地獄絵図と化した。
ミノタウロスは、祭壇に輝く魔水晶に気づくと、涎を垂らしながらそちらへ向かって歩き出した。あれを破壊するつもりだ。
「い、いかん! あれを壊されては、王都が!」
アークビショップが叫ぶ。しかし腰が抜けて動けないようだ。
他の神官たちも、祈ることしか知らない聖職者ばかり。
武器を持って戦える者など、ここにはひとりもいない。
ミノタウロスが、巨大な斧を振り上げる。
ああ、もう、なんてことだ。
私は静かに立ち上がった。
前世では、理不尽な上司に耐えるしかなかった。面倒なことから逃げるために、思考を停止させるしかなかった。
でも、今は違う。
この身には、神様が間違えて授けてくれた、とんでもない力が宿っている。
祈りは、届くまでに時間がかかる。
結界は、完成するまでに手間がかかる。
説教は、とにかく長くて面倒くさい。
だったら――。
「間に合わないじゃないですか」
私はそう呟くと、ゆっくりとミノタウロスに向かって歩き出した。
神官たちの悲鳴が遠くに聞こえる。
ああ、神様。どうか、この哀れな転生者に、平穏なスローライフをお与えください。面倒なことは、もうこりごりなんです。心から、そう願っているんです。
しかし、どうやら神様は私の願いを聞き届けてはくれないらしい。
目の前の魔物は、そんな私の切なる祈りを嘲笑うかのように、雄叫びを上げた。
――グオオオオオォォッ!!
神殿内に、獣の咆哮が響き渡る。
パニックは頂点に達し、神官たちは散り散りに逃げ惑い始めた。
まったく、騒がしい。これでは、祈りに集中できないではないか。
-つづく-
ゆきむらです。御機嫌如何。
明るくてちょっとトンチキなヒロインが、マイペースゆえに数々の騒動を起こし、周囲を掻き回していくコメディタッチなお話。
……というのを意識して書いてみました。
思いつきと勢いだけで書いたので、どれくらい続くかは作者にも分からない。
面白いと感じたら、感想や評価をいただけると嬉しいです。
低く、ねっとりとした声が鼓膜を揺らす。
私はゆっくりと目を開けた。
視界に映るのは、豪奢な刺繍が施された祭壇の布。天井から吊るされた巨大なシャンデリア。そして、目の前で苦虫を百匹ほど噛み潰したような顔をしている白髪の老人。大神殿の最高位に立つ、アークビショップ・オルコットその人だった。
「……はい。もちろん、聞いておりますとも」
私はにっこりと、練習してきた完璧な聖女スマイルを浮かべた。内心では、前世の上司とのデジャヴに冷や汗が止まらなかったけれど。
私の名前はセレスティア。由緒正しきアークライト王国の聖女だ。
そして、前世は日本のしがないOLだった。
なぜ死んだのか、今となっては定かではない。ただ心当たりなら腐るほどあった。連日の残業。休日出勤は当たり前。そして何より、私の精神をゴリゴリと削り取っていった粘着質なパワハラ説教上司の存在。
あの人の説教は、長かった。とにかく長かった。一度捕まれば二時間拘束は当たり前。同じ話をループさせ、こちらの非をあげつらい、人格否定まで織り交ぜてくる。反論しようものなら「言い訳か?」「口答えか?」とさらに倍の時間をかけて説教が続くのだ。
だから私は学んだ。面倒な事態に陥ったときは、思考を止めるのが一番だと。ただただ頷き、嵐が過ぎ去るのを待つ。心を無にして、唯々諾々と受け入れる。それが、しがないOLだった私の唯一の処世術だった。
そんな私が、気づいたらこの美しい金髪と青い瞳を持つ聖女・セレスティアに転生していた。「あ、私、死んだんだな」と、妙にあっさりと受け入れられたのは、間違いなく前世の過酷な労働環境のおかげだろう。嬉しくもなんともない。
「聞いている、ですと? 聖女よ、あなたは先ほど、王国繁栄を祈る最も重要な祈祷の最中に、あろうことか船を漕いでおられたではありませんか!」
「滅相もございません。あれは、より深く神と交信するために、精神を集中させていただけです」
「その集中とやらの結果、口からは可愛らしい寝息が漏れておりましたが?」
「それは……神への感謝の念が、旋律となって現れたものでしょう」
我ながら無理のある言い訳だ。しかし、ここで素直に「すみません、寝てました」などと言おうものなら、このアークビショップの説教は夜まで続くに違いない。前世の上司そっくりのねちっこさだ。
「はぁ……」
今世の上司であるアークビショップは天を仰ぎ、わざとらしくため息をついた。
「聖女セレスティア。あなたは神に選ばれし、奇跡の乙女。その身に宿す聖なる力は、この国を、ひいては世界を照らす光となるはずなのです。しかし、あなたのその振る舞いはどうです? 儀式はすっぽかす、祈りの言葉は覚えない。聖女としての自覚が、あまりにも欠けている!」
聖なる力、ねえ。
私がこの世界で神から与えられた力は、どういうわけか「治癒」や「浄化」といった、いわゆる聖女らしいものではなかった。
その代わり私の身体には、常人を遥かに超える身体能力が宿っていた。
岩をも砕く筋力。
矢よりも速く走れる脚力。
鋼鉄の鎧を紙切れのように引き裂く握力。
……聖女ってこう、もっと違うものなのでは?
なぜこんな脳筋仕様になってしまったのかは不明だ。神様が発注を間違えたのかもしれない。もしくは受注先が間違えたのかな。どちらもあり得そうだ、前世のブラック職場的に考えて。
でも私としては、祈りの力が足りないというのはきちんと理解しているのだ。だからその分を、物理で補うしかない。そう真剣に考えている。でも残念ながら今現在まで、周囲の理解は得られていない。
「申し訳ありません、アークビショップ。今後はより一層、聖女としての務めに励む所存です」
思考を止め、前世で培った謝罪スキルを発動する。これ以上、面倒なことになるのはごめんだ。今世では穏やかに、平和に、スローライフを送りたいのだから。
「……よろしい。ならば、今日の午後の祈祷会では、決して粗相のないように。民衆もあなたの姿を一目見ようと集まっております。くれぐれも、王国聖女の名に泥を塗るような真似は……」
アークビショップの説教が、また長くなりそうな気配を察知してゲンナリする。
その時だった。
「アークビショップ! 大変です!」
私が祈りを捧げていた祈祷室の扉が勢いよく開かれた。ひとりの若い神官が、血相を変えて飛び込んでくる。
アークビショップは説教の出鼻を遮られたせいか、露骨に顔をしかめさせた。けれど神官はそれに気づく様子はない。あ、これは彼も説教コースですわ。
「西の森に、魔物の群れが出現! すでにいくつかの村が襲われ、被害が拡大しているとのこと!」
「なんだと!?」
しかし説教コースは免れたようだ。思いもよらない重大事のおかげで。
アークビショップの顔色が変わる。一転して真面目な顔になった。
「騎士団はまだ出払っているはず……。くっ、こうなれば我々神官団で浄化の結界を張るしかない! 聖女セレスティア、あなたもすぐに祈りの準備を!」
「あ、はい」
私は頷き、アークビショップと共に祭壇へと向かった。
長い説教から解放された安堵と、面倒な事態が起きた憂鬱が入り混じる。
大神殿の中枢ともいうべき、祭壇が鎮座するホール。そこに着くと既に、大神殿に所属する関係者が集まっていた。
遅れて到着した私も、祭壇の前に膝をつき、両手を組む。周囲の神官たちが荘厳な祈りの言葉を唱え始めた。私もそれに倣って、かろうじて覚えているフレーズを口ずさむ。
「おお、聖なる光よ……我らが声を聞き届け……邪悪なる者を打ち払い……えーっと……」
ダメだ、全然出てこない。祈りの言葉はどれもこれも長くて小難しくて、覚えるのが面倒くさいのだ。みんなよく覚えていられるな。本当にすごいと思う。
そんな私の苦労をよそに、結界の準備は着々と進んでいるようだった。祭壇の中央に設置された巨大な魔水晶が、神官たちの祈りに応えるように淡い光を放ち始める。この光が最大限に高まった時、王都全域を覆う浄化の結界が完成するのだという。
「聖女よ、あなたの力が必要です! どうか、我々と共に祈りを!」
アークビショップに檄を飛ばされ、私は「ええい、ままよ!」と目を閉じて意識を集中させた。
聖女の力よ、宿りたまえ! 邪悪なるものを打ち払う、聖なる奇跡を!
――グッ!
私の両腕に、凄まじい力がみなぎるのを感じた。血管が浮き出し、筋肉が隆起する。今なら岩でも握り潰せそうだ。
……うん、いつも通り。私の聖なる力は今日も物理に全振りで絶好調である。
「おお……! 聖女様の祈りが、魔水晶に力を与えているぞ!」
誰かが歓声を上げた。見ると、魔水晶の輝きが先ほどよりも一段と増している。
どうやら、私の有り余る生命力というか、身体エネルギー的なものが、祈りの代わりになっているらしい。これなら祈りの言葉を覚えなくてもなんとかなる。便利な身体だ。
「この調子です、聖女よ! あと少しで結界が……!」
アークビショップが希望に満ちた声を上げた、その瞬間だった。
ドッゴオォォォン!!
耳をつんざくような轟音と共に、大神殿のステンドグラスが粉々に砕け散った。
ガラスの破片が雨のように降り注ぐ。美しいとさえ見えてしまうその輝きの中、大神殿に飛び込んできたのは、巨大な一体の魔物だった。
牛のような頭に、ゴリラのような逞しい体躯。
手には巨大な斧を握り、その目は血走っている。
ミノタウロス、だろうか。
「な、なぜ魔物が神殿内部に!?」
「ひぃぃっ! 結界が間に合わなかったのか!?」
神官たちが恐怖に慄き、パニックに陥る。
平和な祈りの場は、一瞬にして阿鼻叫喚の地獄絵図と化した。
ミノタウロスは、祭壇に輝く魔水晶に気づくと、涎を垂らしながらそちらへ向かって歩き出した。あれを破壊するつもりだ。
「い、いかん! あれを壊されては、王都が!」
アークビショップが叫ぶ。しかし腰が抜けて動けないようだ。
他の神官たちも、祈ることしか知らない聖職者ばかり。
武器を持って戦える者など、ここにはひとりもいない。
ミノタウロスが、巨大な斧を振り上げる。
ああ、もう、なんてことだ。
私は静かに立ち上がった。
前世では、理不尽な上司に耐えるしかなかった。面倒なことから逃げるために、思考を停止させるしかなかった。
でも、今は違う。
この身には、神様が間違えて授けてくれた、とんでもない力が宿っている。
祈りは、届くまでに時間がかかる。
結界は、完成するまでに手間がかかる。
説教は、とにかく長くて面倒くさい。
だったら――。
「間に合わないじゃないですか」
私はそう呟くと、ゆっくりとミノタウロスに向かって歩き出した。
神官たちの悲鳴が遠くに聞こえる。
ああ、神様。どうか、この哀れな転生者に、平穏なスローライフをお与えください。面倒なことは、もうこりごりなんです。心から、そう願っているんです。
しかし、どうやら神様は私の願いを聞き届けてはくれないらしい。
目の前の魔物は、そんな私の切なる祈りを嘲笑うかのように、雄叫びを上げた。
――グオオオオオォォッ!!
神殿内に、獣の咆哮が響き渡る。
パニックは頂点に達し、神官たちは散り散りに逃げ惑い始めた。
まったく、騒がしい。これでは、祈りに集中できないではないか。
-つづく-
ゆきむらです。御機嫌如何。
明るくてちょっとトンチキなヒロインが、マイペースゆえに数々の騒動を起こし、周囲を掻き回していくコメディタッチなお話。
……というのを意識して書いてみました。
思いつきと勢いだけで書いたので、どれくらい続くかは作者にも分からない。
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