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紗絢の家へ

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 ひばりヶ丘駅で下車し、数分歩くと、大きなマンションが見えてきた。

 警備員に止められないよう紗絢との距離を詰め、エントランスへ向かう。解錠されたガラスのドアを通り抜け、到着したエレベーターに乗り込んだ。

 エレベーターのボタン配列を見るにマンションは十二階建て。
 その中で紗絢は五階のボタンを押していた。

 エレベーターが上昇していくと同時に肩に力が入る。

 一人暮らししている女の人の家に行くなんて初めてだ。
 学生時代に紗絢の実家を訪れたことはあるので、彼女の家が綺麗に整理整頓されていることは想像に難くない。

 エレベーターを降り、前を歩く紗絢のあとを追いかける。
 扉の前で立ち止まり、鍵が開くと、彼女に続いて中へと入っていった。

「少し散らかっているけど、気にしないでね」
「うん。おじゃまします」

 リビングに荷物を運び、部屋全体を眺める。

 室内は、紗絢の好きな水色で統一されていて、ゆったりとした雰囲気を醸し出していた。
 ソファーの上に服があったり、テーブルの上に化粧品らしきものが置いてあったりはするが、言うほど散らかってはいない。

 俺は、どう行動すればいいか分からず、その場に突っ立つ。
 すると、紗絢が隣に来て声をかけてくれた。

「荷物はそこに置いて、ソファーに座りなよ」
「あ、うん。分かった」

 俺は、指定された場所に荷物を置き、手洗いとうがいを済ませると、二人がけのソファーに腰を下ろした。
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