【R18】うさぎのオメガは銀狼のアルファの腕の中

夕日(夕日凪)

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花屋のうさぎは危機に遭う2

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 ――君が君の形を失っていたら。

 その言葉に恐怖をかき立てられ、その場から正しく脱兎のごとく逃げたくなる。けれどそれはシエル様の手によって阻害され、僕はその場に縫い留められたようになってしまった。
 首筋に舌が這い、首輪の上から牙を何度も立てられる。

「ひ……やっ」
「どうやってオメガから『香水』を作るか、教えてあげようか」

 囁きながら、シエル様は楽しそうに低く笑う。
 聞きたくない。それはきっと、楽しいものではないだろうから。
 そう思うのに、赤狼の唇は喋ることをやめない。

「君たちオメガがね。発情期の時以上にフェロモンを発する瞬間があると……『ある時』に僕は気づいたんだ」

 僕の長い耳を美しい唇が食む。背筋が甘く震え、崩れ落ちそうになる身を僕は必死に支えた。

「それは命の危機に瀕した時だ。きっと快楽で痛みを和らげようと、強い防衛本能が働くのだろうな」
「――ッ!」

 ――殺されるんだ。
 そう感じた瞬間、ぞわりと体中が熱くなる。
 牙が耳に柔らかく立てられ、その手加減された力でも僕の脆弱な皮膚は傷ついて淡く血が滲む。その血を赤狼は美味しそうに啜った。

「数日かけてじっくりと死の恐怖を与えれば、オメガの血は信じられないくらいの濃度のフェロモンを含むんだ。その血からフェロモンを抽出しさらに調香したものが、『香水』の正体だよ。君の血も……すでに淡い香りを発しているね」

 すんと匂いを嗅がれ、満足そうに頷かれる。僕の体は主人に断りなしに『準備』をはじめているらしい。

「リオネル・ハルミニアはどれだけ魅力的なオメガにも靡くことがなかった。君はあの男を誘うことができる唯一の香水になるんだ。きっと高位貴族にとんでもない金額で、飛ぶように売れるだろうね。清廉潔白なあの男の子種があちこちに撒き散らされるなんて――楽しいと思わないか? これが君を招いた理由だよ」
「そんなの、嫌です……っ!」

 ――そんなことになればリオネル様が絶対に苦しむ。
 驚くくらいに真面目で善良なあの人が、誰かとの間に生じた『責任』を無視できるはずがない。
 力を振り絞ってシエル様の腕から逃れた僕は、床に転がり落ちてしまう。鼻の頭をいささか擦り剥き、痛みに顔をしかめながら立ち上がる僕を、赤狼は楽しそうに見つめていた。

「逃げるのか。友人たちがどうなってもいいの?」
「さ、探して逃します。そして僕も逃げますから」
「ふぅん、やってみるといいよ。百を数えてから追いかけてあげようか」

 舌舐めずりながら耳を動かすその様子は獲物を追い詰める狩人だ。
 彼が僕を甘く見ているのがありがたい。この油断に乗じて、もっと時間を稼がないと。

「うさぎの逃げ足を舐めないでください!」

 叫んで、部屋を飛び出す。
『数日かけてじっくりと死の恐怖を与えれば』とシエル様は言った。上質な香水にするために――僕はすぐには殺されないだろう。五体が無事ではないだろうけれど。ひとまずは、命の保証がないロランとリーディさんを優先しないと。
 今までの人生にないくらいに、足を早く動かす。
 そうしながら、耳と鼻をひくりと動かして僕はロランとリーディさんの気配や匂いを探した。
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感想 59

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みんなの感想(59件)

こんぺいとう

久しぶりに心踊る作品に出会えました!!
お忙しい中だとは思いますが、更新待ってます!

解除
mya
2024.01.18 mya

お忙しいかと思いますが、更新楽しみに待っています。

解除
アル
2024.01.01 アル

更新はありますでしょうか…あることを願ってます

解除

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