異世界でスローライフを始めたら、庭に魔王が住み着いた〜庭付き一戸建て魔王付き〜

ノエ丸

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絶好の畑仕事日和

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 今日はいい天気だ!

 絶好の畑仕事日和だな!

 俺は元気にクワを振り下ろし、畑を耕していた。

 しばらく畑を耕し、額に滲む汗をタオルで拭い、一息つく。

 ふー、これくらい耕せば問題ないな。

 俺はクワにもたれ掛かり、耕した畑を見回す。

 まだ作物の実っていない土だけの畑。

 この畑が明日には新芽が生えてくるだろう。

 俺の“植物を操る力”のおかげだ。

 なんでこんなことをしているのかと言うと、話せば長くなる。

 なので簡潔にしよう。


 今からちょうど1年ほど前、俺はとあるパーティーから追放された。

 1年間共にした仲間たちだったが、あっさりと追放されたので、俺は別の道を歩むことに決めた。

 ちなみに元仲間たちは追放から4日後に全滅したので、もうこの世にはいない。

 成仏してくれ……。

 そんなわけで俺は、亡き仲間たちがあの世で胸を張れるような男になると決めた。

 そう、魔王討伐だ。

 仲間たちの訃報を聞いた俺は決心し、魔王討伐に志願しようとした。

 しようとしたが、すぐに魔王討伐の報せが届いたので、俺の魔王討伐の旅は始まる前から終わった。

 ままならない世の中だ。


 そんなわけで俺は悩んだ。

 悩みに悩んだ末――。


 人里から離れる決心をした。

 正直、疲れたというのもある。

 街を離れる際に、世話になった受付嬢に別れの挨拶をしたとき、ある話を聞かせてくれた。

「魔族との国境沿いに世捨て人の村がある」

 そんな村はいくらでもあるだろうと思いもしたが、彼女が厚意で教えてくれたことだ。

 無下にするわけにもいかない。

 どうせ行くあてがないのなら、その村を目指してみるのもいいかもしれないと、そう思った。

 場所もわからない村を目指して歩き続け、魔族との国境沿い。

 ある村を見つけた。

 最初こそよそ者である俺を警戒していたが、村の外れにある土地を畑として耕し、採れた野菜を配って歩いているうちに、村の一員として認めてもらえた。

 この村にいる人間は、何かしらの事情があってこの村にいるそうだ。

 中にはこの村生まれの子供もいるので、一概に全員が、というわけではない。

 俺も訳ありの一人だ。

 そんな村で、今日も俺は畑を耕し、野菜を育てている。

 争いもなく、余計な人間関係の軋轢もない。

 まさにスローライフを送っていた。


 畑を耕し、新芽が伸びるのを期待して、俺は就寝した。

 その時は、あんなことになるなんて、思いもしていなかった。


    ◇

 窓から差し込む陽射しで目を覚まし、早速畑の様子を見に外へ出た。

 目に飛び込んできた畑には新芽がこれでもかと……。

 ……無い。

 新芽がまったく生えていない。

 ど、どうしてだ?! いつもなら能力を使いながら畑を耕せば生えてくるのに……。

 その時――視界の端に黒い“ナニカ”が見えた。

 なんだ?

 その黒い“ナニカ”が見えた方角に顔を向けると――。

 黒い“ナニカ”が、畑から生えている新芽を食べていた。

 害獣認定! よし!

 即座に木の棒を手に取り、黒いナニカを殴り飛ばした。

 黒いナニカはぽよんぽよんと数度跳ねると、ぷるぷる震えて動きを止めた。

 え、何コイツ。

 その黒いナニカはハンドボールくらいのサイズで、中央に目玉のようなものが見える。

 スライム……ではないな。

 あいつらは手のひらサイズだし、目が2つある。

 魔物だとしても初めて見るタイプだ。

 動かなくなった黒いナニカを、棒でつつくと、プルんと動き、力なく呼吸をしているようだった。

 ……むう。

 新芽を食べていたので、即害獣認定したが、もしかしたら違うのかもしれない。

 弱っている黒いナニカに同情してしまっている自分がいる。

 直感でわかる――こいつは魔物ではないと。

 俺は小屋に戻り、皿に水を注ぎ、キャベツを手に取って外へ出て、黒いナニカのそばに戻った。
 
 水の入った皿とキャベツをそっと置いた。

 すると――。

 目玉がキャベツをギロリと見つめ、弱々しくキャベツにかじりついた。

 綺麗にかじり取られたキャベツを見て、「どうやって食べてるんだろう」と考えていると――。

 黒いナニカは体?を持ち上げ、ぷるぷる震え出した。

 なんだろう……心なしか、喜んでいるように見える。

 黒いナニカはすぐにキャベツを食べ始め、あっという間に1玉を平らげた。

 今は皿の水を飲んでいる。

「美味かったか?」

 俺の問いかけに、なすのように体を持ち上げ、黒いナニカは体を震わせて答えた。

 そうかそうか。

 何を言ってるかわからないが、喜んでいるのは確かだな。

 丹精込めて作った野菜を、美味しそうに食べてもらうのは気分が良い。

「ほら、もう行きな」

 元気になったんなら、もういいだろう。

 俺は森に帰るように促した。

 黒いナニカは、ぽよんぽよんと跳ね、一度こちらを振り返ると森の中へと消えていった。

 「何だったんだろうな、アイツ……」

 誰にともなく問いかけたが、誰も答えてくれない。

 まあいいさ、気を取り直して畑を耕し直そう。

 俺は、黒いナニカに食い荒らされた畑を、再び耕し始めた。


    ◇

 黒いナニカが現れた日から10日が経過した。

 そして、結果から言うと。

 あの黒いナニカが庭に住み着いてしまった。

 庭と言っても、小屋と畑の間にある空き地のような場所だが。

 便宜上、庭として扱っている。

 日中はそこでポヨンポヨン飛び跳ね、時にはぷるぷる震えている。

 そして夜は小屋の軒下に移動して、眠っている姿を確認した。

 なんだか妙な同居人ができてしまったが、悪さをするわけではないので、そのままにしている。

 こいつが一体なんなのかはわからないが、まあ、仲良くやっていこうと思う。
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