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神官戦士のルティーナさんと対面しよう3~巣蜜のパンケーキを添えて~
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「ツァネル姉さんもパンケーキ食べる? 姉さん、甘いものが大好きだもんね」
明るくツァネルさんに声をかけながら、リズベスさんはパンケーキをひっくり返す。
パンケーキに綺麗な焼色がついていることを確認するとリズベスさんは嬉しそうに笑い、皿にパンケーキを移した。
「リズベス! そ、それは内緒だと言っているだろう!」
ツァネルさんはそう言いながら、日に焼けた頰を紅潮させる。
なるほど。『甘いものが好き』というのは彼女にとっては恥ずかしいことらしい。
「……姉さんが甘いものが好きなことって内緒だっけ?」
「そうだ!」
きょとんとしながら首を傾げるリズベスさんに、ツァネルさんは食ってかかる。
「毎週私とスイーツ店巡りしてることも、内緒?」
リズベスさんの『天然』な追撃は止まらない。
「リズベス! それ以上は言うな!」
「むむぐっ!」
口を手のひらでガッと塞がれ、リズベスさんは目を白黒させた。
そんな姉妹の様子を俺を含む料理人たちは生温かい目で見守っていたが、その視線に気づいたツァネルさんが周囲を睨めつけると皆が目を逸らした。
「ツァネル。甘いものが好きなことのなにが悪いのです」
パルメダさんがツァネルさんの方へ歩みを進め、慈愛に満ちた表情で言う。
「その、騎士としての示しというか、威厳が……」
ツァネルさんは唇を少し噛み締め、悔しげな表情でそう返した。
……甘いものが好きでも、威厳は失われないと思うんだけどなぁ。
「私はこの世のすべての美味しいものを愛していますが、それを隠すつもりはありません。私は誰かに示しがつかないような人間でしょうか」
「そんなことはありません! パルメダ卿はこの国の騎士の最高位におわす一人です! すべての騎士の手本となれる存在です!」
パルメダさんが厳かな様子で言い、ツァネルさんがその言葉を強い口調で否定する。
──貴方はもうちょっと隠していいと思います。時々威厳がなくなっていますよ。
そんなことを胸の内で思いながら、俺はおたまを使って熱したフランパンに生地を落とす。
「それは大げさですけどね。私は本家からは爪弾きにされている人間ですし」
「……?」
少し寂しそうな表情での、意味深な言葉。それを耳にして俺は首を傾げる。
パルメダさんは、ご実家との関係があまりよくなかったりするのだろうか。
「くっ……。カイネ伯爵家の連中は石頭すぎなのです」
「石頭なのは貴女もです。そんな話はともかく。ツァネル、ほら」
パルメダさんは話を打ち切り小皿に一欠片の巣蜜を置くと、ツァネルさんにそっと差し出した。
「素直に甘いものが好きと言えたら、これを差し上げます。いい子だから、素直になりましょう。パンケーキものちほど差し上げますよ」
誰しも見惚れる美しい微笑みを浮かべながら、パルメダさんは悪魔のように囁く。
「ぐっ……。うう」
ツァネルさんは歯を食いしばり目を見開いて、鬼のような形相になりつつ誘惑に耐えているようだった。
「巣にたっぷりと蜜が染み込んで、甘くてとろとろですよ」
パルメダさんは頰に手を添え、ほうとため息をつく。
この人もしかして……ドSというやつなのだろうか。
美少女のような見目の美青年で、食いしん坊で、とても強い騎士で、ドSか……。
属性が盛られすぎなんじゃないか? 俺にもちょっとくらい分けてほしい。特に強いと美青年の部分を。
「キラーミツバチの巣蜜なんて、下手をすればあと何年手に入らないでしょうね。ああ、貴女は可哀想な人だ」
「不肖ツァネル、甘いものが大好きであります!」
ツァネルさんは悪魔の囁きにとうとう陥落し、見事な一礼とともにそう叫んだのだった。
明るくツァネルさんに声をかけながら、リズベスさんはパンケーキをひっくり返す。
パンケーキに綺麗な焼色がついていることを確認するとリズベスさんは嬉しそうに笑い、皿にパンケーキを移した。
「リズベス! そ、それは内緒だと言っているだろう!」
ツァネルさんはそう言いながら、日に焼けた頰を紅潮させる。
なるほど。『甘いものが好き』というのは彼女にとっては恥ずかしいことらしい。
「……姉さんが甘いものが好きなことって内緒だっけ?」
「そうだ!」
きょとんとしながら首を傾げるリズベスさんに、ツァネルさんは食ってかかる。
「毎週私とスイーツ店巡りしてることも、内緒?」
リズベスさんの『天然』な追撃は止まらない。
「リズベス! それ以上は言うな!」
「むむぐっ!」
口を手のひらでガッと塞がれ、リズベスさんは目を白黒させた。
そんな姉妹の様子を俺を含む料理人たちは生温かい目で見守っていたが、その視線に気づいたツァネルさんが周囲を睨めつけると皆が目を逸らした。
「ツァネル。甘いものが好きなことのなにが悪いのです」
パルメダさんがツァネルさんの方へ歩みを進め、慈愛に満ちた表情で言う。
「その、騎士としての示しというか、威厳が……」
ツァネルさんは唇を少し噛み締め、悔しげな表情でそう返した。
……甘いものが好きでも、威厳は失われないと思うんだけどなぁ。
「私はこの世のすべての美味しいものを愛していますが、それを隠すつもりはありません。私は誰かに示しがつかないような人間でしょうか」
「そんなことはありません! パルメダ卿はこの国の騎士の最高位におわす一人です! すべての騎士の手本となれる存在です!」
パルメダさんが厳かな様子で言い、ツァネルさんがその言葉を強い口調で否定する。
──貴方はもうちょっと隠していいと思います。時々威厳がなくなっていますよ。
そんなことを胸の内で思いながら、俺はおたまを使って熱したフランパンに生地を落とす。
「それは大げさですけどね。私は本家からは爪弾きにされている人間ですし」
「……?」
少し寂しそうな表情での、意味深な言葉。それを耳にして俺は首を傾げる。
パルメダさんは、ご実家との関係があまりよくなかったりするのだろうか。
「くっ……。カイネ伯爵家の連中は石頭すぎなのです」
「石頭なのは貴女もです。そんな話はともかく。ツァネル、ほら」
パルメダさんは話を打ち切り小皿に一欠片の巣蜜を置くと、ツァネルさんにそっと差し出した。
「素直に甘いものが好きと言えたら、これを差し上げます。いい子だから、素直になりましょう。パンケーキものちほど差し上げますよ」
誰しも見惚れる美しい微笑みを浮かべながら、パルメダさんは悪魔のように囁く。
「ぐっ……。うう」
ツァネルさんは歯を食いしばり目を見開いて、鬼のような形相になりつつ誘惑に耐えているようだった。
「巣にたっぷりと蜜が染み込んで、甘くてとろとろですよ」
パルメダさんは頰に手を添え、ほうとため息をつく。
この人もしかして……ドSというやつなのだろうか。
美少女のような見目の美青年で、食いしん坊で、とても強い騎士で、ドSか……。
属性が盛られすぎなんじゃないか? 俺にもちょっとくらい分けてほしい。特に強いと美青年の部分を。
「キラーミツバチの巣蜜なんて、下手をすればあと何年手に入らないでしょうね。ああ、貴女は可哀想な人だ」
「不肖ツァネル、甘いものが大好きであります!」
ツァネルさんは悪魔の囁きにとうとう陥落し、見事な一礼とともにそう叫んだのだった。
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