【フリー台本/朗読&掛け合い】「小さな幸せのお手伝い」

雪野鈴竜(ユキノリンリュウ)

文字の大きさ
1 / 5
[朗読・語り]

【第1話】「"少年の"おはなし」

しおりを挟む
 俺には好きな奴がいてさ、1年の頃から3年まで一緒のクラスなんだ。ソイツは……まぁ顔が誰よりも可愛くて、周りの奴らもそれに気づいてるかは知らねぇけど、友達の何人かもソイツのこと可愛いって言ってた。
 ソイツはいつも俺にしつこく怒ってくるうるさい奴だけど、誰にでも優しかった。クラスメイトが怪我をしたら一緒に保健室について行ったり、勉強で居残りくらってる奴がいたら終わるまで待って、一緒に帰ったり……。なんとなくだけど、ソイツは皆の喜んだ顔が好きなんだと思う。泣いてる奴を見かけるとすぐに駆け寄って、一生懸命励まそうと何か言葉を考えて声をかけている様子を見かける。
 からまわっている時があるけど、それでもソイツは必死なんだ。……俺は、可愛くて、誰かのために必死になれるソイツが大好きなんだ。
──何度か告白しようと考えた。けど、……俺は自分でもわかってるんだ。いつも俺はソイツを怒らせてる。掃除の時間にふざけて時間を遅らせたり、食いしん坊で、成績もイマイチで居残りの時も勝手に帰っちゃったり、ダメな部分がメチャクチャあって、だからソイツはいつも怒ってて……当然だ。そんな奴から告白なんてされてもダメになるに決まってるんだ。
 怖い。失敗したらどうしようとか、すげぇ拒否られて翌日から避けられたらどうしようとか、いろいろ考えちまう。でも、……俺は決めたんだ。ソイツに放課後告白するんだって!!
……放課後、俺はついにソイツの元へ向かった。今日は確か生き物係の作業が残ってて、ソイツしか教室にいないはずだ。教室に戻ると、ソイツは水槽の掃除をした後で、魚に餌をまいていた。俺は心臓がバクバクと鳴りながらも、声をかける……自分でもびっくりしたが、声はかなり震えていた。ソイツはいつも通り、「どうしたの?」と笑って返事をしてくれた。
 誰に対しても明るく笑みを浮かべてくれるソイツに何故かモヤモヤしつつも、さらに心臓が痛いくらいに跳ねあがる感覚がした。言いたい、言わなきゃ、怖い……何を言ったらいいんだろう。頭の中がぐちゃぐちゃになってきた。
 ソイツは俺の様子に不思議に思ったのか、こちらへ歩いてきた──その時だった。誰かがしまい忘れた雑巾があったらしい。ソイツは雑巾を踏んでしまい派手に転んでしまった!! 大変だ! 早く、手を貸さないと……俺はソイツに走って近づいた。……ここで、事件は起きてしまった。"パキリ"と、俺の足の下で何か音がして、嫌な予感がして恐る恐る下を見る……。ソイツも俺の目線の先に目を向けると、悲しそうな叫びを上げた。
……転んだ拍子に、どうやらソイツの雪だるまの髪飾りが落ちたらしく、俺はそれを踏んづけてしまったらしい。"ちのけがひく"って、きっとこういう時のことを言うんだと思う。俺は頭の中が真っ白になった。その後はよく覚えていない。
 気が付いたら目の前にはソイツがわんわん泣いていて、周りに数人クラスメイトが集まってきていて俺を睨んでた。その内担任まで来て、ソイツをなだめてた。俺は悪いことをしたはずなのに、担任はそんなに叱ってこなかったが、謝りなさいとは言われたから、俺はただただその通りに謝ることしかできなかったんだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

👨一人用声劇台本「寝落ち通話」

樹(いつき)@作品使用時は作者名明記必須
恋愛
彼女のツイートを心配になった彼氏は彼女に電話をする。 続編「遊園地デート」もあり。 ジャンル:恋愛 所要時間:5分以内 男性一人用の声劇台本になります。 ⚠動画・音声投稿サイトにご使用になる場合⚠ ・使用許可は不要ですが、自作発言や転載はもちろん禁止です。著作権は放棄しておりません。必ず作者名の樹(いつき)を記載して下さい。(何度注意しても作者名の記載が無い場合には台本使用を禁止します) ・語尾変更や方言などの多少のアレンジはokですが、大幅なアレンジや台本の世界観をぶち壊すようなアレンジやエフェクトなどはご遠慮願います。 その他の詳細は【作品を使用する際の注意点】をご覧下さい。

👨一人声劇台本【日替わり彼氏シリーズ】(全7作)

樹(いつき)@作品使用時は作者名明記必須
恋愛
月曜~日曜まで曜日のイメージから一話1分半ほどで読める短いシチュエーション台本を書いてみました。 あなたが付き合うならどんな男性がお好みですか? 月曜:人懐っこい 火曜:積極的 水曜:年上 木曜:優しい 金曜:俺様 土曜:年下、可愛い、あざとい 日曜:セクシー ⚠動画・音声投稿サイトにご使用になる場合⚠ ・使用許可は不要ですが、自作発言や転載はもちろん禁止です。著作権は放棄しておりません。必ず作者名の樹(いつき)を記載して下さい。(何度注意しても作者名の記載が無い場合には台本使用を禁止します) ・語尾変更や方言などの多少のアレンジはokですが、大幅なアレンジや台本の世界観をぶち壊すようなアレンジやエフェクトなどはご遠慮願います。 その他の詳細は【作品を使用する際の注意点】をご覧下さい。

片思い台本作品集(二人用声劇台本)

樹(いつき)@作品使用時は作者名明記必須
恋愛
今まで投稿した事のある一人用の声劇台本を二人用に書き直してみました。 ⚠動画・音声投稿サイトにご使用になる場合⚠ ・使用許可は不要ですが、自作発言や転載はもちろん禁止です。著作権は放棄しておりません。必ず作者名の樹(いつき)を記載して下さい。(何度注意しても作者名の記載が無い場合には台本使用を禁止します) ・語尾変更や方言などの多少のアレンジはokですが、大幅なアレンジや台本の世界観をぶち壊すようなアレンジやエフェクトなどはご遠慮願います。タイトル変更も禁止です。 ※こちらの作品は男女入れ替えNGとなりますのでご注意ください。 その他の詳細は【作品を使用する際の注意点】をご覧下さい

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

処理中です...