Weapons&Magic 〜彼はいずれ武器庫＜アーセナル＞と呼ばれる〜

第四部 〜止まった時間と動き出す歯車〜

第百六十話

村人達は初めは賭けをしていたが、アルージェが強くてサイラスが足元にも及ばないとわかり途中からはただ一方的にサイラスがやられるところを見ていた。

アルージェは終わるたびに武器を変えて、数十分間、休憩も無しに何度もサイラスとの打ち合いをした。

「ぜぇぜぇ、も、もう限界だ！きゅ、休憩をくれ。休憩を！」
サイラスは地べたに座り込み、立っていることも出来ない状態だった。

「ん？もう終わり？ならしばらくは村にいるし、またやろうよ！」
斧を取り出して、構えていたアルージェが構えを解く。

「お、おう。くそぉ、絶対アルージェから一本取ってやる！」

「ハハハ、なら僕は今からゴブリン退治に行くからまたね！」

「今から行くのかよ。やっぱりお前おかしいよ！」

「あはは、それじゃ！」
アルージェはサイラスに別れを告げて家に戻る。

「ゴブリン退治は誰か一緒にきてくれるかなー？ミスティさんなら触手であっという間に終わっちゃいそうだなー。マイアさんだと各個撃破って感じで、エマも同じかな？あっでも、エマは魔法使えるし全体攻撃からのって感じかなぁ。さすがにアインさん達は来てくれないよねぇ」
アルージェは歩きながら、誰が一緒に行っても大丈夫なように戦い方を考える。

家に戻ると、ミスティとエマが談笑していた。
マイアは秘密結社らびっといあー達と一緒にぬいぐるみを作っているようだ。
「戻りました。すいません。今からゴブリン退治に行くんですけど、誰かついてきてくれませんか？」

三人がアルージェの方を向く。

「あ、あの、わ、私行きたいです！」
エマが立ち上がり挙手する。

「おっ！エマやる気満々じゃん！なら一緒に行こう！今回結構な数のゴブリンがいると思うから、用心して行こうね。ミスティさんとマイアさんはどうします？」

「あぁ、私は少し休ませてもらおうかな。今までここまでのんびり出来ることもなかったからな」
ミスティはソファの深く腰掛ける。

「私も今回は遠慮させていただきます。秘密結社らびっといあー達ともう少し作業をしたいので」
マイアは少しだけ頭を下げる。

「そうですか。わかりました！それじゃあ、後は・・・」

アルージェは部屋の中をキョロキョロと見渡す。
「あれ？ルーネは？」

「ん？ルーネならマールと一緒にいるんじゃないか？さっきマールがこっちに来てルーネを連れて行っていたぞ」
ミスティがアルージェに答える。

「いつの間にルーネとそんなに仲良くなったんだ・・・」
アルージェはマールの行動力に少し驚く。

「どこにいるんだろ」
アルージェはルーネとのパスを確認する。
魔法で契約をしている為、パスを辿れば大体の位置が分かる。

「居た！エマもう出れる？」

「はい！いつでも行けますよ！」

「なら、行こ！」
エマと一緒にルーネの元に向かう。

「あっ！にぃにぃ！」
川で遊んでいるマールを見つける。

「おっ、マールこんなところに来てたんだ。ルーネに乗ってきたの？」

「うん！ワンワン強くて、可愛いんだよ！」

「あはは、そうだね。ルーネはすごく強いよ！そっかそっか、ゴブリンを倒しに行くからルーネに来てもらいたかったけど、マールの方が大事だね。ルーネ！マールのことよろしくね！」

「ワウッ！」
ルーネから任せろと脳内に念が飛んでくる。

「なら、エマ二人だけになっちゃったけど行こうか」

「はい！よろしくお願いします！」
エマは腕を前に出して意気込む。

ルーネがエマに近づいて、エマに何かを伝えている。
「えっ！？わ、分かりました。それなら私が先導したほうがいいですね・・・」

「エマー！何してるのー？いくよー！」
アルージェが先導して手を振りながらエマに声をかける。

「ルーネちゃん、ありがとうございます！」
エマがルーネに会釈してアルージェのそばに駆け寄る。

「ルーネと何か話してたの？」

「えっ？ゴ、ゴブリンの集落の場所を聞いてました」

「ふーん、ここからでもそんなことわかるんだ。ルーネさすがだねぇ。んじゃゴブリン退治にいこっか！」

「は、はい！」
アルージェが早速ゴブリンの集落に向かおうとすると、エマに制止される。

「あ、アルージェ君！集落はあっちの方ってルーネちゃんが言ってましたよ」
アルージェが進もうとしていた方向とは逆の方向を指を差す。

「えっ？ほんと？あははは・・・、連れて行ってくれないかな・・・？」
アルージェは恥ずかしそうに頬を掻く。

「わ、分かりました。ルーネちゃんに場所は聞いたので大丈夫だと思います」

エマが先頭に立ち、アルージェは後ろに追従する。

途中、昼食を挟む。
家から持ってきた硬いパンとスープ、干し肉を食べた。

1時間ほど歩いたところで、見回りをしているゴブリンを発見する。

「アルージェ君、前」
エマがこそこそっと、アルージェに話しかける。

「ゴブリンだね。この近くに集落があるのかな」

「ルーネちゃんに聞いた限りだとかなり近いと思います」

「なるほどね。ならあのゴブリンはこそっと倒すよ。少し待っててね」
アルージェはアイテムボックスから短剣を取り出す。
そのまま気配を消してゴブリンに近寄り、首を切る。