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第19話
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「王子と令嬢ってこと?」
「うん」
「そうだなあ……僕の知る限りだと王子に同情する意見が多いかな。地元だしね。でも、あの物語だと、おバカな王子のバカさ加減みたいなのが曖昧だから、例えばお金を積まれて、悪人を助けて善人を処罰したりとか、そういうことをやっていた可能性もある――」
「あ~」
「と、いう話もあるけど、僕はちょっと違うかな」
「というと?」
姉さんが首を傾げた。
「もし本当にそんなことをしてたら、被害者はアンサルドの街の住人でしょ。流石にかばうような声は残らないんじゃないかな? 嫌われることはあっても」
「なるほどねぇ」
「たぶんだけど、愛されるおバカだったんじゃないかな? 姉さんみたいなタイプ」
「ほぅ、ほぅ、なるほど……じゃない! 誰が愛されるおバカよ!」
姉さんが、僕の首を締めて上下に動かしてくる。
「そういうとこだよぉぉ……ゲホゲホ」
「これか! でも、令嬢のことだけは大事にしてたのよね?」
「うん。そこは疑いようのない事実なんじゃないかな。そうでなきゃゴーストになってまでお城に残らないと思う」
「そうよねぇ……」
「ただ、令嬢の方は最初から好きでもなんでもなかったのかもしれないけど」
「うっ、それは可愛そうなパターンね。他にも、他に好きな人が出来た可能性もあるわよね。結婚したのって隣の国の王子だっけ?」
「うん。王子と違って立派な人って物語にはあったし、そんな人から求婚されたら悩んじゃうよね」
「おバカな王子と天秤にかけたらねぇ……そりゃ好きでも限度もあるし、あ、わたしは大丈夫よ? トールがどんなにアレでも弟として愛してあげるわ」
「僕をおバカな王子扱いしないで! むしろ僕の台詞だよ!?」
「もう、お姉ちゃん子なんだから」
「くっ……。まあ、令嬢が婚約破棄しなければ王子は幸せに暮らせたとは思うけど、令嬢は我慢し続けることになっただろうし、何より、そんな王子が王様になって一番困るのは民衆だったんじゃないかな」
「でも、今でもこれだけ愛されてるってことは、おバカだけど、決して悪いやつではなかったってことよね」
「そうだね。ただの悪行三昧。暴君みたいな人だったら、慕われることはないと思う」
こうして暗い城内を歩き回るが、ちっとも王子のゴーストとは遭遇しない。
3階まで上がったところでバルコニーを発見したので、新鮮な空気を求めて、僕と姉さんは屋外に出た。
星空が近い。
綺麗だ。
「待って、誰かいるわ」
「……?」
姉さんの声に目を凝らす。
「あれは……」
前方。
背中越しだけど、闇夜のように真っ黒いマントに身を包んだ人物が、椅子に腰かけて、じっと北の方角を見つめていた。
そのタイミングでちょうど雲が晴れ、月明かりが黒衣の人物を照らし出す。
「まるでスポットライトね……」
「ひょっとして、あの人が王子?」
「うん」
「そうだなあ……僕の知る限りだと王子に同情する意見が多いかな。地元だしね。でも、あの物語だと、おバカな王子のバカさ加減みたいなのが曖昧だから、例えばお金を積まれて、悪人を助けて善人を処罰したりとか、そういうことをやっていた可能性もある――」
「あ~」
「と、いう話もあるけど、僕はちょっと違うかな」
「というと?」
姉さんが首を傾げた。
「もし本当にそんなことをしてたら、被害者はアンサルドの街の住人でしょ。流石にかばうような声は残らないんじゃないかな? 嫌われることはあっても」
「なるほどねぇ」
「たぶんだけど、愛されるおバカだったんじゃないかな? 姉さんみたいなタイプ」
「ほぅ、ほぅ、なるほど……じゃない! 誰が愛されるおバカよ!」
姉さんが、僕の首を締めて上下に動かしてくる。
「そういうとこだよぉぉ……ゲホゲホ」
「これか! でも、令嬢のことだけは大事にしてたのよね?」
「うん。そこは疑いようのない事実なんじゃないかな。そうでなきゃゴーストになってまでお城に残らないと思う」
「そうよねぇ……」
「ただ、令嬢の方は最初から好きでもなんでもなかったのかもしれないけど」
「うっ、それは可愛そうなパターンね。他にも、他に好きな人が出来た可能性もあるわよね。結婚したのって隣の国の王子だっけ?」
「うん。王子と違って立派な人って物語にはあったし、そんな人から求婚されたら悩んじゃうよね」
「おバカな王子と天秤にかけたらねぇ……そりゃ好きでも限度もあるし、あ、わたしは大丈夫よ? トールがどんなにアレでも弟として愛してあげるわ」
「僕をおバカな王子扱いしないで! むしろ僕の台詞だよ!?」
「もう、お姉ちゃん子なんだから」
「くっ……。まあ、令嬢が婚約破棄しなければ王子は幸せに暮らせたとは思うけど、令嬢は我慢し続けることになっただろうし、何より、そんな王子が王様になって一番困るのは民衆だったんじゃないかな」
「でも、今でもこれだけ愛されてるってことは、おバカだけど、決して悪いやつではなかったってことよね」
「そうだね。ただの悪行三昧。暴君みたいな人だったら、慕われることはないと思う」
こうして暗い城内を歩き回るが、ちっとも王子のゴーストとは遭遇しない。
3階まで上がったところでバルコニーを発見したので、新鮮な空気を求めて、僕と姉さんは屋外に出た。
星空が近い。
綺麗だ。
「待って、誰かいるわ」
「……?」
姉さんの声に目を凝らす。
「あれは……」
前方。
背中越しだけど、闇夜のように真っ黒いマントに身を包んだ人物が、椅子に腰かけて、じっと北の方角を見つめていた。
そのタイミングでちょうど雲が晴れ、月明かりが黒衣の人物を照らし出す。
「まるでスポットライトね……」
「ひょっとして、あの人が王子?」
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