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悪役令嬢はヒロインに負けたくない
ヒロインから見た事の顛末2
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「えっと……今日のご用事というのはなんですの?」
カフェテリアに呼び出されたビアンカ様は、私とミルカちゃんの顔を見てきょとんと首を傾げた。そして少し怯えたようにマクシミリアンさんの方を見つめる。
するとマクシミリアンさんは他の人には欠片も見せたことが無いような蕩けるような優しい微笑みを浮かべ、ビアンカ様の頬にそっとキスをした。
……この人、こんな顔もできるんだ。
私とミルカちゃんは彼の微笑みに呆気に取られてしまう。というか普段の無表情とのギャップでちょっと怖い。
「用事だなんて大げさなものじゃないのよ。私たち、ビアンカ嬢とお友達になりたいなーって!」
ミルカちゃんがふわふわした赤い髪を揺らしながら、人好きのする笑顔を浮かべながら言う。ミルカちゃんは人見知りしないし愛想もとてもいいから、ビアンカ様の緊張もすぐに解れるだろう。
――と思ったのだけれど。
ビアンカ様の緊張はなぜか解けないままで、マクシミリアンさんの手をぎゅっと握って少し涙目になっている。とても愛らしいご様子だけれど、どうしてそんなに怯えてらっしゃるのだろう。
メイちゃんに『シュミナを見ていると安心するんだ』と毎日言われ続けて培った自信が揺らいでしまいそうだ。チラリと横を見るとミルカちゃんも困惑の表情を浮かべていた。
「お嬢様。お辛いのなら帰ってもいいのですよ?」
「……マクシミリアン、だ、大丈夫! わたくし頑張るから!……ヒロインとサポートキャラが揃ってちょっと緊張してるだけだから……」
「お嬢様はどこかの誰かと違って繊細なのですから……」
マクシミリアンさんはぎゅうっとビアンカ様を抱きしめ旋毛に何度もキスをしながら、『どこかの誰か』という部分で私たちに目をやる。相変わらず失礼な人だなぁ。
それにしても小声で最後に呟いた『ヒロインとサポートキャラ』ってなんですか、ビアンカ様。
「マクシミリアン、離して。大丈夫だから!」
ぎゅうぎゅうと細い体を抱きこまれているビアンカ様が苦しそうに言うと、マクシミリアンさんは少し不満そうな顔で彼女を離した。
前々から過保護だとは思っていたけど、マクシミリアンさんの過保護は婚約後さらに加速しているらしい。
ビアンカ様は深呼吸をすると、美しい湖面の色の瞳をこちらへと向けた。
その凛とした面差しの美しさに私の胸は思わず高鳴ってしまう。ビアンカ様は、本当に……信じられないくらいにお綺麗だ。
「先ほどから無作法ばかりでごめんなさいね。わたくしあまり……お友達がいないものだから、緊張してしまって」
そう言ってビアンカ様はその美しい唇を笑みの形に変えた。
「はー近くで見ると一層綺麗だわ……。セルバンデス卿が誰とも関わらせようとしないはずだよ」
ミルカちゃんが横で小さく呟く。本当に同意だわ。そう言うミルカちゃんも美少女なのだけど。
ビアンカ様は大げさじゃなく、天使とか妖精とか女神とか……人間が近づいていいのか心配になるような美貌なのだ。だから皆思わず遠巻きにしてしまうのよね。
「……そ、それで。お友達になっていただけますかね……!」
身を乗り出して私が言うとビアンカ様は心底不思議そうな顔でその細い首を傾げた。
「わたくしなんかで、いいのかしら? わたくし、お友達になりたいなんて今まで言われたこともないつまらない人間なのですのよ」
この学園にビアンカ様とお友達になりたくない方なんていないと思うのだけど。
嫌味などではなく心底からの本心で……彼女は不思議がっているようだった。
これは確実にマクシミリアンさんが彼女を他の生徒から隔離していた弊害でしょう!? ビアンカ様が誰かと話していると、すぐに引き剥がして彼女を連れて行ってしまうんだから!
「ぜひお友達になりたいんです!」
「うん、お友達になって! ビアンカ嬢!」
「……わたくしでよければ、喜んで」
私とミルカちゃんが必死に詰め寄ると、ビアンカ様はふわりと花のような微笑みを浮かべて了承してくれた。無理やりじゃないよね、ちゃんと嬉しそうに見えたもの!
……その後ろでマクシミリアンさんがとても苦い顔をしていたけれど。私はあえて気にしないようにする。彼を気にしていたらキリがないもんね。
それからビアンカ様は少しずつ私たちと打ち解けてくれて。次回のお茶のお誘いをしたら頬を染めて頷いてくださったのだ。
「……勝手に約束をしてしまうなんて。帰ったらお仕置きですね」
というマクシミリアンさんの声が聞こえたような気がしたけれど……。
きっと気のせいよね!
カフェテリアに呼び出されたビアンカ様は、私とミルカちゃんの顔を見てきょとんと首を傾げた。そして少し怯えたようにマクシミリアンさんの方を見つめる。
するとマクシミリアンさんは他の人には欠片も見せたことが無いような蕩けるような優しい微笑みを浮かべ、ビアンカ様の頬にそっとキスをした。
……この人、こんな顔もできるんだ。
私とミルカちゃんは彼の微笑みに呆気に取られてしまう。というか普段の無表情とのギャップでちょっと怖い。
「用事だなんて大げさなものじゃないのよ。私たち、ビアンカ嬢とお友達になりたいなーって!」
ミルカちゃんがふわふわした赤い髪を揺らしながら、人好きのする笑顔を浮かべながら言う。ミルカちゃんは人見知りしないし愛想もとてもいいから、ビアンカ様の緊張もすぐに解れるだろう。
――と思ったのだけれど。
ビアンカ様の緊張はなぜか解けないままで、マクシミリアンさんの手をぎゅっと握って少し涙目になっている。とても愛らしいご様子だけれど、どうしてそんなに怯えてらっしゃるのだろう。
メイちゃんに『シュミナを見ていると安心するんだ』と毎日言われ続けて培った自信が揺らいでしまいそうだ。チラリと横を見るとミルカちゃんも困惑の表情を浮かべていた。
「お嬢様。お辛いのなら帰ってもいいのですよ?」
「……マクシミリアン、だ、大丈夫! わたくし頑張るから!……ヒロインとサポートキャラが揃ってちょっと緊張してるだけだから……」
「お嬢様はどこかの誰かと違って繊細なのですから……」
マクシミリアンさんはぎゅうっとビアンカ様を抱きしめ旋毛に何度もキスをしながら、『どこかの誰か』という部分で私たちに目をやる。相変わらず失礼な人だなぁ。
それにしても小声で最後に呟いた『ヒロインとサポートキャラ』ってなんですか、ビアンカ様。
「マクシミリアン、離して。大丈夫だから!」
ぎゅうぎゅうと細い体を抱きこまれているビアンカ様が苦しそうに言うと、マクシミリアンさんは少し不満そうな顔で彼女を離した。
前々から過保護だとは思っていたけど、マクシミリアンさんの過保護は婚約後さらに加速しているらしい。
ビアンカ様は深呼吸をすると、美しい湖面の色の瞳をこちらへと向けた。
その凛とした面差しの美しさに私の胸は思わず高鳴ってしまう。ビアンカ様は、本当に……信じられないくらいにお綺麗だ。
「先ほどから無作法ばかりでごめんなさいね。わたくしあまり……お友達がいないものだから、緊張してしまって」
そう言ってビアンカ様はその美しい唇を笑みの形に変えた。
「はー近くで見ると一層綺麗だわ……。セルバンデス卿が誰とも関わらせようとしないはずだよ」
ミルカちゃんが横で小さく呟く。本当に同意だわ。そう言うミルカちゃんも美少女なのだけど。
ビアンカ様は大げさじゃなく、天使とか妖精とか女神とか……人間が近づいていいのか心配になるような美貌なのだ。だから皆思わず遠巻きにしてしまうのよね。
「……そ、それで。お友達になっていただけますかね……!」
身を乗り出して私が言うとビアンカ様は心底不思議そうな顔でその細い首を傾げた。
「わたくしなんかで、いいのかしら? わたくし、お友達になりたいなんて今まで言われたこともないつまらない人間なのですのよ」
この学園にビアンカ様とお友達になりたくない方なんていないと思うのだけど。
嫌味などではなく心底からの本心で……彼女は不思議がっているようだった。
これは確実にマクシミリアンさんが彼女を他の生徒から隔離していた弊害でしょう!? ビアンカ様が誰かと話していると、すぐに引き剥がして彼女を連れて行ってしまうんだから!
「ぜひお友達になりたいんです!」
「うん、お友達になって! ビアンカ嬢!」
「……わたくしでよければ、喜んで」
私とミルカちゃんが必死に詰め寄ると、ビアンカ様はふわりと花のような微笑みを浮かべて了承してくれた。無理やりじゃないよね、ちゃんと嬉しそうに見えたもの!
……その後ろでマクシミリアンさんがとても苦い顔をしていたけれど。私はあえて気にしないようにする。彼を気にしていたらキリがないもんね。
それからビアンカ様は少しずつ私たちと打ち解けてくれて。次回のお茶のお誘いをしたら頬を染めて頷いてくださったのだ。
「……勝手に約束をしてしまうなんて。帰ったらお仕置きですね」
というマクシミリアンさんの声が聞こえたような気がしたけれど……。
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