異世界でスローライフを始めたら、庭に魔王が住み着いた〜庭付き一戸建て魔王付き〜

ノエ丸

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追放から始まる物語

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 ◇とある酒場

「ダイチ、お前をこのパーティから追放する」

 そんなありきたりなセリフを聞く日が来るとは、夢にも思っていなかった。

 俺にそう告げたのは、所属するパーティのリーダーである、リダー・スグシヌ。

 全員に料理が揃い、さあ打ち上げを始めよう――というタイミングで切り出された言葉だった。

 突然の追放宣言に俺は混乱した。

「ちょ、ちょっと待ってくれ。何でいきなり追放なんだ?」
「あら、それはあなたが一番よくわかっていることじゃないの?」

 パーティの紅一点で狩人で、リダーの恋人でもあるカノー・ウワーキがそう言った。

 俺がよくわかっている? 一体何の話だ? 心当たりがまるで無い。

 カノーの言葉に、さらに頭が混乱した俺は、思わず頭を抱えた。

「まあまあ、コイツなりに今までよくやって来たんだ。追い出す時くらいは楽しくやろうぜ」

 そう言って俺の方に手を置いてきたのは、パーティの盾役でもあるマモール・ネットリー。

「やれやれ、君は脳筋過ぎる。もう少し彼に現状を理解させる努力をしてはどうかな?」

 メガネをクイッと上げて嫌味の込もった声でそう告げたのは、パーティの魔法を一手に担う、マホ・ツギシヌ。

 リダーたちとは一年間パーティを組んでいた。

 この街に来て、初めて出来た仲間だ。

 だがその仲間たちから、俺は追放という形で追いやられようとしていた。

 俺の何がいけなかったんだ……。

 四人とも俺を追放する気でいるようだ。

 ……そうか。

 仲間なんてものは、こんなものなのかもしれないな。

 前世のこともあり、俺の体から、一気に熱が引いていくように感じた。

 リダーが言った。

「まあ追放する理由くらいは、教えておいてやる。お前、戦闘の時に大して役に立たないからな」

 リダーの言葉に、カノーとマホが追い打ちをかけた。

「そうよ、アンタのすることなんて植物を生やして、魔物の動きを止めるくらいじゃない。どうせならそのまま絞め殺すくらいはしなさいよね」
「そうですね。あなたのスキルのせいで、僕の得意とする水魔法が使いづらいんですよ」

 たしかに二人の言うとおりだ。

 その気になれば絞め殺すことは容易だが、俺は仲間に経験値を得てもらうため、動きを止める事だけに留めていた。

 そのことをリダーたちに伝えていなかったので、それは俺の落ち度だ。

 わかってくれてると思ってたんだけどな……。

 どうやら俺の独りよがりだったようだ。

 ……。

 俺は席を立ち、四人に告げた。

「……わかった。皆がそう言うなら俺はパーティを抜けるよ。今まで、本当にありがとう……」

 四人に別れを告げ、その場を去ろうとした――その時。

 リダーが一言。

「待て」

 その言葉に俺は一瞬、淡い期待を抱いてしまった。

「装備は全部置いてけよ? まあ消耗品くらいはくれてやる」
「手切れ金も今回の報酬分だけでいいでしょ? アンタ大して役にたってないんだし」
「ひでーな二人共。ま、せいぜい頑張ってくれや」
「早く行ってください。僕たちは楽しく食事をしたいのですから、辛気臭い顔は見たくありません」

「……そうか」

 俺はそれだけ呟き、着ていた装備を脱ぎ、その場を去った。

 後ろから聞こえてくる笑い声が――やけに耳障りに感じた。


 ◇街中の広場

 リダーたちから追放を言い渡されて五日が経過していた。

 幸い、金はそれなりに貯めていたので、しばらくは普通に暮らしていけるだけの額はあった。

 思ったよりもショックだったようで、この五日間は酒に溺れる日々を送っていた。

 これからどうしようか。

 そんなことをぼんやりと考えていたが、どうもやる気が起きない。

 とりあえずギルドに行って、適当な依頼をこなそう。

 体を動かせば、この嫌な気持ちも少しは晴れるだろう。

 そう思ってギルドへ足を運んだ。


 ◇冒険者ギルド

「あれ?! ダイチさん、生きてたんですか?!」

 顔なじみの受付嬢に、いきなり失礼な言葉を投げかけられた。

 彼女に恨みを買った覚えはないんだけどな……それとも、変な噂でも流れてるのか?

「一応生きているけど……さすがに失礼すぎじゃないか?」
「あっ、そ、そうですね! すいません……昨日報告があがってきたので、てっきり……」
「報告?」

 報告を受けて、なんで俺が死んでることになるんだろうか……。

 もしかして俺に似た人物が死んだりしたのか? だとしてもギルドカードという身分証がある以上、そういう間違いは起きないはずだ。

 受付嬢の口から聞かされた内容に、俺は耳を疑った。

「昨日、街はずれのダンジョンに向かう道で、リダーさんたちの死体が見つかったんです。傷痕から見ても、あの辺りに生息している魔物の仕業で間違いないようなんですが……えっと、ダイチさんはその場にいらっしゃらなかったんですか?」

「え、あ、ああ、俺は五日前にパーティから……その、追い出されたんだ」
「えっ?! そうなんですか?! ダイチさんを手放すなんて、バカな人たちですね」
「いやいや、俺はそんなにすごい人間じゃないって」
「なーに言ってるんですか! ギルドマスターから一目置かれてるっていうだけで、すごいことなんですよ!」
「大した実績もない俺を、過大に評価してくれているだけさ。今日は依頼を受けようかと思ったけど、やめておくよ。それじゃあね」

 受付嬢は不満そうな顔をしているが、俺はそんなにすごい人間じゃない。

 俺は足早に冒険者ギルドを出ることにした。

 建物の外に一歩出て、ふと思う。

 ……そうか。

 リダーたちは本当に死んでしまったのか……。

 追放系の物語ならば、このあと「ざまあ展開」が長々と繰り広げられるんだが……そんな展開が起きることもなく、終わってしまった。

 それに――俺は思っていた以上に、薄情な男なのかもしれない。

 一年間共に過ごした仲間が死んだというのに、何の感情も湧いてこない。

 本当に、これからどうしようか。

 いっそ別の街に行くか?

 そんな俺の目に飛び込んできたのは、ある張り紙だった。

『【求む】魔族討伐の英傑たちよ』
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