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番外編
月と獣の蜜月17
マクシミリアンと寄り添って観るオペラはとても楽しくて。休憩時間が来るまで、わたくしは彼の手を握ってオペラに見入っていた。
彼はそんな私を微笑みながら見守って……くれた、概ねは。
人が声を出せないことをいいことに、時折お腹のお肉を揉まれたりもしたけれど。普段のマクシミリアンからすると許容範囲の行動だ。わたくしもずいぶんと、彼に慣れたというか丸くなったというか……。
「マクシミリアン。……お腹を、揉まないで」
休憩に入り、シャンパンを口にしながらマクシミリアンに不服げな視線を投げると、実に楽しそうに笑われた。
「素敵なお腹があるな、と気になってしまったもので」
そう言ってマクシミリアンは、またわたくしのお腹を愛おしそうな視線を投げながら優しく撫でる。
……不名誉だ。本当に不名誉だ。お腹を素敵だと言われてもちっとも嬉しくない。最近彼にはよくお腹に触られるけれど、わたくし太ったのかしら。うう、嫌だわ。屋敷の中にずっといて、美味しいものばかり食べているから当然といえば当然なのだけれど……。運動を、運動をしないと!
「……また、子供ができたらいいですね。子供たちがいない間に、たくさん愛し合いましたし。ビアンカの体に負担をかけてしまうことになってしまいますが……。その、私はできていると、とても嬉しいです……」
マクシミリアンがお腹を撫でながら、ぽつりとそんなことを言う。そっか……そういう意味も込めて、彼はお腹に触りたがるのか。
マクシミリアンは『家族』をわたくしと作ることに、大きな意味を見出しているのかもしれない。……わたくしの知らない彼の過去の傷がそれで癒えるのなら、それは嬉しいわ。彼との子供ならいくらでも欲しいし。
「次はマクシミリアン似の女の子かもしれないわね」
そう言いながらお腹を撫でる彼の手に、自分の手を重ねる。すると彼はその美しいかんばせに嬉しそうな笑みを浮かべた。
「ビアンカ似の、男の子もいいですね」
それも、可愛いだろうなぁ。だけど昔亡くなったお母様似の……つまりはお兄様似の子供が生まれてくる可能性もあるわね。……マクシミリアンが妙な悋気を起こしそうだし、わたくしたちに似た子が生まれることを祈ろう。
「ふふ。貴方と家族になれてよかった」
マクシミリアンの肩にそっともたれかかると、優しく髪を撫でられる。
「私も、ビアンカと家族になれてよかったです。愛しています、ビアンカ。ローラも、ユールも。そしていつかまたできるかもしれない子供たちも。貴方たちは、一生私の宝物です」
彼の言葉に嬉しくなって。わたくしは甘えるように彼の胸に頬をすり寄せてしまう。いい形での馴れ初めだったとは言い難いわたくしたちが、こんな幸せ家族になれるなんて。人生とは本当に不思議なものだ。
お腹を自分でも撫でてみる。マクシミリアンが過保護なくらいに協力的だったり、メイドたちが子供の世話をしてくれたりするお陰で、わたくしの育児はかなり快適なものだと思う。……そんな環境を用意してくれたマクシミリアンに感謝だわ。
……今の環境なら、あと数人産んでもきっと問題はないわね。
「……明日。夜なら触れてもいいわ、マクシミリアン。でも今日みたいな無理は嫌」
こっそりそう囁くと、マクシミリアンの瞳が大きく開かれた。
「本当にいいんですか? ビアンカ」
「……無理を、しないならね? わたくしだって、子供は欲しいの」
「嬉しいです。一カ月くらい触れられないことも覚悟していたのですが……」
「そうね、そうすることも考えたのだけど。そちらの方がよかった?」
「嫌です、嫌ですが。貴女に嫌われるよりは……っ」
マクシミリアンが苦悶の表情を浮かべながら、こめかみに手を当てる。うちの旦那様は苦悩している様子も絵になるわね。……苦悩の内容は割としょうもないな、と思うのだけど。
「止めてと言ったら、きちんと止めてね? そうしないと本当に一カ月お預けするわ」
「はい、ビアンカ。ちゃんと待てをします。私はできる犬なので」
彼はキリリとした表情で言う。本当にこの人は……おバカで可愛いのだから。
その後の彼はあきらかに上機嫌で。そんなにわたくしに触れたいなんておかしな人ね、なんて呆れ半分嬉しさ半分でわたくしは彼の様子を眺めていた。
休憩が終わり、オペラが再開しても。マクシミリアンはわたくしの肩に頭を乗せたり、手を握ったり。オペラそっちのけでわたくしにかまってばかりだ。
……こんなに嬉しそうにされると、わたくしだって悪い気はしない。
マクシミリアンの頭を撫でたり、握られた手を握り返したり。時々、口づけを交わしたり。そうしているうちに、オペラはクライマックスを迎え、帰路につく時間となってしまったのだった。
「……後半の内容があまり頭に入らなかったわね。せっかくいい席だったのにもったいないわ……」
馬車の中で彼に繋がれた手を握り返しながら、わたくしは少し溜め息をつく。いい席、どころじゃないのだけど。ロイヤルボックスだったのですもの。
「また親切なご老人にチケットを用意してもらいましょう。きっと喜んで用意してくれますよ」
……それはそうかもしれないけれど。
陛下はマクシミリアンに、少しいいように使われすぎなんじゃないかしら?
「明日の夜まではなにをしましょうか? すべて貴女の、仰せのままにいたします。私の愛しいお嬢様」
彼はそっとわたくしの手の甲に、唇を押し当てる。そして悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「……朝はね、一緒にお風呂に入るの。悪戯は絶対にしちゃだめ」
「はい、お嬢様。きちんと我慢いたします」
「お昼は貴方の膝枕でお昼寝をしたいわ。それでね、お昼寝が終わったら庭の薔薇の手入れを一緒にしましょう?」
「それは素敵ですね、お嬢様」
「それでね……」
マクシミリアンにもたれながら、明日の予定の話をする。
彼とのこの他愛ない時間が……本当に幸せだわ。
彼はそんな私を微笑みながら見守って……くれた、概ねは。
人が声を出せないことをいいことに、時折お腹のお肉を揉まれたりもしたけれど。普段のマクシミリアンからすると許容範囲の行動だ。わたくしもずいぶんと、彼に慣れたというか丸くなったというか……。
「マクシミリアン。……お腹を、揉まないで」
休憩に入り、シャンパンを口にしながらマクシミリアンに不服げな視線を投げると、実に楽しそうに笑われた。
「素敵なお腹があるな、と気になってしまったもので」
そう言ってマクシミリアンは、またわたくしのお腹を愛おしそうな視線を投げながら優しく撫でる。
……不名誉だ。本当に不名誉だ。お腹を素敵だと言われてもちっとも嬉しくない。最近彼にはよくお腹に触られるけれど、わたくし太ったのかしら。うう、嫌だわ。屋敷の中にずっといて、美味しいものばかり食べているから当然といえば当然なのだけれど……。運動を、運動をしないと!
「……また、子供ができたらいいですね。子供たちがいない間に、たくさん愛し合いましたし。ビアンカの体に負担をかけてしまうことになってしまいますが……。その、私はできていると、とても嬉しいです……」
マクシミリアンがお腹を撫でながら、ぽつりとそんなことを言う。そっか……そういう意味も込めて、彼はお腹に触りたがるのか。
マクシミリアンは『家族』をわたくしと作ることに、大きな意味を見出しているのかもしれない。……わたくしの知らない彼の過去の傷がそれで癒えるのなら、それは嬉しいわ。彼との子供ならいくらでも欲しいし。
「次はマクシミリアン似の女の子かもしれないわね」
そう言いながらお腹を撫でる彼の手に、自分の手を重ねる。すると彼はその美しいかんばせに嬉しそうな笑みを浮かべた。
「ビアンカ似の、男の子もいいですね」
それも、可愛いだろうなぁ。だけど昔亡くなったお母様似の……つまりはお兄様似の子供が生まれてくる可能性もあるわね。……マクシミリアンが妙な悋気を起こしそうだし、わたくしたちに似た子が生まれることを祈ろう。
「ふふ。貴方と家族になれてよかった」
マクシミリアンの肩にそっともたれかかると、優しく髪を撫でられる。
「私も、ビアンカと家族になれてよかったです。愛しています、ビアンカ。ローラも、ユールも。そしていつかまたできるかもしれない子供たちも。貴方たちは、一生私の宝物です」
彼の言葉に嬉しくなって。わたくしは甘えるように彼の胸に頬をすり寄せてしまう。いい形での馴れ初めだったとは言い難いわたくしたちが、こんな幸せ家族になれるなんて。人生とは本当に不思議なものだ。
お腹を自分でも撫でてみる。マクシミリアンが過保護なくらいに協力的だったり、メイドたちが子供の世話をしてくれたりするお陰で、わたくしの育児はかなり快適なものだと思う。……そんな環境を用意してくれたマクシミリアンに感謝だわ。
……今の環境なら、あと数人産んでもきっと問題はないわね。
「……明日。夜なら触れてもいいわ、マクシミリアン。でも今日みたいな無理は嫌」
こっそりそう囁くと、マクシミリアンの瞳が大きく開かれた。
「本当にいいんですか? ビアンカ」
「……無理を、しないならね? わたくしだって、子供は欲しいの」
「嬉しいです。一カ月くらい触れられないことも覚悟していたのですが……」
「そうね、そうすることも考えたのだけど。そちらの方がよかった?」
「嫌です、嫌ですが。貴女に嫌われるよりは……っ」
マクシミリアンが苦悶の表情を浮かべながら、こめかみに手を当てる。うちの旦那様は苦悩している様子も絵になるわね。……苦悩の内容は割としょうもないな、と思うのだけど。
「止めてと言ったら、きちんと止めてね? そうしないと本当に一カ月お預けするわ」
「はい、ビアンカ。ちゃんと待てをします。私はできる犬なので」
彼はキリリとした表情で言う。本当にこの人は……おバカで可愛いのだから。
その後の彼はあきらかに上機嫌で。そんなにわたくしに触れたいなんておかしな人ね、なんて呆れ半分嬉しさ半分でわたくしは彼の様子を眺めていた。
休憩が終わり、オペラが再開しても。マクシミリアンはわたくしの肩に頭を乗せたり、手を握ったり。オペラそっちのけでわたくしにかまってばかりだ。
……こんなに嬉しそうにされると、わたくしだって悪い気はしない。
マクシミリアンの頭を撫でたり、握られた手を握り返したり。時々、口づけを交わしたり。そうしているうちに、オペラはクライマックスを迎え、帰路につく時間となってしまったのだった。
「……後半の内容があまり頭に入らなかったわね。せっかくいい席だったのにもったいないわ……」
馬車の中で彼に繋がれた手を握り返しながら、わたくしは少し溜め息をつく。いい席、どころじゃないのだけど。ロイヤルボックスだったのですもの。
「また親切なご老人にチケットを用意してもらいましょう。きっと喜んで用意してくれますよ」
……それはそうかもしれないけれど。
陛下はマクシミリアンに、少しいいように使われすぎなんじゃないかしら?
「明日の夜まではなにをしましょうか? すべて貴女の、仰せのままにいたします。私の愛しいお嬢様」
彼はそっとわたくしの手の甲に、唇を押し当てる。そして悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「……朝はね、一緒にお風呂に入るの。悪戯は絶対にしちゃだめ」
「はい、お嬢様。きちんと我慢いたします」
「お昼は貴方の膝枕でお昼寝をしたいわ。それでね、お昼寝が終わったら庭の薔薇の手入れを一緒にしましょう?」
「それは素敵ですね、お嬢様」
「それでね……」
マクシミリアンにもたれながら、明日の予定の話をする。
彼とのこの他愛ない時間が……本当に幸せだわ。
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