労働基準法がきっちり守られる世界を書いたら、まさかとは思うが、それだけでSFになるのでは!?

古森匣樹太郎

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第一話「かつて罪を決めるのは宗教だったけど、今は資本主義ですよね」

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第一話「かつて罪を決めるのは宗教だったけど、今は資本主義ですよね」

 「労働基準法違反の現行犯で逮捕する!!」
 窓ガラスは割れ、催涙ガスの煙がもうもうと立ちこめるオフィス。労働監督
署強襲部隊の立ち入り検査を受けたのだ。
 「貴様は無賃残業を行う事で、公正に賃金を支払う同業他社の原価競争に対
して、テロを行った!抵抗すれば射殺する!!」
 LIO(Labor Inspection Office)と書かれたワッペンを付けた黒服の男に
銃を突きつけれ、うなだれて、首を振る会社員達。
 その安いスーツは汚れ、無精髭が伸び、目には生気が無い。
 どうせ選挙にも、選挙では何も変わらないとか言いつつ行かないタイプの奴
隷だったに違いない。
 黒服の男達は、慣れた手つきで違法労働者マイナンバータブレットを確認。
マイナンバータブレットは『脱獄』されおり、労働時間計測をごまかすプログ
ラムが走り、違法な労働状態である事は明白であった。

 ILO強襲部隊の隊長は厳しく安いスーツの男をにらむ
 無賃残業した男は震えていたがそれは当然だ。もう少しで射殺されるところ
だったのだ。

 2017年、労働基準法が改定された事により、労働基準監督署は権限を拡
大。
 労働基準法に対して、罰則が付帯されただけで無く、違法残業を続けるブラ
ック企業に対して、独自の強襲部隊を擁し、不当な商行為を行う事を厳しく悪
だと認定し、ブラック企業の経営者だけで無く労働者をも罰する作戦を展開す
るまでになっていた。
 この男は労働基準法を学ぶために再教育施設に送られる。
 厳しい資本主義の教育によって、無賃労働はまじめに働く事では無く、自分
と他人の権利を侵害する資本主義違反であると言う事も解らない馬鹿な奴隷か
ら、自分と他人の労働資本もとい、人権を守れる真人間に生まれ変わるのだ。


 男達は後ろ手に手錠を掛けられ、ILOの職員に連れられ、ゴツい黒塗りの
車に押し込められていく。

 「全く、潰しても潰してもキリが無いな」黒服の隊長らしき男が呟く。
 「まあそれでも最近は、違法残業も、やっと減り始めたでは無いですか」部
下の男がそれに答えた。
 「後は経営者の逮捕だな、逃げるようなら確実に殺さなければいけない。別
働隊がしくじらなければ良いが・・・・・・」隊長は割れた窓から夜空に浮かぶ月を
見上げた。


 時は21世紀、日本の労働者は長く奴隷状態にあったため、人間として当然
の権利を主張する事に順応できていなかった。
 明治維新において、民主主義革命を国民の手で成し遂げられなかった歪みが
ついに表面化してきたのである。

 インターネットの発達と発展途上国の技術水準の上昇は、人口の多い国のG
DPを押し上げ、日本は相対的に国際社会での地位を下げつつあった。
 高度な技術による国際競争力を失う事を恐れ、自体を重く見た日本政府は、
自体を重く見たのにもかかわらず、資産を持つ既得権益層の利益の為に、円安
誘導と労働賃金の低下によってそれを補おうとした。
 つまりブラック企業の蔓延である。

 しかし真の国際競争力とは人件費の安さでは無く、他国に真似の出来ない技
術だったのだ。
 中国市場が伸びている限り、日本が再び世界の工場になることなどあり得な
い。
 それなのに日本は科学技術の予算を削り、労働者派遣法による中抜きで、技
術の継承をストップさせた。
 年金の資金を使って株価を上げ現実逃避をする富裕層と日本は、21世紀初
頭、滅びつつあった。


 だが 日本社会を一気に急変させる変化をもたらしたのは、意外な物だっ
た。
 日本は神風の国である。外圧に弱い国である。マレビト信仰の国である。


次回 第二話「ひゅーん、どかーん」
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