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後編
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「ひゃん!」
ぽふんと音を立て、柔らかな場所に着地する。
その衝撃に瞳を閉じてしまっていたわたくしは、ゆっくりとそれを開いた。
すると、美しい金色と視線が出会う。フーゴ様の……綺麗な瞳だ。
周囲に目をやれば……そこは明らかに誰かの私室という様子の部屋だ。そして、わたくしとフーゴ様は寝台の上にいた。
寝台に……男女が二人。その、さっそくやる気満々すぎなのではないかしら?
ドレスを着たままフーゴ様を追い回したりで、わたくし汗だくなのだけれど!
「フーゴ様」
「テレーシア嬢。申し訳ありません、我慢ができなくて……寝室にお連れしてしまいました」
フーゴ様はそう言いながら、自身のジャケットとクラバットを取り去った。その仕草から漂う色香に、わたくしは息を呑む。
「あの、フーゴ様と交わるのはもちろん嬉しいのよ。ですがわたくし汗だくでして、まずはお風呂に──」
「テレーシア嬢のお気が変わるのが怖いので、俺はすぐに貴女をものにしたいです」
フーゴ様の目は爛々としている。その瞳は獲物を逃すまいとする肉食獣のようだ。
それだけ……彼の中に余裕がないのだろう。
相思相愛の機会なんて、彼の人生できっとはじめてだろうから。
……それは、わたくしも同じなのだけれど。前世でも年齢イコール彼氏なしでしたしね。
この人生では物心ついた頃にはオットマー殿下の婚約者になっており、誰かに初恋をする間もなかった。
前世の記憶が蘇る前は……『オットマー殿下とよい関係が築けるのかもしれない』という少女らしい淡い期待も持っていたけれど。そんな時期も、たしかにあったのだ。
だけどオットマー殿下が、わたくしとの関係を『よいもの』にしようとする気配は一切なく。
わたくしの側の気持ちも、どんどん冷えたものとなっていったのだ。
そして前世の記憶に目覚めたことで、オットマー殿下への未練は一切なくなった。
ヒロインであるクラーラの存在がなかったとしても。オットマー殿下はほかの誰かに惹かれ、わたくしを突き放していたのだろう。
甘えられることにより男としての自信をつけるタイプのオットマー殿下と、互いに支え合う関係でありたいと思うわたくしとでは、そもそもの性格の相性が悪かったのだ。
「嫌でしょうか……」
感傷に浸るわたくしの沈黙を拒絶と感じ取ったのか、フーゴ様が眉尻を下げる。わたくしは、そんな彼に首を振ってみせた。
「ふふ、嫌なわけがないです」
微笑みながら手を伸ばし、滑らかな手触りの頬を撫でる。フーゴ様のお顔は、間近で見ても芸術品のように隙がない。
その美貌にうっとりと見惚れていると、恐る恐るという様子で唇を合わせられた。
重なった唇は……少し、いいえ。かなり震えている。
フーゴ様の怯えを溶かすように、わたくしは彼の黒髪を優しく撫でた。するとそれを許しと察したのか重なる唇の角度が変わり、深い口づけに誘おうとフーゴ様の濡れた舌がわたくしの唇に触れた。誘いを断る理由なんてないので、わたくしは唇を開いて彼を迎え入れる。
「んっ……」
舌を絡められると、気持ちよくて堪らない。フーゴ様の舌はわたくしのものより分厚くて、少し長い気がする。それは器用に動き、広くはない口内を蹂躙した。
「あ、ふ……んっ。ああっ」
口蓋を舌先でくすぐられると鼻から抜けるような声が零れ、舌を吸われれば腰が抜けるような快感が背筋に湧き出る。口づけに甘く蕩けさせられながら、フーゴ様の体にすがりつく。すると少し遠慮がちな力で、体を抱きすくめられた。
恋している人と密着し、その体温を感じながらの口づけはとても気持ちいい。
わたくしはフーゴ様と舌を絡め合い、触れ合わせる行為にひたすらに溺れた。
「はぁ……っ」
唇を離されると、熱い吐息が唇から零れた。唇の端からはだらしなく雫が零れているけれど、それを拭う余裕もない。濡れた唇と口元の雫は、フーゴ様の太い指によって優しく拭われた。その善意溢れる仕草にすら感じてしまい、わたくしはその指を追いかけるようにして口に含んだ。
「んっ……」
「テレーシア、嬢」
「フーゴ様……好きです」
想いを囁きながら、彼の指に舌を這わせ、舐めしゃぶる。
令嬢のやる仕草ではないとは思いながらも、愛おしい彼の一部を口にしたかったのだ。
両手で大きな手を持ち指をしゃぶりながら見つめれば、フーゴ様の喉がごくりと動く。
そして……彼の背中のあたりから、にょろりと何本もの触手が這い出した。
──もう一度言う。触手が這い出したのである。
細いものから太いものまで、触手は色とりどりの様相だ。自身の背から這い出した触手に気づいたフーゴ様は、顔色を真っ青に変えた。
説明を割愛させていただいた、フーゴ様のお耳以外の『ちょっと変わったところ』。
彼は性的な興奮を覚えた時や戦いの時などに、背中のあたりから触手が出るのだ。
戦いの時には、この触手で何千もの部隊を薙ぎ払ったり……なんてこともできるらしい。そんなすごい力を持つフーゴ様が素直に国に仕えているのは、国への献身を尽くせば誰かからの友情や愛情を得られるかもしれないからという健気な気持ちからだろう。とても腹立たしいことに、彼の健気さにこの国は胡座をかいている。
フーゴ様はこの触手を使って、ボーナストラックではテレーシアの穴という穴を犯した。
ただでさえフーゴに嫌悪感を持っていたテレーシアは触手に犯され夫にさらなる嫌悪を抱き、夫婦関係は冷えきった……どころではないまさに暗黒という様相のものとなるのだ。
それが、テレーシアのボーナストラックの顛末である。
……触手プレイ、いいと思うのだけど。一般的な趣味ではないのかしら。
「み、見ないでください!」
乙女のように恥じらいながら、フーゴ様は触手を慌てて隠そうとする。けれど触手は言うことをきかないようで、うねうねとこちらへと向かってきた。黒くて、表面が滑りながら光っていて……それは顔のない蛇やうなぎを想起させる。
手を伸ばしてきゅっと握れば、フーゴ様の体がびくんと震えた。触手と彼の感覚は連動しているらしい。
「これも、フーゴ様の一部なのですね」
微笑みながら、『怖がっていない』という感情を大げさなくらいに声音や表情に表す。
するとフーゴ様の目が瞠られ、その首が大きく傾げられた。
「はい、そうです。テレーシア嬢は、怖く……ないのですか?」
「ふふ。だって、これもフーゴ様なのでしょう?」
すり寄ってくる触手に頬ずりを返して、そっと舌を這わせる。
触手から零れ落ちる粘液は、意外なことに甘くて美味しい。よかった、生臭かったりするタイプじゃなくて。
「……貴女は、女神かなにかなのかな」
フーゴ様は、顔を真っ赤にしながら呻くように言う。
「大げさです、フーゴ様」
「いや、貴女は女神だ。俺の存在を……こんなにも受け入れてくれる人がいるなんて。テレーシア様、ありがとうございます」
……『嬢』が『様』になってしまった。
違う、崇拝されたいわけじゃないの。あくまで対等の立場で愛し愛されたい。
フーゴ様の両頬を、ぎゅっと抓る。すると彼は不思議そうにこちらを見つめた。
「テレーシア様、ではなく。テレーシアと呼び捨ててください。わたくし、貴女の女神にではなく……伴侶になりにきたのですもの」
「テレーシア様。いえ……テレーシア」
フーゴ様はわたくしの名を呼ぶと、幸福により蕩けた顔で笑う。推しの幸せそうな顔に、わたくしの頬も緩んだ。
「んっ……!」
性急に唇を合わせられ、そのまま寝台へと押し倒される。筋肉がしっかりとついた分厚い体に思い切り伸し掛かられると、少し苦しい。だけど寄り添う体から感じられる体温や息遣いの近さが、心から愛おしいと思えた。
「あっ」
ふたたび舌を絡め合っていると触手が数本ドレスの隙間から侵入し、足に優しく絡みつく。別の触手はドレスの胸元を器用にはだけさせ、まろび出た胸の頂にある二つの乳首にちゅうと吸いついた。さらに別の触手が、わたくしの『無駄な脂肪』とオットマー殿下に評されていた平均よりかなり大きめの胸にも巻きつく。
──あ。これ、気持ちよすぎてだめかもしれない。
わたくしの両手は、フーゴ様の大きな手に指を絡めて握られ寝台に押しつけられるようにされている。そんな状態でねっとりとした感触の触手に体中を嬲られながら、舌を絡めながらの口づけまでされてしまえば……
人には過ぎた快楽に、蕩けてしまわないわけがないのだ。
柔らかく濡れた触手に巻きつかれながらずりずりと擦られると、大きな舌で愛撫をされているよう。それを足や胸に、執拗なくらいに繰り返される。さらに先が吸盤のようになっている触手に胸の頂を吸い上げられれば、強い刺激に体がびくんと跳ねた。
「あ、あっ! やぁんっ!」
強すぎる快楽から本能的に逃れようとし身を捩っても、フーゴ様の大きな体で押さえ込まれているので逃げられない。
のべつ幕なしに与えられる刺激に悶えるわたくしをじっくりと眺めながら、フーゴ様は興奮を隠せない様子で少し息を荒げた。触手とは違う大きくて硬いものが太ももに当たり、それがフーゴ様のものだと気づいて頬が熱を持つ。
フーゴ様が、わたくしの痴態で興奮しているのだ。
「テレーシア。ちゃんと君を気持ちよくできているかな?」
「気持ちいい、気持ちいいです……っ」
「そうか、それはよかった」
フーゴ様の口調がなんだか砕けてきている。心の距離が近づいたみたいで、それが嬉しい。
「ひんっ!」
足を嬲っていた触手がドロワーズの隙間から侵入し、蜜壺にぴたりと張りついた。直接触れられてはいなかったのに、そこは熟れてぐずぐずに濡れている。触手と感覚が連動しているということは……それがフーゴ様にも伝わっているはず。
「たっぷりと濡れているね。ドロワーズはもう水浸しだから、脱がせてしまおうか」
……やっぱり、バレていた。そして触手で簡単にドロワーズを脱がされてしまった。なんて便利な触手なんだろう。
「ああっ! や、やあぁっ!」
触手が蜜壺を丁寧に擦り上げはじめたのだ。粘液をたっぷりと滴らせた太い触手がぐちゅぐちゅと水音を立てながら花びらを擦り、細い触手が後ろの穴に触れる。そして、固い蕾につぷりと先端を埋められた。浅いところで出し入れが繰り返され、わたくしは驚きに目を瞠る。
お、お尻までいじるなんて! 聞いていないわ!
「うそ、両方なんて。ひ、あああっ!」
太い触手で前をゆるゆると刺激され、細い触手で後ろの穴をいじられる。その間も乳首を吸い上げたり、胸を揉み上げたりする触手の動きもやまない。体のあちこちが気持ちよくて、どうにかなってしまいそう。
「や、やぁっ。こんな、こんなの壊れて……あっ、ああっ」
「可愛い声だ。触手なんて持っていても煩わしいだけだと思っていたけれど……。こうやって君の感じる顔を引き出してじっくりと観察できるのだから、悪くないね」
「フーゴさま、あんまり……お顔を見ないでっ…………」
「いいや、見たい。こんな可愛いもの、見逃せるはずないだろう」
両頬を両手で包まれ、しっかりと顔を固定される。フーゴ様はわたくしの顔をしっかりと見つめながら、花びらを擦る触手の動きを激しくした。触手はぷくりと膨らんだ花びらの上の硬い芽にも触れ、押し潰すようにして刺激する。
「やんっ! あ、ああっ! ひんっ……!」
──見られている、恥ずかしい。
──だけど、理性ではもう抗いようがないくらいに気持ちいい。
──フーゴ様の金の瞳に、囚えられているみたい。
いろいろな感情が浮かんでは、快楽に溶けて流されていく。
「や、あ。あんっ。ふーごさまっ、ふーごさま……っ」
理性が蕩けて、声が自然に甘ったるいものになってしまう。自分からこんな声が出るだなんて、はじめて知ったわ。恥ずかしいのに、止められない。
「……達して」
「──ッ!」
低い声で命じられながら花芽を触手に吸い上げられ、目の前が真っ白になった。意識が天へと飛び去り、しばらくしてからゆっくりと降りてくる。息を切らせながら胸を上下させていると体からぬるんと触手たちが離れ、よくできましたというように頭を優しく撫でられた。もちろん、フーゴ様本体の手で。
「可愛いね。俺のテレーシア」
「……あ」
フーゴ様は身を離すと背中を支えるようにしてわたくしの身を起こさせ、軽々とお膝の上に乗せてしまった。そして後ろから両足を抱え上げ、足を広げさせる。『スカートがあるから恥ずかしくないわね!』なんて内心勝ち誇っていたら、触手がスカートを捲り上げて下腹部をむき出しにしてくれた。……器用すぎる触手に、ちょっぴり恨み言を言いたくなった。
触手の粘液と愛液が混じったものが蜜壺から零れて、糸を引きながら零れていく。その感触を感じ、ぞくりと背筋が震えた。
「君の愛らしいここをたっぷりと解して、俺のを挿れても痛くないようにしようか」
男性の指を二本まとめたくらいの太さの触手が、ゆっくりと蜜口に入ってくる。触手は柔らかなものの上にたっぷりと粘液を出すので、痛みはない。けれど内側から広げられる感覚が少しだけ苦しくはあった。
触手は少し奥へと進むと、内側を慣らすためかその場で体をぶるぶると蠕動させた。
これは『バイブ』のようなものなのでは……とわたくしの前世の知識が顔を出す。それも、変幻自在に形を変えるバイブだ。
内側に合わせて震えながら形を変える触手で擦られると、未知の部分である内側の悦いところを刺激されてじわりとした気持ちよさが腰のあたりに広がった。
「は、ふ」
「大丈夫? 気持ち悪かったり、痛かったりはしない?」
「大丈夫、です」
「じゃあ、続けるね」
触手がぐぽぐぽと音を立てながら蜜壺を出入りし、そのたびに甘い感覚が湧き上がった。触手は時折隘路に甘く吸いつきながら奥へと進み、最奥の壁へとたどり着く。触手の先からさらに細い触手が伸びて、子宮口を淡くくすぐられた。
「ふふ。この奥がテレーシアの赤ちゃんの部屋の入り口か」
「そこ、まだ入っちゃだめ……っ」
「うん、そうだね」
フーゴ様はわたくしの首筋に口づけを繰り返しながら、触手での内側の愛撫を繰り返す。同時に大きな手で胸を揉み込まれ、そのしっかりとした感触からは触手とは別種の快感を煽られた。
「フーゴ様の手、きもちい……です」
「俺の手が?」
「力強くて、優しくて……もっと触ってほしくなるの」
ふと、沈黙が落ちる。妙なことを言ってしまったかと心臓をばくばくさせていると、後ろからぎゅうと抱きしめられた。
「俺に触れられて喜ぶのなんて、君くらいだ」
首筋に顔を埋められ、感極まったような震え声で囁かれる。
「わたくし、フーゴ様が大好きですもの」
「……悪魔の子でも?」
「そんなの関係ありません」
「そんなことを言うのは、君だけだ」
肌にぽたりぽたりと雫が落ちた。それが涙だと気づいたわたくしは、手を伸ばしてフーゴ様の頭を撫でた。
……愛を知らないこの人を、これからたくさん愛したい。そう思いながら。
「フーゴ様」
「なに? テレーシア」
「フーゴ様の……挿れてほしいです」
「ぐっ……。それは、もうちょっと解してからね。君につらい思いはさせたくないから」
「でも、こんなに腫らしていたらおつらいでしょう?」
先ほどからお尻にぐりぐりと当たっている大きなものにお尻を擦りつける。するとフーゴ様から、切なげな吐息が零れた。
「もう……わたくしは大丈夫ですよ?」
「テレーシア……!」
「きゃっ!」
にゅぽんと秘部から触手が抜け、その刺激にわたくしは軽く達した。
その余韻に震える間もなく視界が反転し、寝台へと押し倒される。
見上げれば恋する人の真剣で……必死な表情がそこにあって、胸がぎゅうと締めつけられた。
トラウザーズの前が触手によって開かれ、彼の熱が……姿を現す。
「あ……」
それを見て、わたくしは小さく声を上げてしまった。
先が大きく張り出していてつるりとしており、幹は太くて長い。赤黒い幹には太い血管がたくさん這っており、つるりとした触手よりもなんだか生々しかった。
「怖いか?」
「いいえ! その、男性のものを見るのがはじめてなので……少しびっくりしてしまっただけで」
「……そうか」
フーゴ様がふっと笑う。その笑顔は、見惚れてしまいそうに素敵だ。
膝裏を抱えて足を持ち上げられ、蕩けた秘部が晒される。細い触手が伸びて花びらを左右に開き、くぱりと開いた秘所に熱の先端が触れた。
「んっ……ふ」
フーゴ様が腰を進め、熱が少しずつ埋没していく。大きくて硬いそれの侵入は少しばかりつらいけれど、触手によって慣らされた隘路は確実に熱を受け入れていった。そして、とんと優しく先端で最奥を叩かれる。
「大丈夫……かな?」
不安げに言われ、優しく頬を撫でられる。わたくしはその大きな手に、甘えるようにすりすりと頬を寄せた。
「平気です。わたくし、とっても幸せです」
「俺も、幸せだよ」
「お揃いですわね!」
「……そうだな」
フーゴ様は、わたくしに口づけを与えながらゆっくりと腰を動かした。熱杭が膣壁を何度も擦り、内側を彼の形に変えていく。
「やぁ、あっ。ひぁんっ!」
彼の逞しい体に縋りつきながら、拓かれていく悦びにわたくしは浸る。
互いの荒い息遣いと秘所から零れる粘着質でやらしい水音、わたくしの上げる嬌声、肌同士がぶつかり合う音が部屋には響く。
睦言を言う余裕もなく、わたくしたちは互いを貪りあった。
「あっ……ああっ!」
最奥をぐいと突かれ、わたくしは一際大きな声を上げながら達してしまった。
足先がきゅうと丸まり、びくびくと体が何度も震えた。
『貴方も』と言うように肉筒がフーゴ様のものをきゅうと締めつけ、その精をねだる。
「ッ……!」
フーゴ様も小さく声を上げ、体を震わせる。そして……わたくしの内側に大量の白濁を放った。
「あ、あ……っ」
長くて量の多い射精は、彼の悪魔の血が為せる技なのだろうか。
わたくしの内側はあっという間に精で満たされ、入りきらない白濁がとろとろと蜜壺の外へ流れていった。それでも、フーゴ様の射精は終わらない。わたくしを孕ませようとするように熱はずっと奥へと押しつけられていて、時折ぐりぐりと動かされた。
「わたくし、フーゴ様のものになれましたね」
息を整えてから囁やけば、視線がゆるりと向けられる。
「ああ。……君は、俺のものだ」
フーゴ様はくしゃりと泣き笑いに表情を歪めて、歓喜に震える声でそう言った。
*
翌日。
フーゴ様から正式に我が家に婚約の申し入れがあり、わたくしたちは婚約者となった。
もう既成事実ができていること、そしてわたくしがオットマー殿下から婚約破棄をされた醜聞塗れの令嬢であること。
それらの事情があり、ボーナストラックの内容通りに家族の反対などはなかった。
……よかったわ。ちゃんとフーゴ様の婚約者になれて。
そして、婚約の翌日からフーゴ様のお屋敷にわたくしは住むこととなったのだ。
──さらに後日。
『わたくしがオットマー殿下のことを、ちっとも好きじゃなかったこと』や『悪魔伯爵に、実はずっと想いを寄せていたこと』、そして『わたくしが婚約破棄事件の直後に、悪魔伯爵と婚約をしたこと』が王都では噂の的になっていた。オットマー殿下とクラーラ嬢の話なんてものは、それによって霞んでしまったのだ。
オットマー殿下がその噂になぜだか怒って屋敷に押しかけてきて、『裏切り者』だなんていうそのままお返ししたいお言葉をいただいたけれど……
「裏切り者? 裏切ったのは、そちらだろう」
怒りも露わなフーゴ様によって、オットマー殿下はけんもほろろに追い返されてしまったのだ。
王家からの抗議があったらと少しはらはらしたけれど、そんなことにはならなかった。
……考えてみれば、抗議なんてあるわけないのよね。
我が国の国防の重要な部分は、フーゴ様が担っている。
そんな彼の機嫌を王家が損ねたいはずがないのだ。フーゴ様に他国にでも行かれれば、困るのはこの国なのだから。
そういえば……。オットマー殿下とクラーラ嬢の仲は、今破綻の危機らしいわ。
わたくしのところにオットマー殿下が行ったことを知ったクラーラ嬢が、『オットマー殿下は元婚約者に未練があるのでは』という邪推をしてしまったそうなの。
プライドが高いオットマー殿下は、そういう邪推が大嫌い。だから二人は大喧嘩になって、仲も冷え切りつつあるんですって。
……あの婚約破棄劇は、なんだったのかしら。乙女ゲームのシナリオは、破綻してしまったの? 真実の愛って一体……
「テレーシア。なにを考えているんだい?」
甘さをたっぷりと含んだ声がして、後ろからぎゅっと抱きしめられる。
わたくしは振り返ると、愛しのフーゴ様に微笑んでみせた。
「オットマー殿下とクラーラ嬢のことを考えていました」
フーゴ様に隠し事はよろしくないと思い正直に告げる。すると彼の顔は苦虫を噛み潰したような顔になった。
「……そんなことより、俺のことを考えてほしいな」
拗ねた顔で言われて、わたくしは思わず笑ってしまう。
そうね、あの二人のことなんて考えても仕方がないものね。
フーゴ様を愛することだけ、わたくしだって考えていたい。
「フーゴ様のことだけ、考えますわ。だからフーゴ様も、わたくしのことだけ考えてくださいませ」
「俺は君のことしか考えていないよ」
「ふふ。それはとっても嬉しいです」
両手で頬を包まれ、金の瞳に見つめられる。その瞳の奥に揺らめくのは……明確な不安だ。
愛されることに慣れていない彼は、わたくしの愛がいつ飛び去ってしまうのか恐れている。
「愛しています、フーゴ様。ずっと、ずっとです」
だからわたくしは、愛を囁くのだ。
彼の恐れがいつか消えますようにと、そう心からの願いを込めて。
ぽふんと音を立て、柔らかな場所に着地する。
その衝撃に瞳を閉じてしまっていたわたくしは、ゆっくりとそれを開いた。
すると、美しい金色と視線が出会う。フーゴ様の……綺麗な瞳だ。
周囲に目をやれば……そこは明らかに誰かの私室という様子の部屋だ。そして、わたくしとフーゴ様は寝台の上にいた。
寝台に……男女が二人。その、さっそくやる気満々すぎなのではないかしら?
ドレスを着たままフーゴ様を追い回したりで、わたくし汗だくなのだけれど!
「フーゴ様」
「テレーシア嬢。申し訳ありません、我慢ができなくて……寝室にお連れしてしまいました」
フーゴ様はそう言いながら、自身のジャケットとクラバットを取り去った。その仕草から漂う色香に、わたくしは息を呑む。
「あの、フーゴ様と交わるのはもちろん嬉しいのよ。ですがわたくし汗だくでして、まずはお風呂に──」
「テレーシア嬢のお気が変わるのが怖いので、俺はすぐに貴女をものにしたいです」
フーゴ様の目は爛々としている。その瞳は獲物を逃すまいとする肉食獣のようだ。
それだけ……彼の中に余裕がないのだろう。
相思相愛の機会なんて、彼の人生できっとはじめてだろうから。
……それは、わたくしも同じなのだけれど。前世でも年齢イコール彼氏なしでしたしね。
この人生では物心ついた頃にはオットマー殿下の婚約者になっており、誰かに初恋をする間もなかった。
前世の記憶が蘇る前は……『オットマー殿下とよい関係が築けるのかもしれない』という少女らしい淡い期待も持っていたけれど。そんな時期も、たしかにあったのだ。
だけどオットマー殿下が、わたくしとの関係を『よいもの』にしようとする気配は一切なく。
わたくしの側の気持ちも、どんどん冷えたものとなっていったのだ。
そして前世の記憶に目覚めたことで、オットマー殿下への未練は一切なくなった。
ヒロインであるクラーラの存在がなかったとしても。オットマー殿下はほかの誰かに惹かれ、わたくしを突き放していたのだろう。
甘えられることにより男としての自信をつけるタイプのオットマー殿下と、互いに支え合う関係でありたいと思うわたくしとでは、そもそもの性格の相性が悪かったのだ。
「嫌でしょうか……」
感傷に浸るわたくしの沈黙を拒絶と感じ取ったのか、フーゴ様が眉尻を下げる。わたくしは、そんな彼に首を振ってみせた。
「ふふ、嫌なわけがないです」
微笑みながら手を伸ばし、滑らかな手触りの頬を撫でる。フーゴ様のお顔は、間近で見ても芸術品のように隙がない。
その美貌にうっとりと見惚れていると、恐る恐るという様子で唇を合わせられた。
重なった唇は……少し、いいえ。かなり震えている。
フーゴ様の怯えを溶かすように、わたくしは彼の黒髪を優しく撫でた。するとそれを許しと察したのか重なる唇の角度が変わり、深い口づけに誘おうとフーゴ様の濡れた舌がわたくしの唇に触れた。誘いを断る理由なんてないので、わたくしは唇を開いて彼を迎え入れる。
「んっ……」
舌を絡められると、気持ちよくて堪らない。フーゴ様の舌はわたくしのものより分厚くて、少し長い気がする。それは器用に動き、広くはない口内を蹂躙した。
「あ、ふ……んっ。ああっ」
口蓋を舌先でくすぐられると鼻から抜けるような声が零れ、舌を吸われれば腰が抜けるような快感が背筋に湧き出る。口づけに甘く蕩けさせられながら、フーゴ様の体にすがりつく。すると少し遠慮がちな力で、体を抱きすくめられた。
恋している人と密着し、その体温を感じながらの口づけはとても気持ちいい。
わたくしはフーゴ様と舌を絡め合い、触れ合わせる行為にひたすらに溺れた。
「はぁ……っ」
唇を離されると、熱い吐息が唇から零れた。唇の端からはだらしなく雫が零れているけれど、それを拭う余裕もない。濡れた唇と口元の雫は、フーゴ様の太い指によって優しく拭われた。その善意溢れる仕草にすら感じてしまい、わたくしはその指を追いかけるようにして口に含んだ。
「んっ……」
「テレーシア、嬢」
「フーゴ様……好きです」
想いを囁きながら、彼の指に舌を這わせ、舐めしゃぶる。
令嬢のやる仕草ではないとは思いながらも、愛おしい彼の一部を口にしたかったのだ。
両手で大きな手を持ち指をしゃぶりながら見つめれば、フーゴ様の喉がごくりと動く。
そして……彼の背中のあたりから、にょろりと何本もの触手が這い出した。
──もう一度言う。触手が這い出したのである。
細いものから太いものまで、触手は色とりどりの様相だ。自身の背から這い出した触手に気づいたフーゴ様は、顔色を真っ青に変えた。
説明を割愛させていただいた、フーゴ様のお耳以外の『ちょっと変わったところ』。
彼は性的な興奮を覚えた時や戦いの時などに、背中のあたりから触手が出るのだ。
戦いの時には、この触手で何千もの部隊を薙ぎ払ったり……なんてこともできるらしい。そんなすごい力を持つフーゴ様が素直に国に仕えているのは、国への献身を尽くせば誰かからの友情や愛情を得られるかもしれないからという健気な気持ちからだろう。とても腹立たしいことに、彼の健気さにこの国は胡座をかいている。
フーゴ様はこの触手を使って、ボーナストラックではテレーシアの穴という穴を犯した。
ただでさえフーゴに嫌悪感を持っていたテレーシアは触手に犯され夫にさらなる嫌悪を抱き、夫婦関係は冷えきった……どころではないまさに暗黒という様相のものとなるのだ。
それが、テレーシアのボーナストラックの顛末である。
……触手プレイ、いいと思うのだけど。一般的な趣味ではないのかしら。
「み、見ないでください!」
乙女のように恥じらいながら、フーゴ様は触手を慌てて隠そうとする。けれど触手は言うことをきかないようで、うねうねとこちらへと向かってきた。黒くて、表面が滑りながら光っていて……それは顔のない蛇やうなぎを想起させる。
手を伸ばしてきゅっと握れば、フーゴ様の体がびくんと震えた。触手と彼の感覚は連動しているらしい。
「これも、フーゴ様の一部なのですね」
微笑みながら、『怖がっていない』という感情を大げさなくらいに声音や表情に表す。
するとフーゴ様の目が瞠られ、その首が大きく傾げられた。
「はい、そうです。テレーシア嬢は、怖く……ないのですか?」
「ふふ。だって、これもフーゴ様なのでしょう?」
すり寄ってくる触手に頬ずりを返して、そっと舌を這わせる。
触手から零れ落ちる粘液は、意外なことに甘くて美味しい。よかった、生臭かったりするタイプじゃなくて。
「……貴女は、女神かなにかなのかな」
フーゴ様は、顔を真っ赤にしながら呻くように言う。
「大げさです、フーゴ様」
「いや、貴女は女神だ。俺の存在を……こんなにも受け入れてくれる人がいるなんて。テレーシア様、ありがとうございます」
……『嬢』が『様』になってしまった。
違う、崇拝されたいわけじゃないの。あくまで対等の立場で愛し愛されたい。
フーゴ様の両頬を、ぎゅっと抓る。すると彼は不思議そうにこちらを見つめた。
「テレーシア様、ではなく。テレーシアと呼び捨ててください。わたくし、貴女の女神にではなく……伴侶になりにきたのですもの」
「テレーシア様。いえ……テレーシア」
フーゴ様はわたくしの名を呼ぶと、幸福により蕩けた顔で笑う。推しの幸せそうな顔に、わたくしの頬も緩んだ。
「んっ……!」
性急に唇を合わせられ、そのまま寝台へと押し倒される。筋肉がしっかりとついた分厚い体に思い切り伸し掛かられると、少し苦しい。だけど寄り添う体から感じられる体温や息遣いの近さが、心から愛おしいと思えた。
「あっ」
ふたたび舌を絡め合っていると触手が数本ドレスの隙間から侵入し、足に優しく絡みつく。別の触手はドレスの胸元を器用にはだけさせ、まろび出た胸の頂にある二つの乳首にちゅうと吸いついた。さらに別の触手が、わたくしの『無駄な脂肪』とオットマー殿下に評されていた平均よりかなり大きめの胸にも巻きつく。
──あ。これ、気持ちよすぎてだめかもしれない。
わたくしの両手は、フーゴ様の大きな手に指を絡めて握られ寝台に押しつけられるようにされている。そんな状態でねっとりとした感触の触手に体中を嬲られながら、舌を絡めながらの口づけまでされてしまえば……
人には過ぎた快楽に、蕩けてしまわないわけがないのだ。
柔らかく濡れた触手に巻きつかれながらずりずりと擦られると、大きな舌で愛撫をされているよう。それを足や胸に、執拗なくらいに繰り返される。さらに先が吸盤のようになっている触手に胸の頂を吸い上げられれば、強い刺激に体がびくんと跳ねた。
「あ、あっ! やぁんっ!」
強すぎる快楽から本能的に逃れようとし身を捩っても、フーゴ様の大きな体で押さえ込まれているので逃げられない。
のべつ幕なしに与えられる刺激に悶えるわたくしをじっくりと眺めながら、フーゴ様は興奮を隠せない様子で少し息を荒げた。触手とは違う大きくて硬いものが太ももに当たり、それがフーゴ様のものだと気づいて頬が熱を持つ。
フーゴ様が、わたくしの痴態で興奮しているのだ。
「テレーシア。ちゃんと君を気持ちよくできているかな?」
「気持ちいい、気持ちいいです……っ」
「そうか、それはよかった」
フーゴ様の口調がなんだか砕けてきている。心の距離が近づいたみたいで、それが嬉しい。
「ひんっ!」
足を嬲っていた触手がドロワーズの隙間から侵入し、蜜壺にぴたりと張りついた。直接触れられてはいなかったのに、そこは熟れてぐずぐずに濡れている。触手と感覚が連動しているということは……それがフーゴ様にも伝わっているはず。
「たっぷりと濡れているね。ドロワーズはもう水浸しだから、脱がせてしまおうか」
……やっぱり、バレていた。そして触手で簡単にドロワーズを脱がされてしまった。なんて便利な触手なんだろう。
「ああっ! や、やあぁっ!」
触手が蜜壺を丁寧に擦り上げはじめたのだ。粘液をたっぷりと滴らせた太い触手がぐちゅぐちゅと水音を立てながら花びらを擦り、細い触手が後ろの穴に触れる。そして、固い蕾につぷりと先端を埋められた。浅いところで出し入れが繰り返され、わたくしは驚きに目を瞠る。
お、お尻までいじるなんて! 聞いていないわ!
「うそ、両方なんて。ひ、あああっ!」
太い触手で前をゆるゆると刺激され、細い触手で後ろの穴をいじられる。その間も乳首を吸い上げたり、胸を揉み上げたりする触手の動きもやまない。体のあちこちが気持ちよくて、どうにかなってしまいそう。
「や、やぁっ。こんな、こんなの壊れて……あっ、ああっ」
「可愛い声だ。触手なんて持っていても煩わしいだけだと思っていたけれど……。こうやって君の感じる顔を引き出してじっくりと観察できるのだから、悪くないね」
「フーゴさま、あんまり……お顔を見ないでっ…………」
「いいや、見たい。こんな可愛いもの、見逃せるはずないだろう」
両頬を両手で包まれ、しっかりと顔を固定される。フーゴ様はわたくしの顔をしっかりと見つめながら、花びらを擦る触手の動きを激しくした。触手はぷくりと膨らんだ花びらの上の硬い芽にも触れ、押し潰すようにして刺激する。
「やんっ! あ、ああっ! ひんっ……!」
──見られている、恥ずかしい。
──だけど、理性ではもう抗いようがないくらいに気持ちいい。
──フーゴ様の金の瞳に、囚えられているみたい。
いろいろな感情が浮かんでは、快楽に溶けて流されていく。
「や、あ。あんっ。ふーごさまっ、ふーごさま……っ」
理性が蕩けて、声が自然に甘ったるいものになってしまう。自分からこんな声が出るだなんて、はじめて知ったわ。恥ずかしいのに、止められない。
「……達して」
「──ッ!」
低い声で命じられながら花芽を触手に吸い上げられ、目の前が真っ白になった。意識が天へと飛び去り、しばらくしてからゆっくりと降りてくる。息を切らせながら胸を上下させていると体からぬるんと触手たちが離れ、よくできましたというように頭を優しく撫でられた。もちろん、フーゴ様本体の手で。
「可愛いね。俺のテレーシア」
「……あ」
フーゴ様は身を離すと背中を支えるようにしてわたくしの身を起こさせ、軽々とお膝の上に乗せてしまった。そして後ろから両足を抱え上げ、足を広げさせる。『スカートがあるから恥ずかしくないわね!』なんて内心勝ち誇っていたら、触手がスカートを捲り上げて下腹部をむき出しにしてくれた。……器用すぎる触手に、ちょっぴり恨み言を言いたくなった。
触手の粘液と愛液が混じったものが蜜壺から零れて、糸を引きながら零れていく。その感触を感じ、ぞくりと背筋が震えた。
「君の愛らしいここをたっぷりと解して、俺のを挿れても痛くないようにしようか」
男性の指を二本まとめたくらいの太さの触手が、ゆっくりと蜜口に入ってくる。触手は柔らかなものの上にたっぷりと粘液を出すので、痛みはない。けれど内側から広げられる感覚が少しだけ苦しくはあった。
触手は少し奥へと進むと、内側を慣らすためかその場で体をぶるぶると蠕動させた。
これは『バイブ』のようなものなのでは……とわたくしの前世の知識が顔を出す。それも、変幻自在に形を変えるバイブだ。
内側に合わせて震えながら形を変える触手で擦られると、未知の部分である内側の悦いところを刺激されてじわりとした気持ちよさが腰のあたりに広がった。
「は、ふ」
「大丈夫? 気持ち悪かったり、痛かったりはしない?」
「大丈夫、です」
「じゃあ、続けるね」
触手がぐぽぐぽと音を立てながら蜜壺を出入りし、そのたびに甘い感覚が湧き上がった。触手は時折隘路に甘く吸いつきながら奥へと進み、最奥の壁へとたどり着く。触手の先からさらに細い触手が伸びて、子宮口を淡くくすぐられた。
「ふふ。この奥がテレーシアの赤ちゃんの部屋の入り口か」
「そこ、まだ入っちゃだめ……っ」
「うん、そうだね」
フーゴ様はわたくしの首筋に口づけを繰り返しながら、触手での内側の愛撫を繰り返す。同時に大きな手で胸を揉み込まれ、そのしっかりとした感触からは触手とは別種の快感を煽られた。
「フーゴ様の手、きもちい……です」
「俺の手が?」
「力強くて、優しくて……もっと触ってほしくなるの」
ふと、沈黙が落ちる。妙なことを言ってしまったかと心臓をばくばくさせていると、後ろからぎゅうと抱きしめられた。
「俺に触れられて喜ぶのなんて、君くらいだ」
首筋に顔を埋められ、感極まったような震え声で囁かれる。
「わたくし、フーゴ様が大好きですもの」
「……悪魔の子でも?」
「そんなの関係ありません」
「そんなことを言うのは、君だけだ」
肌にぽたりぽたりと雫が落ちた。それが涙だと気づいたわたくしは、手を伸ばしてフーゴ様の頭を撫でた。
……愛を知らないこの人を、これからたくさん愛したい。そう思いながら。
「フーゴ様」
「なに? テレーシア」
「フーゴ様の……挿れてほしいです」
「ぐっ……。それは、もうちょっと解してからね。君につらい思いはさせたくないから」
「でも、こんなに腫らしていたらおつらいでしょう?」
先ほどからお尻にぐりぐりと当たっている大きなものにお尻を擦りつける。するとフーゴ様から、切なげな吐息が零れた。
「もう……わたくしは大丈夫ですよ?」
「テレーシア……!」
「きゃっ!」
にゅぽんと秘部から触手が抜け、その刺激にわたくしは軽く達した。
その余韻に震える間もなく視界が反転し、寝台へと押し倒される。
見上げれば恋する人の真剣で……必死な表情がそこにあって、胸がぎゅうと締めつけられた。
トラウザーズの前が触手によって開かれ、彼の熱が……姿を現す。
「あ……」
それを見て、わたくしは小さく声を上げてしまった。
先が大きく張り出していてつるりとしており、幹は太くて長い。赤黒い幹には太い血管がたくさん這っており、つるりとした触手よりもなんだか生々しかった。
「怖いか?」
「いいえ! その、男性のものを見るのがはじめてなので……少しびっくりしてしまっただけで」
「……そうか」
フーゴ様がふっと笑う。その笑顔は、見惚れてしまいそうに素敵だ。
膝裏を抱えて足を持ち上げられ、蕩けた秘部が晒される。細い触手が伸びて花びらを左右に開き、くぱりと開いた秘所に熱の先端が触れた。
「んっ……ふ」
フーゴ様が腰を進め、熱が少しずつ埋没していく。大きくて硬いそれの侵入は少しばかりつらいけれど、触手によって慣らされた隘路は確実に熱を受け入れていった。そして、とんと優しく先端で最奥を叩かれる。
「大丈夫……かな?」
不安げに言われ、優しく頬を撫でられる。わたくしはその大きな手に、甘えるようにすりすりと頬を寄せた。
「平気です。わたくし、とっても幸せです」
「俺も、幸せだよ」
「お揃いですわね!」
「……そうだな」
フーゴ様は、わたくしに口づけを与えながらゆっくりと腰を動かした。熱杭が膣壁を何度も擦り、内側を彼の形に変えていく。
「やぁ、あっ。ひぁんっ!」
彼の逞しい体に縋りつきながら、拓かれていく悦びにわたくしは浸る。
互いの荒い息遣いと秘所から零れる粘着質でやらしい水音、わたくしの上げる嬌声、肌同士がぶつかり合う音が部屋には響く。
睦言を言う余裕もなく、わたくしたちは互いを貪りあった。
「あっ……ああっ!」
最奥をぐいと突かれ、わたくしは一際大きな声を上げながら達してしまった。
足先がきゅうと丸まり、びくびくと体が何度も震えた。
『貴方も』と言うように肉筒がフーゴ様のものをきゅうと締めつけ、その精をねだる。
「ッ……!」
フーゴ様も小さく声を上げ、体を震わせる。そして……わたくしの内側に大量の白濁を放った。
「あ、あ……っ」
長くて量の多い射精は、彼の悪魔の血が為せる技なのだろうか。
わたくしの内側はあっという間に精で満たされ、入りきらない白濁がとろとろと蜜壺の外へ流れていった。それでも、フーゴ様の射精は終わらない。わたくしを孕ませようとするように熱はずっと奥へと押しつけられていて、時折ぐりぐりと動かされた。
「わたくし、フーゴ様のものになれましたね」
息を整えてから囁やけば、視線がゆるりと向けられる。
「ああ。……君は、俺のものだ」
フーゴ様はくしゃりと泣き笑いに表情を歪めて、歓喜に震える声でそう言った。
*
翌日。
フーゴ様から正式に我が家に婚約の申し入れがあり、わたくしたちは婚約者となった。
もう既成事実ができていること、そしてわたくしがオットマー殿下から婚約破棄をされた醜聞塗れの令嬢であること。
それらの事情があり、ボーナストラックの内容通りに家族の反対などはなかった。
……よかったわ。ちゃんとフーゴ様の婚約者になれて。
そして、婚約の翌日からフーゴ様のお屋敷にわたくしは住むこととなったのだ。
──さらに後日。
『わたくしがオットマー殿下のことを、ちっとも好きじゃなかったこと』や『悪魔伯爵に、実はずっと想いを寄せていたこと』、そして『わたくしが婚約破棄事件の直後に、悪魔伯爵と婚約をしたこと』が王都では噂の的になっていた。オットマー殿下とクラーラ嬢の話なんてものは、それによって霞んでしまったのだ。
オットマー殿下がその噂になぜだか怒って屋敷に押しかけてきて、『裏切り者』だなんていうそのままお返ししたいお言葉をいただいたけれど……
「裏切り者? 裏切ったのは、そちらだろう」
怒りも露わなフーゴ様によって、オットマー殿下はけんもほろろに追い返されてしまったのだ。
王家からの抗議があったらと少しはらはらしたけれど、そんなことにはならなかった。
……考えてみれば、抗議なんてあるわけないのよね。
我が国の国防の重要な部分は、フーゴ様が担っている。
そんな彼の機嫌を王家が損ねたいはずがないのだ。フーゴ様に他国にでも行かれれば、困るのはこの国なのだから。
そういえば……。オットマー殿下とクラーラ嬢の仲は、今破綻の危機らしいわ。
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プライドが高いオットマー殿下は、そういう邪推が大嫌い。だから二人は大喧嘩になって、仲も冷え切りつつあるんですって。
……あの婚約破棄劇は、なんだったのかしら。乙女ゲームのシナリオは、破綻してしまったの? 真実の愛って一体……
「テレーシア。なにを考えているんだい?」
甘さをたっぷりと含んだ声がして、後ろからぎゅっと抱きしめられる。
わたくしは振り返ると、愛しのフーゴ様に微笑んでみせた。
「オットマー殿下とクラーラ嬢のことを考えていました」
フーゴ様に隠し事はよろしくないと思い正直に告げる。すると彼の顔は苦虫を噛み潰したような顔になった。
「……そんなことより、俺のことを考えてほしいな」
拗ねた顔で言われて、わたくしは思わず笑ってしまう。
そうね、あの二人のことなんて考えても仕方がないものね。
フーゴ様を愛することだけ、わたくしだって考えていたい。
「フーゴ様のことだけ、考えますわ。だからフーゴ様も、わたくしのことだけ考えてくださいませ」
「俺は君のことしか考えていないよ」
「ふふ。それはとっても嬉しいです」
両手で頬を包まれ、金の瞳に見つめられる。その瞳の奥に揺らめくのは……明確な不安だ。
愛されることに慣れていない彼は、わたくしの愛がいつ飛び去ってしまうのか恐れている。
「愛しています、フーゴ様。ずっと、ずっとです」
だからわたくしは、愛を囁くのだ。
彼の恐れがいつか消えますようにと、そう心からの願いを込めて。
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