花のような君に恋をした。

都邑冷素

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4話 黄色いゼラニウム

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課外授業から数日経ち、
太陽は、華を自分の目線の中に無意識に入れてしまうことが多くなった。

教室の端の席にいて日の光に照らされた華は課外授業の日よりも儚く見えていた。

なぜだか、今見ていないと消えてしまうのではないかと感じた。
ずっと見ていたいと思った。

「おーい、太陽。どこ見てんだよ。
ホームルーム始めるぞ。」
担任の土肥先生の声が響いた。

その声で太陽は現実の世界にひき戻された。


「今日は席替えをするぞ。」
土肥先生がいう。

「やったー!!」
「絶対後ろの席がいい!!」
「隣の席だといいね、」
とクラスが騒がしくなる。

「静かに、。席はくじ引きで決めるぞ、」
「廊下側の列からくじを回すぞー」
と土肥先生がいう。


「私3番だったよ!」

「うわー離れちゃったね、」


そんな声でまた教室が騒がしくなる中、
太陽の番が回ってきた。


(華と近くなれたらいいな。)
そんなことを思いながら太陽はくじを引いた。
太陽は真ん中の席だった。


「お前何番だった?」
仲のいい 正心 息吹(しょうしん いぶき)
が声をかけてきた。

「真ん中の席だったよー」
「後ろの席がよかったな、、」
と太陽は答えた。

「え、!俺と隣じゃん!」
「よっしゃ!!」
息吹が笑みを浮かべた。

「授業中ふざけられるじゃん!」
「やった!」
本当は華の隣になりたかったことを隠して太陽は満面の笑みを浮かべた。

「お前ら二人、隣かよー」
「ずるーい」

そんな男子たちの声でクラスが賑やかになるなか、一番最後にくじが回ってきたのは華だった。

席が一番後ろの端であることだけが救いだった華にとってはこの席替えは苦痛でしかなかった。


(せめて、、せめて、
後ろの方であってくれ、、)
そう願いを込めてくじを引くと
華は、後ろから2番目の端だった。
(よし!後ろの方だしまた端だ!)
華は、前の方の席にならなくてホッとした。

「みんなくじ引き終わったなー」
「じゃあ、席移動しろー」
土肥先生が言う。


「やったー!隣だね!」
「この席だと内職できないじゃん!」
「最悪一番前じゃん、、!」
クラスメイトの声で教室が騒がしくなる。

(はぁ、うるさいなー)

そう思うながら華も新しい席へ移動する。

「よろしくね、泡影さん。」
隣の席になった 泉水 直子(いずみ なおこ)が声をかけてきた。


テストの結果が貼り出された時か、
用件がある時しか話しかけられることのあまりない華は少し驚いたが、

「よろしくね。」
華は、動揺を隠して微笑みを浮かべた。
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