大好きな妹を守る為に腹黒ヤンデレ辺境伯令息と手を組まざるを得なくなりました

宝月 蓮

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プロローグ ノルトマルク次期辺境伯夫人の思い出

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 ガーメニー王国北部にあるノルトマルク辺境伯領にて。
 小高い丘の上にあるノルトマルク城は領地を一望出来、おまけに海も見渡せる。
 ノルトマルク次期辺境伯夫人であるマルグリット・コリンナ・フォン・ノルトマルクは見晴らしの良いノルトマルク城のサンルームでのんびりと読書をしていた。
 その時、本の間から一枚のモノクロの写真が落ちる。
(あら……懐かしい写真ね)
 マルグリットはターコイズのような青い目を細めて微笑んだ。
 写真には二人の少女と二人の少年が写っている。

 真っ直ぐ伸びた髪ではっきりした華のある顔立ちで、少し気が強そうな少女。これがマルグリットである。そして彼女の隣には白い猫を抱いている少女。リボンのヘッドドレスを着用していたウェーブがかった長い髪の、人形のように可愛らしい顔立ちだ。そしてその少女に優しく愛おしげな目を向ける、鼻から頬にかけてはそばかすがあるが彫刻のように整った顔立ちの少年。そして三人を見守るような目をしている、がっしりとした体つきで男らしい顔立ちの少年。

「おや? マルグリット、懐かしいものを見ているな」
 マルグリットの背後から声を掛ける者がいた。
 マルグリットは驚き声の方に振り返る。そこには褐色のふわふわした癖毛、アメジストのような紫の目の青年がいた。がっしりとした体格で、厳つく男らしい顔立ちではあるが美形である。彼はマルグリットの夫である。
「オズヴァルト様」
 マルグリットは優しく微笑んだ。
「驚かせてしまってすまない」
 ノルトマルク辺境伯家長男で次期当主であるオズヴァルト・リーヌス・フォン・ノルトマルクは申し訳なさそうに微笑む。
 写真に写っている、三人を見守るような目をしている少年がオズヴァルトである。
「大丈夫よ。気にしないでちょうだい」
 マルグリットはふふっと笑った。
「あの時からもう六年は経過しているのだな」
 オズヴァルトは写真に目を向けて懐かしそうにアメジストの目を細めた。
「ええ。まさかこうなるとは思わなかったわ」
 マルグリットは肩をすくめた。
「オズヴァルト様と出会えたことは光栄よ。でもまさかティアナが、私の可愛い妹があの男に取られるなんて……悔しくてたまらないわ。それに、あの男のせいで法律上ではティアナと姉妹ではなくなったのよ」
 悔しそうにムスッとするマルグリット。
「まあまあ。ユリウスは君の妹君のことを本当に大切に想っているみたいだぞ。それに、あいつが動いてくれたから、マルグリットも妹君もあの男爵家から逃げることが出来たんだ」
 穏やかな表情でマルグリットを宥めるオズヴァルト。
「それは分かっているわよ。だけど……」
 マルグリットはムスッとしたまま写真に写っている少年を睨む。
 鼻から頬周りにそばかすがある、彫刻のように整った顔立ちの少年。
(ユリウス・パトリック・フォン・ランツベルク……やっぱりこの男は気に入らないわ)
 マルグリットは不満そうにため息をつくのあった。
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