【R18】うさぎのオメガは銀狼のアルファの腕の中

夕日(夕日凪)

文字の大きさ
35 / 59

花屋のうさぎと銀狼の朝3

しおりを挟む
「リオネル様。僕、その、お腹が空きました」

『犯人』たちからとにかく意識を逸らそうと、リオネル様に声をかける。
 するとリオネル様は「そうだな」と静かな声で返事をして、縦抱きにしていた僕をひょいと横抱きに抱き直した。……大の大人、しかも男がされるにはなかなかに恥ずかしすぎる体勢だ。

「では食事にしようか。……と言ってもこのあたりの早朝から開いている店に心当たりがないな。ニルスに聞いておけばよかったか」
「い、いえ。僕が作りますので!」
「……レイラが?」

 リオネル様は綺麗な瞳を大きく開いて僕を見つめる。僕の手作りなんて、嫌だったかな。この時間だとどこのお店が開いていたっけ。宿の食堂なら、朝から食事を出しているかも? それなら割と近くにある。
 毎日自宅で朝食を済ませる僕は、早朝から開いている店について詳しくない。どうしようかと思いながら、オロオロとしてしまったのだけれど……

「レイラの手作りか。……それは嬉しいな」

 リオネル様がふっと無防備な笑顔を浮かべて、額に優しく口づけなんてするものだから。僕は真っ赤になってしまった。その笑顔は反則です、リオネル様……!
 周囲の野次馬たちもリオネル様の笑顔に当てられたようで、顔を赤くしたり蹲ったりしている。……罪な男とはこの人のことを言うのだろうな。

「……私たちが食事をしている間に。きっと店の前は綺麗になっているだろう」

 笑顔から一転、その瞳の色を濁らせ怒りを滲ませた表情になったリオネル様が、野次馬へと鋭い視線を向ける。すると犯人たちだけではなく、他の野次馬たちまで首を激しく上下させた。美しい人の怒りの表情は、それだけ恐ろしいものだったのだ。

「リオネル様。とっておきの珈琲を淹れますから、早くご飯にしましょう!」

 リオネル様の意識をこちらに戻そうと、話しかけながらくいくいと服を引っ張る。するとリオネル様の表情はふっと緩んだ。

「……とっておき? それは嬉しいな」
「友人のロランにオススメされて買ったんですけど、とても美味しいんですよ」
「レイラの友人か。いずれ会ってみたいな」
「ロランも喜ぶと思います。……ちょっと喜びすぎるかもしれませんけど」

 会話をしつつ、恥ずかしながら横抱きのまま屋内へと運ばれる。扉が閉まったその瞬間に、外のゴミに人々が殺到するのが見えた。……朝食を食べている間に、外はピカピカになっていそうだ。
 リオネル様は僕を台所に運ぶとそっと床に下ろした。そしてこちらに期待するような視線を向けながら、ブンブンと尻尾を振る。そんなお顔をされても、大したものは出ないんだけどなぁ……

「その、粗末なものしか出ませんよ?」
「レイラが作るものが、粗末なわけがない」

 粗末です、貴方がふだん食べているものより絶対に粗末です。
 パンとベーコンエッグとスープくらいしかお出しできません。

「……頑張ります。長椅子でゆっくりされていてくださいね」
「手伝えることはないのか?」
「この通り、台所は狭いので」

 一人暮らし用で、しかもうさぎ族規格の台所には、二人並んで料理をするスペースなんてものはない。
 なぜか残念そうな表情になったリオネル様は、少し肩を落としながら長椅子へと向かった。
 ……リオネル様、そんなに一緒に料理をしたかったんですか?
 貴族は自分で料理なんてしないだろうし、物珍しかったのかな。

 僕だって……好きな人と並んで料理はしてみたいけれど。

 そんなことを考えてしまい、僕はぶんぶんと首を横に振った。
しおりを挟む
感想 59

あなたにおすすめの小説

こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡

なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。 あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。 ♡♡♡ 恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!

希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう

水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」 辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。 ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。 「お前のその特異な力を、帝国のために使え」 強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。 しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。 運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。 偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!

愛を知らない少年たちの番物語。

あゆみん
BL
親から愛されることなく育った不憫な三兄弟が異世界で番に待ち焦がれた獣たちから愛を注がれ、一途な愛に戸惑いながらも幸せになる物語。 *触れ合いシーンは★マークをつけます。

運命の番ってそんなに溺愛するもんなのぉーーー

白井由紀
BL
【BL作品】(20時30分毎日投稿) 金持ち‪社長・溺愛&執着 α‬ × 貧乏・平凡&不細工だと思い込んでいる、美形Ω 幼い頃から運命の番に憧れてきたΩのゆき。自覚はしていないが小柄で美形。 ある日、ゆきは夜の街を歩いていたら、ヤンキーに絡まれてしまう。だが、偶然通りかかった運命の番、怜央が助ける。 発情期中の怜央の優しさと溺愛で恋に落ちてしまうが、自己肯定感の低いゆきには、例え、運命の番でも身分差が大きすぎると離れてしまう 離れたあと、ゆきも怜央もお互いを思う気持ちは止められない……。 すれ違っていく2人は結ばれることができるのか…… 思い込みが激しいΩとΩを自分に依存させたいα‬の溺愛、身分差ストーリー ★ハッピーエンド作品です ※この作品は、BL作品です。苦手な方はそっと回れ右してください🙏 ※これは創作物です、都合がいいように解釈させていただくことがありますのでご了承くださいm(_ _)m ※フィクション作品です ※誤字脱字は見つけ次第訂正しますが、脳内変換、受け流してくれると幸いです

【完結】俺だけの○○ ~愛されたがりのSubの話~

Senn
BL
俺だけに命令コマンドして欲しい 俺だけに命令して欲しい 俺の全てをあげるから 俺以外を見ないで欲しい 俺だけを愛して……… Subである俺にはすぎる願いだってことなんか分かっている、 でも、、浅ましくも欲張りな俺は何度裏切られても望んでしまうんだ 俺だけを見て、俺だけを愛してくれる存在を Subにしては独占欲強めの主人公とそんな彼をかわいいなと溺愛するスパダリの話です! Dom/Subユニバース物ですが、知らなくても読むのに問題ないです! また、本編はピクシブ百科事典の概念を引用の元、作者独自の設定も入っております。 こんな感じなのか〜くらいの緩い雰囲気で楽しんで頂けると嬉しいです…!

僕だけの番

五珠 izumi
BL
人族、魔人族、獣人族が住む世界。 その中の獣人族にだけ存在する番。 でも、番には滅多に出会うことはないと言われていた。 僕は鳥の獣人で、いつの日か番に出会うことを夢見ていた。だから、これまで誰も好きにならず恋もしてこなかった。 それほどまでに求めていた番に、バイト中めぐり逢えたんだけれど。 出会った番は同性で『番』を認知できない人族だった。 そのうえ、彼には恋人もいて……。 後半、少し百合要素も含みます。苦手な方はお気をつけ下さい。

オメガに転化したアルファ騎士は王の寵愛に戸惑う

hina
BL
国王を護るαの護衛騎士ルカは最近続く体調不良に悩まされていた。 それはビッチングによるものだった。 幼い頃から共に育ってきたαの国王イゼフといつからか身体の関係を持っていたが、それが原因とは思ってもみなかった。 国王から寵愛され戸惑うルカの行方は。 ※不定期更新になります。

【短編】売られていくウサギさんを横取りしたのは誰ですか?<オメガバース>

cyan
BL
ウサギの獣人でΩであることから閉じ込められて育ったラフィー。 隣国の豚殿下と呼ばれる男に売られることが決まったが、その移送中にヒートを起こしてしまう。 単騎で駆けてきた正体不明のαにすれ違い様に攫われ、訳が分からないまま首筋を噛まれ番になってしまった。 口数は少ないけど優しいαに過保護に愛でられるお話。

処理中です...