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ダンジョンソロアタック編
342.VS隻腕の騎士①
隻腕の騎士は体勢を崩すことなく、すぐに斬りかかって来た。
下から切り上げる剣戟を上から押し止めるも、俺の体が持ち上がり、そのまま後方へと弾き飛ばされた。
体勢をすぐに立て直し、隻腕の騎士を視界に捉える。
こっちは鉄雄の力で腕力が上がっているにもかかわらず、隻腕の騎士に力負けしてしまった。
最初の一撃は様子見だったということか……
細かく息を吐き、心を落ち着かせる。
少しだけ冷静になれたからか、あることに気付いた。
隻腕の騎士の腕の形が、鉄雄の篭手の形と似ている。
似ているが……あっちは右腕が無く左腕がある状態。
それに対して鉄雄は俺の左腕にいる。
鉄雄が元々は隻腕の騎士と同一個体だった可能性もある。
何かがあって分離したのか?
……聞いた方が早いか。
「鉄雄。お前とアレは同じ存在」「キュイ」「――あっ、違うのね。了解」
すぐに鉄雄から「違う」と返事が来たので、ヤツと鉄雄は無関係だとわかった。
ということはただ単に似ているだけなのか、もしくは鉄雄と同じ特殊個体のスライムの可能性もある。
あれこれ考えても答えは出ないんだ。
今は目の前の敵に集中しよう。
一旦思考を打ち切る。
それと同時に隻腕の騎士が地を蹴り走り出す。
空いた距離を瞬時に埋められ、抜き打ちで放たれた剣撃を防ぐと同時に魔法を放つ。
腹の部分に〈深淵の弩砲〉が直撃するも、隻腕の騎士は数センチ後退るだけで、すぐに剣を振り下ろしてきた。
横に飛び退き躱すと――再び冷たい汗が流れた。
魔力を込めずに放ったとはいえ、耐えきるその姿にかつて対峙した魔王の姿が重なった。
……あーはいはい、そういうヤツね。
俺は心の中で舌打ちしながらも次の魔法を放つ。
「〈深淵の墓所〉!!」
自分を中心に、地面に描かれた魔法陣から円錐状の棘が無数に飛び出し、隻腕の騎士に襲いかかる。
隻腕の騎士は後ろに飛び退き回避を試みるも、次々と飛び出す棘に全身が削られていった。
やっぱり魔王のように効果が薄いな……いや、魔王よりもコイツの方が硬いか。
となると、ここからは全ての魔法に限界まで魔力を込めないといけないわけだ。
中ボス以外では〈限界突破〉を使ってはいなかったとはいえ、今貯蔵している分で足りるか?
魔力が底をつくまでに致命的なダメージを負わせるしかないか……よし。
剣にさらなる魔力を注ぎ、属性の力を強め剣を下段に構え、肩の力を抜く。
剣で戦うほうが魔法を無暗に撃ち続けるよりも遥かにいい。
剣を振るうのに余計な力は必要ない。
ここに来るまでに、爺さんの言っていた「うまく振れ」の意味が何となくわかった気がしていた。
実際、そういう場面は何度もあった。
力は殆ど必要ない。
ただ剣を振る。
その動作に一切の無駄を無くせばいい。
剣を振る以外の思考を全て捨て去る。
死と隣り合わせのこの状況だからこそできる極限の集中状態。
一瞬たりとも目を離すな。
目の前にいるのは、俺よりも遥かに格上の剣術使いだ。
俺が動くのと同時に隻腕の騎士も行動を開始した。
すぐにお互いの距離が肉薄する。
下からの切り上げを隻腕の騎士は当たり前のようにいなし、即座に反撃の一撃を放つ。
突き出させる切っ先を寸前で躱し、一歩踏み込み横薙ぎ。
それを読んでいたかのように隻腕の騎士は跳躍。
横薙ぎを躱すと同時に振り下ろしの一撃を放つ。
振り下ろしを何とか剣で防ぐも、その一撃の重さにその場へ膝を付く形になってしまった。
途轍もない衝撃に腕が一瞬痺れる。
地に足をつけた隻腕の騎士は、その瞬間を逃さず前蹴りを放ち俺の顔面を正確に打ち抜いた。
「――がっ‼」
口の中に広がる血を唾と一緒に吐き捨て、剣を振るう。
切り上げ、横薙ぎ、振り下ろし、突き。
その全てを軽々といなされ、逆に隻腕の騎士の猛攻が襲い来る。
一太刀の速度が俺のものよりも遥かに速い。
目で追い、反応するのがやっとだ。
一撃ごとに受け止め、直撃を何とか免れる。
剣を持つ手の痺れが増していく。
息をつく暇もないほどの連撃。
一瞬の隙をつかれてしまった――
隻腕の騎士の振り下ろしの一撃。
――間に合わない。
直感でそう感じた。
「キュイッ‼」
その瞬間、鉄雄が左腕から離れ俺の目の前で盾に姿を変えた。
ガキンッ! と音を立て、隻腕の騎士の一撃を鉄雄は防いだ。
――防いだが、鉄雄が姿を変えた盾はその一撃により大きく凹んでしまっていた。
鉄雄を受け止め、呪文を唱える。
「〈深淵の砲弾〉‼」
同時に幾つも展開する魔法陣から漆黒の砲弾が隻腕の騎士目掛けて殺到する。
当たった瞬間に大きく広がり、隻腕の騎士を後方へと押し返す。
大したダメージは期待できないが、それでも距離を取るには十分だった。
俺の腕に抱かれた鉄雄はすぐに篭手の姿へ戻ると、一声鳴き「自分は大丈夫だ」と告げてくれた。
「キュイキュイ!」
続けて鉄雄は「もっと自分に頼れ」と言ってくれた。
――そうだな。
心のどこかで俺一人で勝とうと思っていた。
鉄雄の言葉で思い出す。
いつだって俺は一人じゃなかった。
どんな強敵だろうと、必ず側に仲間がいてくれた。
シャロにアナにマリア。
それに翼に雫。
今だって鉄雄がいてくれる。
そうだ。
俺はいつだって誰かに助けられてきたんだ。
「鉄雄。防御は任せていいか?」
「キュイ~‼」
「――よし! いくぞ鉄雄!」
覚悟は決まった。
防御なんて捨てて攻撃に専念し、守りは鉄雄に任せる!
それが俺のスタイルだ。
俺の中で何かのピースがハマる感覚があった。
なーにが「剣をうまく振る」だ。
そんなもん関係ねえ!
勝てばいいんだよ! 勝てば!
コイツに勝って鉄雄と一緒にこのダンジョンからおさらばする!
なんか強敵を前に変なテンションになってしまっていたな。
剣が防がれるなら魔法をぶち当てればいい。
魔王のようにバラバラにしてやるよ……
――さあ、ここから第二ラウンドの始まりだ!
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