Weapons&Magic 〜彼はいずれ武器庫<アーセナル>と呼ばれる〜

ニートうさ@秘密結社らびっといあー

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第二部 〜未知との遭遇〜

第二十三話

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あの宴の翌日。

アルージェはフリードとサーシャと机を挟んで、真面目な顔で向かい合っていた。

「父さん。母さん。僕この村を出て冒険者になろうと思ってるんだ」
一区切りして言葉を続ける。

「シェリーが居なくなってからもう何年か経つけど、未だにシェリーは生きているんじゃないかって思う時がある。ほんとに僕よりも強かったシェリーがあの程度の魔物相手に為す術なくやられてしまったのかって。だってそうでしょ?それは父さんと母さんだったら一番分かってるよね?」
シェリーが居なくなった時の状況で一番不審な点だった。

「確かに剣は無かったかもしれない。でもそこらへんに落ちている木の棒とかでも抵抗できたはずだ。でも抵抗した様子もほとんどなく死体も見つかってない。木の枝が見つからなくて、死体も食われたって言われたらそれまでだけど、やっぱり僕は納得できないんだ。だから街に行って冒険者になって、納得のいく答えを探したいって思ってる」
真っすぐな目でフリードとサーシャを見つめる。

「だからお願いします、冒険者にならせてください!」
そう叫び頭を下げる。

少しの沈黙の後にサーシャが話し始める。
「私もフリードも本当はずっとこの村にいてほしいと思ってるのよ。ごく普通に畑を耕して、村の誰かと家庭を築いて、平穏に暮らして欲しいって」
その言葉にフリードも続く
「あぁ、そうだな。危険なことをせず、できればこのまま村で静かに暮らして欲しい」

「けど、これは私達のわがままね。アルがしたいと思うなら、やってみたらいいと思うわ」
「だな。アルはもう成人しているからな。俺達も元冒険者だし、どうこう言えたもんじゃないさ」
フリードはアルージェの目を見つめる。

「アル。自分の心がやりたいと思っていることをやりなさい。心からやりたいことなら、それは誰にも止められないことだからな!」
フリードとサーシャは何やらアイコンタクトを取ると頷き合う。
サーシャが立ち上がって別の部屋に移動した。

「アルは俺達の子だから、この村にずっといるなんて無理だろうって思ってたんだ。もしアルが外に出たいって言った時、渡そうと思ってたものがある」
フリードが言い終わる頃にサーシャが戻ってくる。

戻ってきたサーシャは革で出来た巾着袋のようなものを持っていた。

「昔ロイさんが持ってたと思うんだけど、これはアイテムボックスっていうアイテムなの。これ一つでロイさんの家の納屋一つくらいは物が入るわ。それと中に入れているものは厳密には少し違うのだけれど、時間が止まっていると考えてくれたらいいわ」
アルージェはアイテムボックスを受け取り中を覗いた。

そこには五歳の誕生日に貰った剣と昨日もらった剣。
昔、森に行った時に着ていたレザーアーマーを今の体格に合わせて作り変えられたもの。
後は少量だが銅貨と銀貨も入っていた。

「そのお金を使って村から出る時に必要になるものを用意するといいわね。お金の価値を学ぶいい勉強になると思うし!」

「そうだな。アルの事だから準備をしてすぐに行くんだろ?村にはそこそこ物は揃っているはずだから、入念に準備してから行くといいだろう。冒険者になるならこういうのも大切だしな」
フリードがそういうと二人は微笑み頷く

「父さん・・・、母さん・・・。ありがとう!」

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あれから数日が過ぎた。

寝具に寝ころびながらアルージェは今日までの事を思い出していた。

父さんと母さんに冒険者になる話をした僕は、その日のうちに村を回って色々と調達した。

テントやら日持ちしそうな食料を貰ったお金で購入した。

「最近、村をあちこち回ってあっという間に日が過ぎたなー、後は師匠と先生に挨拶して、終わりかなー?」
アイテムボックスの中をごそごそと確認しながら、残りの準備について考えていた。

「先生は挨拶したらあっさりと終わりそうだけど、師匠はどうかなぁ。あー、動き回っててやっと落ち着いたから、眠気が・・・。ふわぁー」
体の伸ばし欠伸をして、そのまま少しボーッとしていると村を動き回った疲労がたまっていたのか、いつの間にか眠りについていた。

チュンチュンと鳥が鳴く声で目が覚めた。

周りを見渡して、父さんと母さんが居なくなっているのでもう朝なのだと把握した。
昨日はぐっすりと眠れた。

バタバタしていたから、疲れが溜まっていたんだろう。
今日は先生と師匠に村を出る挨拶をする予定だ。

まずはいつも通り家の手伝いをする。
それから基礎トレーニングをして、母さんが魔法で出してくれた水を使って体を洗いながら今後の事を考えていた。

「村にいる間はこうやって基礎トレーニング出来たけど、町に行くまでは少し休むかな。町まで結構移動距離あるみたいだし」
運動して火照った体を水で洗い流す。

「町にいったら水も自分でどうにかしないといけないのか。こりゃ思ったより大変そうだなー。今からでも母さんに水の魔法教えてもらうほうがいいか?でも、明日には出て行きたいし、さすがに無理か・・・」
アルージェは早く村から出て行きたいと考えていた。
長居すればするほど今の決意が鈍るのではないかと危惧していたのだ。

父さんも母さんも嫌いになったわけじゃない、むしろここまで育ててくれたことに感謝している。
それに今更だが村にも馴染めてきた。
この村に嫌なことなんて一つもなかった。

「冒険者になっても、絶対顔出しに帰ってこよう!さて、まずは先生のところに行こうかな」
アルージェは服を着て、ロイの元へ歩を進めた。

「先生はどんな反応するかなー。でも先生よりもライの方が付いてくるとか言って大変そうだなぁ」
なんて、そんな風に考えていました。

「こんにちはー」と大きめの声を出して家の扉をノックすると、ドタドタと足音が聞こえてバァン!とドアが開け放たれる。
そして、シェリーによく似ているライがすごい勢いで飛び出してくる。
「アル兄ちゃん!遊びに来たのか!?」と嬉しそうに顔を近付けてくる。

距離の近いライの顔を手で押し出して要件を伝える。
「おぉライ!ごめん、今日は遊びに来たんじゃないんだ。ロイさんいる?」

「うわぁ!そうかー!父さんに用事かー!くそぅ!呼んでくる!」
少し悔しそうにしていたが、すぐにロイを呼びに行ってくれた。

待ち時間。
ソフィアさんが出てきて「ライったら騒がしくてごめんねぇ。誰に似たんだか」と困った顔をしながら謝罪する。
顔の前で手を横にぶんぶん振りながら「いやいや、僕もライの元気には助けられてるんで!」と返した。

「おう!待たせたアル坊!」
家からではなく納屋の方からひょいっとロイが出てきた。

「急に来ちゃってすいません。実は話が有って」

「あぁ、フリードから少し聞いたな。村出るってやつか?」
すでにフリードが各所に言いまわっているようだった。

言いまわっているということは小さい村というコミュニティの関係上、この村に住んでいる人はみんな知っているだろう。

「父さんもうみんなに言いまわってるんですね。僕に早く出て行って欲しいのかな・・・?」
アルージェは少し不安になる。

「いや、どっちかって言うと相談を受けた感じだな。あいつはアル坊の事、面倒臭くなるくらい心配してるみてぇだな。ガハハハハ」
ロイは相談してきたフリードのことを思い出し、腹を抱えて笑っていた。

「先生がそんなになるくらい心配してたんだ」
フリードがそこまで心配してたとは知らず、少し嬉しくなった。

「そうだな。あんなフリード当分拝めねぇだろうな。まぁ、家でどんな顔してても我が子のことを心配するのは、親として当たり前のことさ」
何かを思い出したように少し遠くを見て、視線をアルージェの方に戻し話を続ける

「それで、今日は村を出る挨拶に来たってとこか?」

「先生に教えてもらったことは、冒険者になっても絶対に役立つことだから。本当にありがとうございました!!」
そう言ってアルージェは頭を下げる

「おい、よせよ。最後の別れみたいな言い方しやがって。ったく、アル坊は小せぇ時から、ほんと律儀なやつだな」
少し恥ずかしそうに指で頬を掻く。

「シェリーと一緒に遊んでた時からアル坊は俺達にとっても息子同然だ。娘だけじゃなく息子までいなくなるのは勘弁してくれ。冒険者になってもぜってぇ無駄死なんてすんじゃねぇぞ」
ロイはアルージェの頭に手を置き、真剣な眼差しで見つめる。

その眼差しに気付き、アルージェも真剣な顔をして「はい」と答え頷いた。

そのまま「少し家にあがってけ」と言われ、ロイ一家と少し雑談をしてグレンデの元に向かった。
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