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花屋のうさぎと銀狼の朝2
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リオネル様が少し乱暴に扉を開け放つ。すると外に居た新聞配達のカラス獣人の少年が、驚きで目を丸くした。そして背中の翼を忙しなくバタバタとさせる。
「……これをやった者を知っているか?」
リオネル様がそう訊ねると、カラス獣人は首をぶんぶんと横に振る。そして顔を真っ赤にしながら、リオネル様に見入ってしまう。
早朝の数少ない通行人もリオネル様に気づき、ロイから情報が伝わったのだろう者たちも増え。花屋の周囲はあっという間に遠巻きの人々で囲まれてしまった。……これは、すごく嫌だ。
「リ、リオネル様。片づければ済むことなので!」
慌てて声をかけたけれど、僕の頭を何度か撫でた後にリオネル様はゴミの山に再び目を向ける。
「犬族の女、猫族の男、これは……アナグマ族か」
ゴミの周囲の空気をすんと嗅いで、リオネル様がそうつぶやく。
すると人垣の中に居た猫族の男が、ピンと尻尾を立てて固まった。たしか数軒先の靴屋の息子だ。
しかしリオネル様はすごいお鼻だな……さすが狼族だ。僕が空気を嗅いでもゴミの匂いしかしない。
「残りはうさぎ族の女、大熊猫族の男――犯人は五人だな。そして三人はこの場に居る」
リオネル様がそう言うと、犬族の女とうさぎ族の女がひしと抱き合い震えだす。この二人もご近所さんだ。
……うう、嫌だなぁ。近くの住民だってわかりきってはいたものの、実際に目の当たりにすると精神的な損害が大きい。
「後で部下を家にやる。……狼の鼻をごまかせると思うな」
「リオネル様、そこまでしなくても大丈夫ですから! ねっ! これでもう二度としなくなると思いますし!」
大きな背中に抱きつきながら、『犯人』たちに目を向ける。すると彼らはぶんぶんと首を高速で上下させた。
リオネル様は僕に向き直ると不思議そうに首を傾げる。
「……だが、罪には罰を与えねばならん。これは立派な営業妨害だ」
うう、そうだ。この人は『法の守護者』である騎士様なのだ。しかも笑って片づけを手伝ってくれたニルス様の何倍も、頭が固そうなリオネル様である。
彼はここで『なぁなぁ』に済ませようなんて精神は、一切持ち合わせていないだろう。
僕はちっとも聖人じゃないから、面倒なことをしてくれた犯人たちはどうかと思うけど。
だけど妙な恨みを買って、これ以上変な噂を流されたりは避けたいのだ。そんなの先の商売に障る。
それよりも彼らに『恩』を売って……この先のご近所関係を穏便に運んだ方が賢いに決まっている。
「でで、ですけど! ほら、その! やられた僕が大丈夫だと言うなら……ひゃあ!」
脇の下に手を入れられ、ひょいと軽く持ち上げられた。
そして黄緑色の瞳にじっと見つめられる。
「……本当に、平気なのか?」
囁かれ、額同士を優しく擦り合わせられる。そんなことをされると恥ずかしいし、ドキドキする。僕の顔は絶対に真っ赤だ。
「……今後されるのは嫌ですけど。彼らも、もうしませんよ、きっと!」
「レイラは聖女のように優しいな」
リオネル様はそう言うと、ふわりと優しい笑みを浮かべた。
……『聖女』ってなんですか。せめて『聖人』にして欲しい。
それに利害のことを考えて出した結論だから、そもそもまったく『聖』ではない。
とにかく、嫌がらせはこれで終わる……はずだよね。
「……これをやった者を知っているか?」
リオネル様がそう訊ねると、カラス獣人は首をぶんぶんと横に振る。そして顔を真っ赤にしながら、リオネル様に見入ってしまう。
早朝の数少ない通行人もリオネル様に気づき、ロイから情報が伝わったのだろう者たちも増え。花屋の周囲はあっという間に遠巻きの人々で囲まれてしまった。……これは、すごく嫌だ。
「リ、リオネル様。片づければ済むことなので!」
慌てて声をかけたけれど、僕の頭を何度か撫でた後にリオネル様はゴミの山に再び目を向ける。
「犬族の女、猫族の男、これは……アナグマ族か」
ゴミの周囲の空気をすんと嗅いで、リオネル様がそうつぶやく。
すると人垣の中に居た猫族の男が、ピンと尻尾を立てて固まった。たしか数軒先の靴屋の息子だ。
しかしリオネル様はすごいお鼻だな……さすが狼族だ。僕が空気を嗅いでもゴミの匂いしかしない。
「残りはうさぎ族の女、大熊猫族の男――犯人は五人だな。そして三人はこの場に居る」
リオネル様がそう言うと、犬族の女とうさぎ族の女がひしと抱き合い震えだす。この二人もご近所さんだ。
……うう、嫌だなぁ。近くの住民だってわかりきってはいたものの、実際に目の当たりにすると精神的な損害が大きい。
「後で部下を家にやる。……狼の鼻をごまかせると思うな」
「リオネル様、そこまでしなくても大丈夫ですから! ねっ! これでもう二度としなくなると思いますし!」
大きな背中に抱きつきながら、『犯人』たちに目を向ける。すると彼らはぶんぶんと首を高速で上下させた。
リオネル様は僕に向き直ると不思議そうに首を傾げる。
「……だが、罪には罰を与えねばならん。これは立派な営業妨害だ」
うう、そうだ。この人は『法の守護者』である騎士様なのだ。しかも笑って片づけを手伝ってくれたニルス様の何倍も、頭が固そうなリオネル様である。
彼はここで『なぁなぁ』に済ませようなんて精神は、一切持ち合わせていないだろう。
僕はちっとも聖人じゃないから、面倒なことをしてくれた犯人たちはどうかと思うけど。
だけど妙な恨みを買って、これ以上変な噂を流されたりは避けたいのだ。そんなの先の商売に障る。
それよりも彼らに『恩』を売って……この先のご近所関係を穏便に運んだ方が賢いに決まっている。
「でで、ですけど! ほら、その! やられた僕が大丈夫だと言うなら……ひゃあ!」
脇の下に手を入れられ、ひょいと軽く持ち上げられた。
そして黄緑色の瞳にじっと見つめられる。
「……本当に、平気なのか?」
囁かれ、額同士を優しく擦り合わせられる。そんなことをされると恥ずかしいし、ドキドキする。僕の顔は絶対に真っ赤だ。
「……今後されるのは嫌ですけど。彼らも、もうしませんよ、きっと!」
「レイラは聖女のように優しいな」
リオネル様はそう言うと、ふわりと優しい笑みを浮かべた。
……『聖女』ってなんですか。せめて『聖人』にして欲しい。
それに利害のことを考えて出した結論だから、そもそもまったく『聖』ではない。
とにかく、嫌がらせはこれで終わる……はずだよね。
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