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閑話28・短編まとめ13
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なろうの活動報告にアップしている短編のまとめです。
今回は使用人たちがわちゃわちゃしているだけのお話。
『執事たちの手合わせ』(時系列は学園祭手前くらい)
----------------------------------------
『執事たちの手合わせ』
「たーのもー。マクシミリアン・セルバンデス卿はおられるかー」
使用人サロンでくつろいでいる私のところに、そんな妙なかけ声と共に現れたのはハウンドだった。
彼は腰に『カタナ』と呼ばれる片刃の剣を差している。なんだミルカ王女の護衛任務でもあったのか? と私は首を傾げた。
「マクシミリアン・セルバンデス卿。一つ手合わせ願いたい!」
ハウンドはそう言いながら口角を上げてニヤリ、と笑う。
……手合わせってお前。私は騎士でもなんでもないんだが。
「本職のノエル様に頼めばいいだろう」
私が冷たく言うとハウンドは顔を顰めた。
「本職に頼んだらボコボコにされちゃうでしょ? 俺それは嫌ッス」
「ルール無用でやればいい勝負ができるんじゃないか?」
ハウンドの剣術はいわゆる『正統派』のものではない。
騎士がやっているようなルールのある枠組みでの対戦では、その真価は発揮されないだろう。
「ルール無用でやっても、ノエル様には負けちゃいそーッス。あれで十三歳とかおかしいでしょ」
ハウンドはどこかでノエル様の剣技を見たらしい。確かに彼のものは人間離れしている。さすが近衛騎士の家系だと私も感心したものだ。
だが魔法を使って闇討ちをすれば……なんてしばらく思考を巡らせ我に返る。別に彼に恨みはないし闇討ちをする必要性はまったくないのだ。
「三十分だけだぞ。演習場でいいか?」
「やったッス! マクシミリアン大好き!! ルール無用でいいんスよね?」
仕方なしに嘆息しながら言うと、ハウンドに鳥肌が立つようなことを言われ殺意が湧いた。
よし、遠慮なくボコボコにしてやろう。
ルール無用なんだよな? 私がなにを使っても、文句は言うまい。
「マクシミリアン、ルール無用だからって『犬』は無しッスからね」
ハウンドに機先を制され私は大きな舌打ちをした。
演習場に着いた私たちは、入り口にいる受付の職員に声をかけた。
演習場は生徒の自主訓練か剣術の授業への使用が主な用途だが、申請すれば学園に関わるもの全てが使えるようになっている。
たださすがに執事然とした格好の私たちが使用許可を求めると職員は目を丸くした。
「別にいいけどよ。怪我すんなよ?」
首を傾げつつも彼は使用の許可を出してくれた。
演習場は円形の競技施設でこんな大きなものがあるのはさすが貴族の学園だな、といつ見ても感心してしまう。広い客席も用意してあり学園祭の時には騎士祭の会場としてここが使われるのだ。
アリーナに入場すると訓練をしている生徒の視線がこちらへと投げられ、受付の職員がしたように不思議そうに首を傾げられた。
「マクシミリアンは得物はどうするんスか?」
ハウンドが腰からすらりと『カタナ』を抜き放ち、薄い唇を舌で湿らせながら問いかける。訓練用の剣はその辺りに無造作に置いてあるが……。
「ハウンド相手だ、武器は無くていい。ハンデだよ」
私はそう言ってハウンドに素手で向かい合った。
「うっわ。ひでぇ! 舐められてる! さすがにそれはないッスよぉ!」
「……ただし、魔法は使うがな」
口角を上げてニヤリと笑ってみせると、ハウンドの頬が引き攣った。
「マクシミリアン。魔法禁止のルールでやらねーッスか? マクシミリアンに魔法を使われたら、開幕木っ端微塵じゃねーッスか」
「……ハッ。この根性なしめ。ルール無用じゃなかったのか?」
「ひでぇ!!」
ハウンドが懇願するように言うので私は仕方なしに、無造作に打ち捨てられていた細身の長剣を手にした。
それを片手で軽く振り、感触を確かめる。無駄な重さがあるがまぁこれでいいだろう。
「マックスー! ハウンド!!」
その時アリーナの入り口から大きく手を振りながらジョアンナが駆けてきた。
……この女、どうしてここに。
「私抜きで遊んでるとかずるいー!!!」
ジョアンナは息を切らせながら文句を言う。
「俺たちがここだってなんでわかったんスか?」
ハウンドが疑問を口にしながら首を傾げると、ジョアンナは自分の影を指差した。
すると影からにゅるりといつか見た短髪で前合わせの服を着た少女が這い出てくる。
「ヒナキが教えてくれたの!」
「えっ。かっけー! なにそれ! 影から出れんの?」
「私の部下! すごい特技でしょ!」
「ジョアンナ様の部下のヒナキでございます」
ジョアンナが無駄に大きな胸を張り得意げな顔をし、ハウンドはヒナキという少女へ感心した声を上げる。そしてヒナキはぺこりと丁寧に頭を下げた。
「さぁさ。始めて! ジョアンナさんが見届けてあげるから!」
「こんな美女に見られてたら負けられねーッスね!」
「……美女? ハウンドの目は節穴か?」
私の言葉にジョアンナが鋭い視線を投げてきたが取り合わず、私はハウンドと向かい合った。
正眼に『カタナ』を構えるヤツを観察する。
……袖口に暗器を五本。ジャケットの裏に三本ってとこか? 服の膨らみ具合から推察しつつ、片手で剣を構えハウンドにじりじりと近づく。
演習場で訓練をしていた生徒たちがいつの間にか、興味津々という様子で訓練の手を止めてこちらを観察していた。ギャラリーもいるし少し頑張ってみるか。
「じゃー! 始めっ!」
なぜか試合開始の合図をジョアンナが送る。
その声に合わせてハウンドが一気にこちらに斬り込んできた。
――速い。
上段から袈裟に振り下ろされる鋭い刃を私は後ろに軽く飛んで躱す。
数本の斬られた前髪が宙を舞ってそういえばこいつ真剣を使ってるな、と今さら思った。彼の使う『カタナ』は切れ味に秀でている。斬られたらひとたまりもない。
ハウンドが続けて懐から取り出した暗器をこちらに二本投擲してきたので、それを剣で弾き飛ばし距離を取る。暗器の残りはあと六本。これが尽きるまであまり近寄りたくはないがそんな訳にもいかないな。
もうすぐお嬢様の昼食の時間なのだ。時間はかけたくない。
というか『カタナ』やら暗器やら……こいつは私を殺す気なのか?
「マクシミリアン。逃げてばっかじゃーダメッスよぉ」
ハウンドが挑発するように言うか誰がそんな安い挑発に引っかかるか。
「そっちから来ればいいんじゃないか?」
私も薄く笑いながら挑発し、無防備に両手を広げてみせる。
「上等ッス。その挑発乗りましょう」
そう言いながらハウンドがこちらへ飛んだ。その隙のない踏み込みは流麗だ。
横に払われる彼の一閃を躱した後。
私は持っていた剣を放って捨て、膝を折って体を沈めた。
「えっ……」
呆気に取られたようなハウンドの声。
私は彼の足に向かって薙ぎ払うような鋭い蹴りを入れる。
足を払われたハウンドの体が地面から浮きそのまま落ちようとする。しかし彼は後ろ手に手をついてなんとか踏み止まった。
私はそのまま発条のように起き上がろうとするハウンドの胸元にさらに鋭い蹴りを叩き込んだ。
「はい、そこまでー!」
胸を押えて咳き込むハウンドを見て、ジョアンナが制止の声を上げる。
ギャラリーからは大きな拍手が上がった。
「……武器はいらないと、言っただろう」
「ずるい! むしろそっちの方が得意なんスね!?」
咳き込み終わったハウンドが不満げな声を漏らした。
あばらの一本でも折れているかと思えば実に元気なものだ。
「なぜ最初から得意なものをひけらかさないといけないんだ。お前こそ真剣に暗器にと私を殺す気なのか?」
「……どうせマクシミリアンならモロに当たらねーだろうって思ってたし」
万が一があったらどうする。
……螺子が飛んでいるにもほどがあるな。
「じゃー次はヒナキとマックス~」
ジョアンナがヒナキを前に押し出しながら楽しそうに声を上げる。
彼女は小柄でとても華奢だ。こんな女性とだなんて大怪我をさせたらどうするんだ。
「嫌だ。そんな小さくて華奢な女性に怪我はさせたくない」
彼女の言葉に私は眉を顰めた。
「大丈夫です、マックス様。大きくなることもできますので」
短髪の少女は言いながらその姿を陽炎のように揺らめかせながら変じていく。
気がつくとそこには豊かな黒髪を靡かせた長身の美女が立っていた。
……しかし服はそのままなのでサイズが合わず無駄に露出度が上がっている。
周囲のギャラリーからは大きな歓声が湧いた。彼女の奇怪な術にではなく、恐らく彼女自身に。
「これでどうかしら。ヒナキは私の警護もしているの。だから腕も立つのよー」
警護が必要なメイドってなんなんだ。
……ツッコミたいがジョアンナが影の支配者を務めているストラタス商会の勢力は、前にも増して王都で猛威を振るっているから。まぁ色々あるのだろう。
「いや、どっちにしろ女性とは嫌だ。怪我をさせても責任は取れない」
「ケチ!」
「ケチですね、マックス様」
ジョアンナとヒナキが不満の声を上げる。
その後ギャラリーからスケベ心満載の立候補が数件挙がり……。
ヒナキはその見事な格闘術でその全てを蹴散らしていた。
蹴散らされた男たちがなんだか幸せそうな顔をしていたのは、きっと気のせいではない。
……ハウンド、そんな羨ましそうな顔で見ていたらミルカ王女に言いつけるぞ。
----------------------------------------
ヒナキちゃんは別の大陸からきたジョアンナの子飼いですが、
(ミーニャ王子のお話の辺りが初回登場です)
その大陸は乙女ゲームではなくMMO世界なので争いには長けているという裏設定があります。
今回は使用人たちがわちゃわちゃしているだけのお話。
『執事たちの手合わせ』(時系列は学園祭手前くらい)
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『執事たちの手合わせ』
「たーのもー。マクシミリアン・セルバンデス卿はおられるかー」
使用人サロンでくつろいでいる私のところに、そんな妙なかけ声と共に現れたのはハウンドだった。
彼は腰に『カタナ』と呼ばれる片刃の剣を差している。なんだミルカ王女の護衛任務でもあったのか? と私は首を傾げた。
「マクシミリアン・セルバンデス卿。一つ手合わせ願いたい!」
ハウンドはそう言いながら口角を上げてニヤリ、と笑う。
……手合わせってお前。私は騎士でもなんでもないんだが。
「本職のノエル様に頼めばいいだろう」
私が冷たく言うとハウンドは顔を顰めた。
「本職に頼んだらボコボコにされちゃうでしょ? 俺それは嫌ッス」
「ルール無用でやればいい勝負ができるんじゃないか?」
ハウンドの剣術はいわゆる『正統派』のものではない。
騎士がやっているようなルールのある枠組みでの対戦では、その真価は発揮されないだろう。
「ルール無用でやっても、ノエル様には負けちゃいそーッス。あれで十三歳とかおかしいでしょ」
ハウンドはどこかでノエル様の剣技を見たらしい。確かに彼のものは人間離れしている。さすが近衛騎士の家系だと私も感心したものだ。
だが魔法を使って闇討ちをすれば……なんてしばらく思考を巡らせ我に返る。別に彼に恨みはないし闇討ちをする必要性はまったくないのだ。
「三十分だけだぞ。演習場でいいか?」
「やったッス! マクシミリアン大好き!! ルール無用でいいんスよね?」
仕方なしに嘆息しながら言うと、ハウンドに鳥肌が立つようなことを言われ殺意が湧いた。
よし、遠慮なくボコボコにしてやろう。
ルール無用なんだよな? 私がなにを使っても、文句は言うまい。
「マクシミリアン、ルール無用だからって『犬』は無しッスからね」
ハウンドに機先を制され私は大きな舌打ちをした。
演習場に着いた私たちは、入り口にいる受付の職員に声をかけた。
演習場は生徒の自主訓練か剣術の授業への使用が主な用途だが、申請すれば学園に関わるもの全てが使えるようになっている。
たださすがに執事然とした格好の私たちが使用許可を求めると職員は目を丸くした。
「別にいいけどよ。怪我すんなよ?」
首を傾げつつも彼は使用の許可を出してくれた。
演習場は円形の競技施設でこんな大きなものがあるのはさすが貴族の学園だな、といつ見ても感心してしまう。広い客席も用意してあり学園祭の時には騎士祭の会場としてここが使われるのだ。
アリーナに入場すると訓練をしている生徒の視線がこちらへと投げられ、受付の職員がしたように不思議そうに首を傾げられた。
「マクシミリアンは得物はどうするんスか?」
ハウンドが腰からすらりと『カタナ』を抜き放ち、薄い唇を舌で湿らせながら問いかける。訓練用の剣はその辺りに無造作に置いてあるが……。
「ハウンド相手だ、武器は無くていい。ハンデだよ」
私はそう言ってハウンドに素手で向かい合った。
「うっわ。ひでぇ! 舐められてる! さすがにそれはないッスよぉ!」
「……ただし、魔法は使うがな」
口角を上げてニヤリと笑ってみせると、ハウンドの頬が引き攣った。
「マクシミリアン。魔法禁止のルールでやらねーッスか? マクシミリアンに魔法を使われたら、開幕木っ端微塵じゃねーッスか」
「……ハッ。この根性なしめ。ルール無用じゃなかったのか?」
「ひでぇ!!」
ハウンドが懇願するように言うので私は仕方なしに、無造作に打ち捨てられていた細身の長剣を手にした。
それを片手で軽く振り、感触を確かめる。無駄な重さがあるがまぁこれでいいだろう。
「マックスー! ハウンド!!」
その時アリーナの入り口から大きく手を振りながらジョアンナが駆けてきた。
……この女、どうしてここに。
「私抜きで遊んでるとかずるいー!!!」
ジョアンナは息を切らせながら文句を言う。
「俺たちがここだってなんでわかったんスか?」
ハウンドが疑問を口にしながら首を傾げると、ジョアンナは自分の影を指差した。
すると影からにゅるりといつか見た短髪で前合わせの服を着た少女が這い出てくる。
「ヒナキが教えてくれたの!」
「えっ。かっけー! なにそれ! 影から出れんの?」
「私の部下! すごい特技でしょ!」
「ジョアンナ様の部下のヒナキでございます」
ジョアンナが無駄に大きな胸を張り得意げな顔をし、ハウンドはヒナキという少女へ感心した声を上げる。そしてヒナキはぺこりと丁寧に頭を下げた。
「さぁさ。始めて! ジョアンナさんが見届けてあげるから!」
「こんな美女に見られてたら負けられねーッスね!」
「……美女? ハウンドの目は節穴か?」
私の言葉にジョアンナが鋭い視線を投げてきたが取り合わず、私はハウンドと向かい合った。
正眼に『カタナ』を構えるヤツを観察する。
……袖口に暗器を五本。ジャケットの裏に三本ってとこか? 服の膨らみ具合から推察しつつ、片手で剣を構えハウンドにじりじりと近づく。
演習場で訓練をしていた生徒たちがいつの間にか、興味津々という様子で訓練の手を止めてこちらを観察していた。ギャラリーもいるし少し頑張ってみるか。
「じゃー! 始めっ!」
なぜか試合開始の合図をジョアンナが送る。
その声に合わせてハウンドが一気にこちらに斬り込んできた。
――速い。
上段から袈裟に振り下ろされる鋭い刃を私は後ろに軽く飛んで躱す。
数本の斬られた前髪が宙を舞ってそういえばこいつ真剣を使ってるな、と今さら思った。彼の使う『カタナ』は切れ味に秀でている。斬られたらひとたまりもない。
ハウンドが続けて懐から取り出した暗器をこちらに二本投擲してきたので、それを剣で弾き飛ばし距離を取る。暗器の残りはあと六本。これが尽きるまであまり近寄りたくはないがそんな訳にもいかないな。
もうすぐお嬢様の昼食の時間なのだ。時間はかけたくない。
というか『カタナ』やら暗器やら……こいつは私を殺す気なのか?
「マクシミリアン。逃げてばっかじゃーダメッスよぉ」
ハウンドが挑発するように言うか誰がそんな安い挑発に引っかかるか。
「そっちから来ればいいんじゃないか?」
私も薄く笑いながら挑発し、無防備に両手を広げてみせる。
「上等ッス。その挑発乗りましょう」
そう言いながらハウンドがこちらへ飛んだ。その隙のない踏み込みは流麗だ。
横に払われる彼の一閃を躱した後。
私は持っていた剣を放って捨て、膝を折って体を沈めた。
「えっ……」
呆気に取られたようなハウンドの声。
私は彼の足に向かって薙ぎ払うような鋭い蹴りを入れる。
足を払われたハウンドの体が地面から浮きそのまま落ちようとする。しかし彼は後ろ手に手をついてなんとか踏み止まった。
私はそのまま発条のように起き上がろうとするハウンドの胸元にさらに鋭い蹴りを叩き込んだ。
「はい、そこまでー!」
胸を押えて咳き込むハウンドを見て、ジョアンナが制止の声を上げる。
ギャラリーからは大きな拍手が上がった。
「……武器はいらないと、言っただろう」
「ずるい! むしろそっちの方が得意なんスね!?」
咳き込み終わったハウンドが不満げな声を漏らした。
あばらの一本でも折れているかと思えば実に元気なものだ。
「なぜ最初から得意なものをひけらかさないといけないんだ。お前こそ真剣に暗器にと私を殺す気なのか?」
「……どうせマクシミリアンならモロに当たらねーだろうって思ってたし」
万が一があったらどうする。
……螺子が飛んでいるにもほどがあるな。
「じゃー次はヒナキとマックス~」
ジョアンナがヒナキを前に押し出しながら楽しそうに声を上げる。
彼女は小柄でとても華奢だ。こんな女性とだなんて大怪我をさせたらどうするんだ。
「嫌だ。そんな小さくて華奢な女性に怪我はさせたくない」
彼女の言葉に私は眉を顰めた。
「大丈夫です、マックス様。大きくなることもできますので」
短髪の少女は言いながらその姿を陽炎のように揺らめかせながら変じていく。
気がつくとそこには豊かな黒髪を靡かせた長身の美女が立っていた。
……しかし服はそのままなのでサイズが合わず無駄に露出度が上がっている。
周囲のギャラリーからは大きな歓声が湧いた。彼女の奇怪な術にではなく、恐らく彼女自身に。
「これでどうかしら。ヒナキは私の警護もしているの。だから腕も立つのよー」
警護が必要なメイドってなんなんだ。
……ツッコミたいがジョアンナが影の支配者を務めているストラタス商会の勢力は、前にも増して王都で猛威を振るっているから。まぁ色々あるのだろう。
「いや、どっちにしろ女性とは嫌だ。怪我をさせても責任は取れない」
「ケチ!」
「ケチですね、マックス様」
ジョアンナとヒナキが不満の声を上げる。
その後ギャラリーからスケベ心満載の立候補が数件挙がり……。
ヒナキはその見事な格闘術でその全てを蹴散らしていた。
蹴散らされた男たちがなんだか幸せそうな顔をしていたのは、きっと気のせいではない。
……ハウンド、そんな羨ましそうな顔で見ていたらミルカ王女に言いつけるぞ。
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ヒナキちゃんは別の大陸からきたジョアンナの子飼いですが、
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