悪役令嬢は腐女子である

83・大滝利通の松陽祭の心配

　僕は大滝利通。
　松陽高校の生徒会長を務めている。
　今日は年に一度の文化祭。
　松陽祭だ。
　生徒会長としての務めを果たし、生徒たちはもちろん、来校者にもつつがなく松陽祭を楽しんでいただかなければ。


　さて、今日は楽しい松陽祭なのだが、吉祥院さんの様子がおかしい。
　いつもと変わらないようにしているが、しかし時折見せる憂い顔。
　いったいどうしたのだろう？
　愛しの彼と結婚し、子供も生まれて幸せいっぱいのはずなのに、なぜあんな沈んだ顔をするのか？
　愛しの彼となにかあったのだろうか？
　もし そうなら、僕にもチャンスが巡ってくるかも……
　はうあ！
　今 僕は何を考えたんだ！
　愛しの彼と吉祥院さんの不幸を願ってしまうとは！
　人の不幸を喜ぶとは、自分が情けない。
　自分の未熟さを痛感するばかりだ。
　吉祥院さんはきっと、産後鬱という状態なのだ。
　子供が生まれたばかりだと、女性は鬱になりやすいという。
　それに、愛しの彼との新婚生活も色々大変なのだろう。
　僕は生徒会長として、そして一人の人間として、一つの家庭の幸せを応援してあげなければ。
　そう、愛しの彼が幸せなら、僕はそれで良い。
　僕は学校で、できる限りフォローしよう。
　それが僕の勤めだ。
　僕が君の幸せを守るよ。
　愛しの君よ。


　83.5・五十嵐武士の嘆き


　俺は学園祭のこのチャンスにかけてナンパしていた。
　他校からの来校者を狙っているが、誰も引っかからない。
　なぜだ！？
　女装した俺は美女のようなイケメンに変身したはずなのに、なぜみんな気持ち悪がっているんだ！？
　なのに、生徒会長の大滝利通は、校門でチェックしているだけで他校の女子から声をかけられまくっている。
　チクショー！
　俺と生徒会長のなにが違うと言うんだ！？
　なんか女子たちが、憂い顔が素敵よねーとか、女にがっついていないところが逆にイケてるとか言ってるけど、俺だって出来るんだ！
　こうなったら、なにがなんでも今日こそナンパを成功させてみせるぞー！