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[朗読・語り]
【第1話】「"少年の"おはなし」
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俺には好きな奴がいてさ、1年の頃から3年まで一緒のクラスなんだ。ソイツは……まぁ顔が誰よりも可愛くて、周りの奴らもそれに気づいてるかは知らねぇけど、友達の何人かもソイツのこと可愛いって言ってた。
ソイツはいつも俺にしつこく怒ってくるうるさい奴だけど、誰にでも優しかった。クラスメイトが怪我をしたら一緒に保健室について行ったり、勉強で居残りくらってる奴がいたら終わるまで待って、一緒に帰ったり……。なんとなくだけど、ソイツは皆の喜んだ顔が好きなんだと思う。泣いてる奴を見かけるとすぐに駆け寄って、一生懸命励まそうと何か言葉を考えて声をかけている様子を見かける。
からまわっている時があるけど、それでもソイツは必死なんだ。……俺は、可愛くて、誰かのために必死になれるソイツが大好きなんだ。
──何度か告白しようと考えた。けど、……俺は自分でもわかってるんだ。いつも俺はソイツを怒らせてる。掃除の時間にふざけて時間を遅らせたり、食いしん坊で、成績もイマイチで居残りの時も勝手に帰っちゃったり、ダメな部分がメチャクチャあって、だからソイツはいつも怒ってて……当然だ。そんな奴から告白なんてされてもダメになるに決まってるんだ。
怖い。失敗したらどうしようとか、すげぇ拒否られて翌日から避けられたらどうしようとか、いろいろ考えちまう。でも、……俺は決めたんだ。ソイツに放課後告白するんだって!!
……放課後、俺はついにソイツの元へ向かった。今日は確か生き物係の作業が残ってて、ソイツしか教室にいないはずだ。教室に戻ると、ソイツは水槽の掃除をした後で、魚に餌をまいていた。俺は心臓がバクバクと鳴りながらも、声をかける……自分でもびっくりしたが、声はかなり震えていた。ソイツはいつも通り、「どうしたの?」と笑って返事をしてくれた。
誰に対しても明るく笑みを浮かべてくれるソイツに何故かモヤモヤしつつも、さらに心臓が痛いくらいに跳ねあがる感覚がした。言いたい、言わなきゃ、怖い……何を言ったらいいんだろう。頭の中がぐちゃぐちゃになってきた。
ソイツは俺の様子に不思議に思ったのか、こちらへ歩いてきた──その時だった。誰かがしまい忘れた雑巾があったらしい。ソイツは雑巾を踏んでしまい派手に転んでしまった!! 大変だ! 早く、手を貸さないと……俺はソイツに走って近づいた。……ここで、事件は起きてしまった。"パキリ"と、俺の足の下で何か音がして、嫌な予感がして恐る恐る下を見る……。ソイツも俺の目線の先に目を向けると、悲しそうな叫びを上げた。
……転んだ拍子に、どうやらソイツの雪だるまの髪飾りが落ちたらしく、俺はそれを踏んづけてしまったらしい。"ちのけがひく"って、きっとこういう時のことを言うんだと思う。俺は頭の中が真っ白になった。その後はよく覚えていない。
気が付いたら目の前にはソイツがわんわん泣いていて、周りに数人クラスメイトが集まってきていて俺を睨んでた。その内担任まで来て、ソイツをなだめてた。俺は悪いことをしたはずなのに、担任はそんなに叱ってこなかったが、謝りなさいとは言われたから、俺はただただその通りに謝ることしかできなかったんだ。
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